表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

秋葉原ヲタク白書73 アキバがランウェイ

作者: ヘンリィ

主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。

相棒はメイドカフェの美しきメイド長。


この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第73話です。


今回は、コロナ禍でスポンサーが降り、公式レイヤーも謎失踪中のファッションショーのプロデュースを依頼されます。


ショーに賭ける若きデザイナー達の熱い情熱や伝説のDJとの出逢いを経て、遂に辿り着いた栄光のランウェイとは…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 "秋葉原コレクション"


昼営業中の御屋敷(ミユリさんのメイドバー)で動画を見せられてるw


「あのさ。最近のコスプレ業界について、話して欲しいンだょね」

「もう動画、撮ってるの?」

「うんにゃ。まだウォーミングアップ中」


いや。撮られてる。気をつけてw


画像の中は何処かのカフェ。

ボックス席にハデ目の女子。


「コスプレ業界について話せって…今のコスプレ業界はね、悪霊みたいなゲームメーカーと、その悪霊に枕営業をかけるレイヤーばっかシょ」

「げっ?ソレって"Aコープ"のコト?」

「YES。アンタみたいなおべっか使いが、今じゃ時計、香水、ファッションまで手掛けるゼネラルマネージャーでしょ?ソレでホントにゲームメーカーって逝えるの?ねぇ私を見て。こんなに汚れちゃって」


そして、唐突にグラスを叩き割る音がして、動画は終わる。


「この動画がコロナ前に投稿サイト"MY TUBE"にUPされて10万回再生。そして、自粛が終わったら、彼女の姿がアキバから消えてた」

「彼女は今、何を?」

「恐らく地下で細々とコスプレを続けてるか…完全に抹殺されたか」


ココは、僕の推し(てるメイド)ミユリさんがメイド長を務める御屋敷(昼営業中)。

コロナ自粛の末の営業形態で"(セクパブじゃナイ普通の)パブバー"って感じ。


お客は僕の他に3名。カウンターの中にメイド服を着たミユリさん。

全員適度に散らばってsocial distanceをkeep

10名以内を厳守し営業。


「フェニは、コスプレ界では有名な売れっ子の(コスプ)レイヤーで、去年の冬コミでは大変な人気だったけど、確かにコロナ前は少し落ち目だったカモ」←

「ソンな落ち目の(コスプ)レイヤーを誰が消すのかな?で、念のために聞くけど、君達は昨夜は何処にいたの?」

万世橋(アキバポリス)の留置所」

「ええっ?!」

「白人警官による黒人男性死亡の抗議デモに参加したら全員逮捕されて…」

「1時間前に釈放されたばかり」


僕は3人組を凝視スル。


男2女1だけど色違いのスウェットシャツにダークトーンのパンツと逝うカジュアル。

ファッション系にしてはシンプルだが、まぁデモ(とその後の留置所w)帰りだしな笑。


「日本と逝うかアキバでも、そんなデモをやってたンだ?」

「私、差別には敏感なの。琉球人だから」

「おぉ!どーりで小麦色の肌が…」


と逝うや瞬時に周囲の大気がイオン化し熱を帯び僕の頭蓋は極限まで膨らんで爆裂…

した気がしたのは、ミユリさんが両目から発射したデス光線を致死量浴びたせいか?


「で、御主人様に御嬢様は、やはりファッション関係の人なの?」

「今"秋葉原コレクション"の準備の真っ最中でした。ヒロインだらけのファッションショーです。でも、このコロナ騒ぎでスポンサーも視界不良、公式コスプレイヤーのフェニまで姿を消してしまって」

