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残されたモノ

作者: 野脇幸菜

彼は

「別れよう」というメールを残してこの部屋を出て行った。


そんなメールを見て話を聞きたくて急いで家に帰って来たのに、彼の物は何も残ってなかった。


彼の物それはこの部屋で同棲する前に持ち込まれた物。


色違いの二人で買ったマグカップや歯ブラシ、鍵などは残っていた。


そのメールを見てすぐに電話したけど通じない。


メールも届かない。


拒否設定されてるのかな。


いつもと同じ朝をむかえて家を出た。


そして、いつもと同じ待ち遠しい気持ちで私はこの家に帰ってくるつもりだったのに。


彼は違った。


浮気もしてないし彼にもそんな様子はなかった。


なぜなんだろ?


理由も告げられずに私の気持ちを変えることはできないよ。


涙も出てこない。


さぁーと何か体の中が冷えてく感じ。


びっくりして心臓がきゅーって締め付けられて、いつかはじけてしまいそうな気がする。

体がフワフワして立っていられなくなりそうでベッドに倒れ込んだ。


彼の匂いがする。


落ち着く。


離れたくない。


消えないで。


眠ってしまっていた。


もう朝だ。


仕事に行かなくちゃ。


彼が戻っている様子はない。


二日酔いでもないのに頭が痛い。


体がだるい。


全てが重い。


顔でも洗おう。


洗面所で彼の乾いている歯ブラシを見つけた。


早起きの彼はもういない。

乾いているブラシが彼の心を代弁しているようだった。


私はとっさにそれを手に取って、サッと水にぬらして口に入れた。


彼の匂いがする。


彼のブラシを私は平気で口に入れることができるのに。


その姿を鏡越しに見つめながら私はおかしく思った。


彼が見たら気持ち悪がるのだろう。


引いてしまうんだろう。


その差を思うと涙が出てきた。

私は歯ブラシを抜くことができないのに。

読んで下さってありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言]  野脇幸菜さん、こんにちは!  よくある光景。というか、こういうシュチエーションは話のタネにしやすいですよね。 そこで、いかに自分だけの世界をつくっていけるかが作者の感性を見極める部分だと思…
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