「そのスポンサーって?」

「ゲームメーカーの"Aコープ"です」

「そして、君達は"Aコープ"専属のファッションデザイナー?」

「未だ学生です。全員デザイン科で勉強中」

「おぉ。業界に毒されない若き才能がココに。昼営業のせいか眩しいょ。しかし、何でココに御帰宅したの?」

「実は、困ったコトがあったらコチラに相談してみろって勧められて…」

「誰に?」

「センムさん」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


センムは、神田川畔にある1大コピー商品生産拠点"リトル広州(キャントン)"の日本側の総代理人。

しかし、シンジケート自体はAI"アキバ皇帝"が差配してて、彼はAIに使われる立場だ。


「よく来たな、テリィ。ん?今日は独りか?未だミユリのヒモやってンだろ?彼女はどーした?」

「センム、あのさー。誰かが迷子猫の相談所みたいな話をするから、ミユリさんは今も御屋敷を離れられないンだょ」

「やや?その3人組も一緒か。バカだな。ホントにテリィに相談したのか?」←


"リトル広州(キャントン)"は、新幹線と神田川が直交する高架下のアキバ側一帯に広がる工場群だ。

昔はパーツ街だった界隈は、軒並みシャッターを下ろして中でコピー商品を大量生産中w


センムは唯一シャッターを開け本業?のブルセラショップを営業してる(フリw)。


「実は、コイツらは"リトル広州"の人間じゃねぇ。貿易商のパトロって奴が、奥の"隠し部屋"に連れ込んで何ヤラやらせてるヲタク連中だ。で、何やってンの?君達」

「おいおい、センム。ソンなアヤフヤな連中にミユリさんの御屋敷を紹介するなょ。で、そのパトロさんって貿易商なの?」

「イマイチ得体の知れない奴だった。信用出来りゃいつか商売でツルんでも良かったが。とりあえず、そのヲタクどもを捕まえて何か吐かせろょ」

「いや。逆に僕達が捕まってるw何だかよくわからないけど、とりあえず、その"秘密基地"ってのを見せてょ。何事も先ず"現場"からだ」


3人組が頷き、先頭に立ってシャッターの閉まった廊下を逝く。

中程の小さ目のシャッターの前に立ち止まって屈み込んで解錠。


中は…狭い小間に所狭しとミシン、マネキンや生地がギッシリ!

ファッションデザイナーがオモチャ箱をひっくり返した感じだw


「おやおや。ちょっとした"秘密基地"だね。そして、何より散らかってる…」

「感想はソレだけ?」

「今の所はね。ココにあるコス(チューム)は?」

「生地だけで軽く1千万はスル。カシミヤ、シルク、高級生地ばかりょ」

「…とりあえず、金の動きを洗った方が良さそうだ。スピアにハッキングしてもらおう」


僕は完成品が何着か吊るされてるラックに手をかける。

古代ローマ、ナポレオン、卑弥呼?、宇宙パイロット…


「今回テーマになってるゲームはタイムトラベル系?」

「"火鳥F"って逝うゲーム。"Aコープ"が社運を賭けた新作ょ」

「Fはフェニックスか。何かが蘇るのかな?しかし、落ち目のレイヤーが、こんな高級コスプレを作らせてロフトに隠し持ってるとは」

「資金は何処から?その…パトロ?しかし、パトロがパトロンって覚えやすいねw」

「パトロさんは芸術の守護神。私達にも時々仕事を回してくれてた。実際にはアジア向けのコピー品の制作だったけど」

「貿易商ってコピー商品の貿易かょ?トンだ貿易商だなw密輸商では?」

「YES。でも、僕達には良い練習になった」

「そのパトロ氏は今、何処に?」


すると、3人同時に堰を切ったように、一斉に話し出すw


「ソレが。最近俺達にムカついてたみたいなんだ。コスプレのコピー服をやめると宣言したから」

「そういうコト。もうコピー商品はゴメンでさ。何となく、みんなも僕達が何をしてるか探りを入れてくるし」

「マヌカンがわりにヤタラとエロいコス着せられて琉球人としての人格を否定されたわ」


ミュージシャンの真似ゴトとかやってると、スポンサーの御意向って絶対ナンだけど、彼等は全く意に介さないようでヤタラ眩しいw


彼等は…アーティストなのだw


「で、お披露目の"秋葉原コレクション"だっけ?ヒロインファッションショーは、いつの予定?」

「来週。業界の人間が勢揃いするハズだった」

「ふーん。でも、少なくともフェニは業界人を毛嫌いしてたンだろ?」

「ビジネスだと割り切ってた。必要悪だって」

「コスプレをアートとして世に出すためなら、彼女は悪魔とでも手を組むつもりだった。例え相手が"Aコープ"であっても」

「そー逝えば、数日前、営業再開したヨドバシのレストランフロアで会食した時、彼女は"Aコープ"と激しい口論になってたわ」


ワザワザ店を閉めてから追いついて来たセンムがココから合流。


「ところで、君達。テリィには結局何を相談したいの?ファッションに興味のあるワシとしては知っておきたい」

「あ、そうだった。結局リクエストは何なの?僕にフェニを探せって?」

「ソレもあります。フェニは探して欲しい。でも、そのために是非ヒロインファッションショーを開催して人を集めたいのです。そうすれば、話を聞いたフェニが現れるカモしれない」

「…と逝うワケで、実はテリィたんには"秋葉原コレクション"をプロデュースしていただきたいのです」

「琉球人のお願い」←


えっ?ファッションショーのプロデュース?


「おお。ソレはテリィにピッタリの仕事だ!良かったな、テリィ」

「何処が?しかも、この三密回避の御時世に無理でしょ?そもそも、センム。ファッションとかに興味あるの?」

「美しいモデルに美しい服。興味のナイ奴なんているのか?」


じゃセンムも手伝えょw


第2章 ショーの犬達(show dogs)


前言撤回!今回の仕事大好き!天国だっ!


ホテルのスイートにズラリと水着美女が並び僕に向け一斉に媚び媚びビームを発射スル!

さらに、悩殺のグラビアポーズをキメながら、ウィンク、投げキス、胸の谷間アピール!


思わず生唾ゴックンで…告げる。


「動くな!全員そのまま。万世警察(アキバポリス)だ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「次のモデルはキュン。オフィス・コスモス所属。スリーサイズは 83 57 85。経歴は 昌平橋アニメサミット公式コンパニオン…」


ホテル"24"の支配人から"Aコープ"がオーディション中との情報が入り現場に急行。

コロナで繰り延べ中だったコラボイベントのコンパニオン選びらしいンだが…何で水着?


貸しのある支配人のマスターキーでスイートに飛び込んだら…冒頭の景色と逝うワケだ。

名を呼ばれモデルウォークを始めた水着美女を制し応接ソファの真ん中に座る男に問う。


「"Aコープ"のアコギさんってアンタ?」

「YES。おい!ナンで部外者を入れた?」

「私は、万世警察のテリィ刑事だ。コチラは同じくセンム刑事」


もちろん、僕とセンムは、ココで本名を名乗ったが面倒臭いのでこのママ逝くw

しかし、僕達って刑事モノでは王道の若手とベテラン刑事のコンビにソックリ←


「誰が座れと言った?」

「で、アンタは?」

「チンピだ」

「その名だけで警察に誰だか分かれと?」


アコギの脇のソファに腰を下ろすやテーブルの右端が突っかかって来る。

相手をしたら、アコギが割って入って来てホント計算通りにコトが運ぶ。


「チンピは重要人物ナンだ。ショーを仕切ってくれてる。警察が何の用だ?」

「御社公式レイヤーのフェニさんの件で。捜査の一環でお話を伺いに来ました。お手間は取らせません」

「彼女が何か?」

「失踪しました。御家族から捜索願が出ています」

「そんな!」

「先日、貴方は彼女と口論してたそうですね?コスプレのコトで?」

「コスプレは見てない。彼女は、自分のコスは本番まで誰にも見せないンだ」

「見ズにランウェイを歩かせるのですか?」

「彼女は天才レイヤーだ。その位のワガママは許す」

「でも、動画で貴方は悪霊呼ばわりされてましたょね?」

「褒め言葉と受け取った。悪霊大いに結構。しかし、フェニの失踪は彼女自身の責任だ」

「レイヤーは繊細な生き物だ。リアルの不都合を全てレイヤーのせいにスルのは間違いでしょう」

「とにかく、彼女のランウェイが見られないなら"秋葉原コレクション"も開催スル意味がナイ」

「彼女のコス(チューム)は、既に完成してるが、そのコスがお蔵入りとなるコトをレイヤーたる彼女は望むだろうか?」

「なるほど。しかし、ヤタラとヲタクな正論で"Aコープ"に金を出せと迫る君は、ホントに刑事なのか?」

「モチロンだ。昨夜は何処に?」

「彼女とベッドにいた」


彼が壁際に並ぶ水着美女の1人を指差すと、他の全員が一斉に嫉妬ビームの集中放火!

その全視線をブラックホールのように飲み込み胸を張る彼女は打たれて伸びるタイプ?


しかし…胸がデカいw

スイカでも入ってる?


「チンピさん。例の動画は貴方がUPしたのか?」

「悪いか?コレクションの話題づくりでな。業界じゃ常套手段だ」

「彼女失踪の原因は自分だと認めるのだな?」

「ヤメてくれ。俺はただのパイプ役に過ぎないサ」

「そう。お前はタダのパイプ。なぁアコギさん。こんな信頼出来ナイ奴を何故ソバに置いとくンだい?」

「おい!口を慎まないと…」

「取調べの動画でもUPするか?」

「ナメるな!」


やにわにチンピがナイフ片手に立ち上がるw

やれやれ。ファッション人って情熱的だょ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


頭を冷やそうとチンピだけ別室に呼び出す。

水着オーディションは、チンピ抜きで続行。


「すまん、刑事さん。ついカッとなって」

「気にするな。アンタ、アコギの女とデキてるな?」

「な、何でわかる?!」

「アコギがスイカ胸の彼女を指差した時に、アンタだけが彼女を見なかった」

「し、しまった…アコギに知られたら俺はお仕舞いだ。頼むから黙っててくれ」

「安心しろ。ただ、こーゆー世の中だから、良心に逆らって口をつぐむのも骨が折れる。ソレでなくても、アンタはアキバを敵に回してるし」

「俺がか?何でだ?地元じゃ気弱なチンちゃんで通ってるのに」

「アンタは、あの動画でアキバのレイヤーを1人破滅させた。どんなレイヤーにも狂信的なヲタクがいる。アンタはアキバの夜道を歩けない」

「…わ、わかった。あ!突然ある話を思い出した。ただし、今からスル話は、俺から聞いたとは言わないでくれ」

「内容による」

「フェニとアコギが食事の席で口論してたのは王女郎のコトだ」

「王女郎って?」

「アキバ系の売れっ子DJだが、彼女は"秋葉原コレクション"の仕事を降りたがってた。でも、ショーの成功には彼女のプロデュース能力が欠かせない。"Aコープ"は、金ならあるがショーのノウハウはナイ…おい。くれぐれもこの話は内緒で頼む。もうコレ以上、アキバのヲタクから睨まれたくない」

「なるほどね、ありがと。"秋葉原コレクション"を成功させるには、その王女郎とも会う必要がありそうだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、ランチ営業中の御屋敷。

ヘルプのつぼみんが電話応対中。


「はい…では、失礼します」

「つぼみん、今の電話は何方?」

「パトロと逝う方が雲隠れされたそうですが…何方でしょう?」

「うーん。意外に展開が早いわね」

「見かけた方の話によれば3人のアジア人と車で去ったとのコトです」

「ナンバーは?」

「不明です。セクボ(ストリートギャング)の追跡チームが捜索中」

「わかりました…テリィ様は何処?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


続いて、アキバNo.1ホットドッグ"マチガイダ・サンドウィッチズ"。

実は、僕達のアキバの居場所(アドレス)なんだけど、何と王女郎も常連とのコト。


さすがは、聖地(アキバ)の人間交差点だw


「私は、タダのDJじゃナイの。時計、香水、ファッション全般に自分のブランドを持つ、れっきとしたビジネスパーソンなのょ。ソコらの腐女子上がりのDJと一緒にしないで」

「ヤタラと鼻息の荒い姐ちゃんキター。こりゃフェニならズとも姿を消したくなる。トホホ」

「形あるものは、いつか必ず消える。いいね、貴方。気に入ったわ、アイラブユーょ。じゃ刑事さん2人とも服を脱いで…アラアラ冗談ょ。なんて顔してるの?」


タコが自分で自分の足を食べてマス系のハイテンション女子だ。

恐らく彼女を"自粛"させるコトはコロナでも出来ないだろう。


「悲しい失踪だったわ。フェニとは、いつも一緒に頑張って来た。彼女のショーは、私が全部DJをやったのょ」

「仕事ナンで伺いマスが、昨夜は何処に?」

「そーゆー貴方は何処にいたの…なんちゃって、えっと何処だっけ?そうね。ホテルのプールで泳いで、バーで飲んで、ココでドッグを食べて…"秘密基地"のお若い3人も一緒だったわ」


カウンターの中のYUI店長が頷くので、恐らくホントの話なのだろう。

普通にヲタクのメンタリティだが、ココは少し揺さぶってみようかな。


「しかし、王女郎さん。貴女、永遠の少年みたいな演技がホントに上手いね。筋金入りの女ピーターパンだ。ホントは寂しがり屋って今までバレたコト、ナイでしょ」

「女ピーターパンって何?貴方、愉快な刑事さんね。愉快ついでに教えてあげるけど、私はフェニの"彼女"だった。あの"Aコープ"さんの御招待でヨドバシで会食した夜に別れたから、今はフリーだけど」

「と逝うコトは…あの夜モメてたのは男と女、じゃなかった女と女の別れ話?"Aコープ"は関係ナシなの?」

「"Aコープ"が何か関係あるの?"秋葉原コレクション"のスポンサーを降りるって聞いたけど」

「誤解するなよ。"Aコープ"は、フェニが失踪しても、彼女の魂の宿ったコス(チューム)がアル限りスポンサーを降りない。ソレでも、君はDJを降りると逝うのか?」


王女郎が下唇を噛む。


「貴方…万世橋(アキバポリス)なんかじゃナイわね?誰なの?」

「若葉マークのショープロデューサーだ。"秋葉原コレクション"に力を貸してくれナイか?」

「…わかったわ」


やれやれ。ちょっち前進、ちょっち手戻りw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


刑事ドラマをマネて"裏取り"で"秘密基地"を訪ねる。

3人の若きデザイナーの卵達は一心不乱に服を仕上げ中。


「うん。王女郎さんとは、誘われて良く遊んだょ」

「フェニは王女郎さんと別れたんだって?」

「失踪する直前はボロクソに逝ってた。王女郎は、アキバの恥部の象徴だって。あんなに仲よかったのに。聞いてて悲しくなった」

「じゃ、君らが王女郎さんと遊ぶのをフェニは喜ばないだろ?」

「知ったらキレるわね」

「ソレだって私達を守りたいからナンだけどね。でも come on!私達だって、タマにはハメを外したいのサ」

「3人はショーを諦めてナイね?」

「当たり前だ。おい!テリィたん、ショーはやるンだょな?」

「フェニのためにもさ。俺達は、全てを彼女から学んだ。彼女の力をアキバから世界に示したいンだ」

「私達を大事にしてくれた、そのお返しなの」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


昭和の銀座に"みゆき族"ってナウなヤングがいたけど、その生き残り?が地下アイドル通りの路地裏でメイド2人を連れ歩いてる。


いや?メイド2人が連れ歩いてる…のか?


で、行き止まりの物陰には水が並々に入ったドラム缶があり、男3人が誰かの頭を水中に突っ込んでは何ゴトか激しい口調で(なじ)ってるw


拷問か?


「リュー。おいおい…お前。いったい何やってンだ、こんな暗がりで」

「わっ!と、寅の旦那!何でもない!コレ、何でもない!私達、友達。この人、友達。問題ないから見逃してクダサイ。問題ない。please」

「最後のpleaseだけがヤタラ流暢でサスガは香港系だ…で、どうしますか、お嬢?お友達同士で遊んでるそーですが」


界隈を仕切る若頭の寅吉さんがつぼみんを振り返る…が、つぼみんにスゴい形相で睨み返されて、肩をスボめて哀願調でリクエストw


「リュー。スマンがもう諦めてくれ。その人の頭が水の中に沈んでるじゃねぇか。誰だか知らないが、お嬢の御前だし、ソロソロ別の遊びにしたらどーだ?ソレか…どうだ?今日はもう遅いから帰れょ」

「だから、寅の旦那!コレ、友達。友達の悪フザケ。寅の旦那、気にしない。心配ない。私達、大陸の山奥に帰ってハッピー。この人もOK。みんなハッピー」

「そうか。そりゃ良かったょリュー。何よりだ。で、こんなンで如何でしょう、お嬢?」


御屋敷ヘルプのつぼみんは、その筋の会長の孫娘とあって寅吉さんは頭が上がらない…

と逝うか、ソレより何より、実は寅吉さんはつぼみんが可愛くて仕方ナイのが真相だ←


で、その黒幕?つぼみんが誰かの頭を水に突っ込んでた男の1人の横にスタスタ歩み寄る。

次の瞬間、その男が身体を二つに折り絶叫…しようと口をパクパクするケド声が出ないw


「ダメ!動かないで!」

「グ、グゲェ?」

「動脈が切れちゃう!でも、その前に、その人を私に貸して。返さないけど」


つぼみんが拳で握るフォークが、男の肋骨と肋骨の間に深く差し込まれてるw

男はガクガクと頭を縦に振り、その横で、寅吉さんとミユリさんが横に振る←


第3章 ゲリラファッションショー


ZERO HOUR minus 4h


アキバ街頭の全てのマルチスクリーン、訪れた人々の全スマホをハッキング。

大小サマザマな画面一杯に映った王女郎が、全世界に向かってゲキを飛ばす。


「やあ。ヲタクのみんな!私達は"秋葉原コレクション"。全編がゲームヒロインばかりのファッションショーよ。パンデミックの恐怖が私達を中止に追い込んだけど、この通りコロナの灰から蘇ったわ」


「これから、私達の真の目的をみんなに教えてあげる。ファッションを滅亡寸前に追い込んだコロナパンデミック、お前の企みは、わかってる。そして今日、私達がお前達を葬り、世界のヲタクのためにファッションを自由に楽しむ喜びを奪還するわ」


「コロナパンデミックの持つダークサイドの力、過去に犯した様々な罪を知りたければ、このリンクをクリックして。データは全部揃えておいたわ。コロナパンデミックに立ち向かうための知恵も術も、全て載せてある」


「パンデミックの名の下に人々のパトスを奪うコロナと戦う私達"秋葉原コレクション"に会ってみたくない?今日なら、私達に会えるわ。私達は、世界のヲタク首都"アキバ"の電気街口で待ってる。"秋葉原コレクション"は、みんなの訪問を歓迎するわ」


「でもね!卑劣なパンデミック野郎は第2波のチャンスを狙ってる。だから、三密を避けて!新型コロナよ。お前達は今日で終わり。"秋葉原コレクション"は、世界のヲタクと共に、お前の悪しきウイルスが動きを止める、その瞬間を電気街口から見物させてもらうわ」


「コレは警告ではないの。終わりの始まりよ。私達は"秋葉原コレクション"。全世界の戦う医療従事者に感謝と愛を」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ZERO HOUR minus 3.5h


"秘密基地"にある全てのコスチューム、ショーに使う備品の輸送が始まる。

メインはラックにかけられたコスチュームだが帽子や刀などガジェット多数w


「ゲリラファッションショーだと?クレイジー過ぎる!何を考えてンだ、テリィたんは?」

「最高よ!今日が私達の日ね!みんな、きっとブッ飛ぶわ!」

「でなきゃ俺達は終わりサ!」


デザイナー3人組は自分達のショーとあって興奮を隠せない。

ところが、何故かタクシーが捕まらないと逝うアクシデントw


自分達のボーイ&ガールフレンドを総動員し車を搔き集める。


「昨夜は舌まで入れといて知らん顔かょ?寝てナイのは俺も同じだ!すぐ来てくれ!今すぐ!」

「10分で車を回して!アンタ、アタシに夢中なんだろ?もう2度と私の写真を撮らせないよ!」

「とにかく、急がないとマズイんだ!だって今からショーをやるんだから!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ZERO HOUR minus 3h


凸凹な車列がホテル"24"の身障者用EV前に続々と到着し荷降ろし。

スタイリストなどのスタッフ、そして"モデル"も合流、ごった返すw


「設営は208!全部ソコへ運んで!スタッフも208に全員集合!」

「EVは専用で貸し切ってる!キーは刺したママで!」

「全ての服が1点物だ。細心の注意を払え。さぁ、ショーを始めるぞ!」


208号室は大き目の部屋だが、スタイリストが入り切らないコスチュームを廊下に出す。

ルック別にラックに掛け直しながらホツレをチェック、持参のアイロンでシワを伸ばす。


室内では"モデル"のヘアメイクが始まる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ZERO HOUR minus 1h


リハーサルに先立ち、ランウェイチームのミーティングが始まる。

アキバのストリートで馴染みの顔が続々と集まり熱気ハンパ無い。


そして、リハーサル。


全てのクリエーションをランウェイ上で完璧に融合させる壮大な実験だ。

演出、照明、音響。靴だけ本番用で上は私服の"モデル"が実際に歩く。


司令塔の王女郎がランウェイ全体を見下ろす席から指示を飛ばす。

フィナーレの音出しのタイミングで、最後まで微妙な調整が続く。


やはり、王女郎のプロデュース能力には、図抜けたモノがある。でも、その王女郎さえ…


「こんなランウェイ、初めてだわ。テリィたんが考えたの?あの人は…バカ?」←

「モデルの歩き方だけど、実際に歩かせて確認してみたら、いつも通りで大丈夫だ!」

「OK。モデルのパーソナリティを尊重しよう。初志貫徹」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ZERO HOUR minus 3 min


ショー直前。定刻GOを確認。


"モデル"達が、ヘアメイクのアクセントでつけたカラーコンタクトを確認し合ってる。


「うん、大丈夫」

「いつもコスプレで慣れてるモノね」

「素敵です、ミユリ姉様」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ZERO HOUR


ショー本番。


僕は、ヘッドセットに付いているマイクに向かって小声で告げる。"GO"。

EVドアが開き"モデル"達の眼前に、昼下がりの電気街口の景色が広がる。


電気街口は、改札を出て左手に僕達が"アキバのタイムズスクエア"と呼ぶ広場がある。

昔の家電量販店ビルに囲まれた広場で、中央通りまでの数100mが今日のランウェイだ。


広場全員にいる全ての人のスマホがハッキングされて、勝手に音楽が流れ出る。

さらに広場に面したマルチスクリーンが暗転"introducing"の文字が明滅する。


ファーストルックがEVから踊り出る。


彼女は、例のデザイナートリオの紅一点ナンだけど明らかにモデルの経験がアルらしいw

堂に入ったモデルウォークで広場の人々を振り向かせ、見事に雑踏を左右に割って逝く。


広場では名だたるヲタ芸師達が1列に並んでBGMに合わせ派手にヲタ芸を打つ。

そのヲタ芸のランウェイをアニメのコスチュームで颯爽と"モデル"が歩く。


御屋敷ヘルプのつぼみんにセクボのジュリ、ハッカーのスピア、特殊部隊のサリィさん、もちろん、ミユリさんも…続々と登場スルw


つぼみんの女騎士コスに目を細める寅吉さんが、若い衆に客の三密回避で指示を飛ばす。

何事か?と集まり出した人混みを"笑顔で拍手を指導しながら"若い衆が散らして逝く。


慣れない笑顔で顔が引きつってるけど笑


でも、彼等のお陰で続々集まる群衆は見事にバラけて、手拍子しながら広場に散らばる。

EVから躍り出たレイヤーは、次々と温かい手拍子に囲まれヲタ芸のランウェイを逝く。


「コレがアキバのゲリラファッションショーか!スゴい!」

「実力を証明するチャンスは"今"だ。ビビってどーする。ショーは止まらない」

「All right!It's SHOWTIME, folks!」


既に現場はフィナーレ!


再度ホテル"24"側へ"モデル"達が全員戻ってEVの前に整列スル。

モデルも客も広場の全員が手拍子しつつドアが開くのを待ち受ける。


そして、ドアが開くと…


大きなドヨメキと甲高い指笛が鳴り響く中、それぞれが担当したキャラのコスチュームに身を包んだ3人のデザイナーが姿を現わす。


で、ドサクサに紛れ、デザイナー達の後で僕とミユリさんもチャッカリ腕を組んで登場。


ミユリさんは僕が脚本(ほん)を描いた"地下鉄戦隊メトロキャプテン"の"ムーンライトセレナーダー"のコスプレしてくれてる!


ビキニの黒バニーだょ!


両側に今日のモデルを従え、横一列に広がり広場をフィナーレウォーク。

大観衆もヲタ芸のお陰でsocial distanceを十分に確保しているようだ。


中央通りまで歩き切ると、路面のグレーチングを開けてミントさんが待っている。

僕達は、次々と地下へ消え、ヲタ芸師達は群衆に紛れ、身障者用EVの中はカラだ。


"アキバのタイムズスクエア"は、たちまち雑踏に埋まりショーの痕跡は完全に消える。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ZERO HOUR plus 37 min


ショーの打ち上げ会場は、万世橋地下の秘密レストラン"ウーターズ"だ。


モニターから王女郎の音楽が鳴り止まない。

モデルやスタッフ、デザイナー達が集まる。


ショーに携わった全員の笑顔が弾け、指笛は鳴り止まズ、アチコチで握手が交わされ、誰もが肩を組んで拍手喝采し、熱く抱き合うw


無理矢理テーブルに上げられた僕の挨拶。


「今日、君達全てとココにいるコトを、僕は生涯誇りに思う。またショーをやるのなら、今日のこのメンバーでやりたい。君達となら僕は全てを乗り越えられる」


実は最後まで逝って無いンだ。

こんな時に限って涙が溢れて。


第4章 エピローグ


結局、フェニは姿を現さない。


聞いた話では、今はパトロ氏のトコロで囲われてるらしい。

いや。ホント嫌な逝い方だが、彼の"女"になったようだ。


先日、昭和通り口の秋葉原公園で氏とバッタリ会って、少し話をスル。


「あ、君は万世橋(アキバポリス)の刑事さんじゃナイか?事件はどうなった?」

「迷宮入りです」←

「私は、大陸の中華な国と貿易をしている。電化製品、衣料、ブランド品。この商売には必ずギャングが絡む。上海、広州、マカオ。何処も同じだ」

「何かモメたのですか?」

「モメるも何も。使ってたデザイナーがコピー品の商売は嫌だとか言い出してね。仕方ないから、その商売は廃業にしたンだ」

「すると、足抜けは許さないと本国から殺し屋が来たワケですか?」

「殺し屋?あ、テリィたんには、変なトコロを見られてたね。まぁ、彼等も立場があるから。私が付き合ってあげた部分もあるンだ」

「でも…路地裏で殺されかけてましたょね?被害届は出しました?」

「いや。アレは悪フザケしてただけで。あはは…ソレに、彼等が私を殺すのは不可能だ。私には手を出せない」


実際、パトロ氏が"あるボタン"を押したら暴力沙汰はピタリと止む。

突如全てが丸く収まってコピー以外の商売も順調に流れ出したそうだ。


ついでに、過日、万世橋(アキバポリス)に赤いネクタイの大使館員が訪れ、ゲリラファッションショーを大目に見るよう圧力をかけて逝ったらしい。


元より被害届が出てるワケでなく、誰かを捕まえようにも全員が地下か雑踏に消えてる。

敏腕刑事の新橋鮫から何度か"俺の偽者が出たようだが"と牽制球が飛んで来たが無視←


実はフェニに頼まれてね、と頭を掻くパトロ氏はホントにフェニにはメロメロのようだ。

まぁ儲けた金で、好きな女に好みのコスプレをさせてるワケだから誰も文句は逝えない。


昔、ハウスマヌカンって流行ったけど、コレってハウス(コスプ)レイヤーってコト?


おおっ!コレぞ男のロマン!


えっと、今回は男のロマンの他に、男女のロマン?もかなってる。デザイナー達の話だ。


「あのゲリラファッションショーで、俺達の夢は全てかなった。ありがとう、テリィたん」

「ショーの目的の1つはスポンサー探しだ。結果はどうだったのかな?」

「ファイナルウォークの時にサイン入りの記念写真(チェキ)をバラまいたンだけど、大手だけで、もう32件も着信があったわ」

「イベントを邪魔したって苦情じゃないゼ。センスが気に入ったって電話ばかりだ」

「予想外の展開ではあったが、テリィたんのショーはエラい刺激的だった」

「君達は、誰を踏み付けにするコトもなく、実力で話題のショーをやり遂げた。でも、成功の称賛も栄光も、いつかは消える。その時に自分が嫌いだったら悲惨だぞ。君達は今、自分で自分を誇れるか?」

「誇れるとも」

「良かった。また、次の夢で逢おう」


そして、最後は少し気が重いけど、DJの王女郎さんだ。

乙女の失恋って可憐だけど、まぁコッチはアラフォーでw


「フェニの復活を飾るのは、私のDJのハズだった」

「ずっと彼女は、王女郎さんのDJでランウェイを歩いて来たンですょね」

「そう。私は彼女の女神(ミューズ)だった」

「(ウケだったのかw)彼女とは逢えたのですか?」

「実はショーの朝。でも、フェニはよそよそしかった。コス(チューム)を見るのも躊躇ってた」

「あの金の羽根のドレスですか?」

「いいえ。黒いビキニのバニーよ。でも、デザイナーの子達は逝ったの。バニーは新しく見つけたモデルに着せる服だって。ミユリって娘よ。私と同じアラサーのフリしたアラフォー」←

「ソレで裏切られた気分に?」

「YES。酷い仕打ちでしょ?だから、次のショーで見返してやるわ。私、次はモデルで出られるかしら?メイクもしなきゃ」


僕は、フト遠い目になるw


「無理です。出られません。もう、ショーは終わりです」




おしまい

今回は海外ドラマで見かける"ゲリラファッションショー"をネタに、ショーに賭ける若きデザイナー達、実は天才肌のスポンサー、失踪した公式コスプレイヤーとそのパトロン、プロデューサーとしても有能な伝説のDJなどが登場しました。


海外ドラマで見かけるNYの都市風景をコロナ解除前後の秋葉原に当てはめて展開しています。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