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Whatever  作者: けいぞう
36/78

36.ヒロカ

 ニーソックスを履くかどうか。

 そして履く場合、それを白にするか黒にするか、それが問題だ。

 ニーソックス自体、なんとなくあざとさを匂わせるアイテムだ。

 さらにそれが白となるともう完全に的を絞った感じになる。

 赤いチェックのミニスカートには、やっぱり黒だろう。

 その場合、靴はハイカットの白いコンバースがいい。

 上は黒いスタジャンを想定していたが、着てみるとあんまりに子供っぽい。

 オリーブグリーンのパーカーも良いだろう。

 しかしメイのコートと色がかぶる。

 黒のテーラードジャケットが良いか?

 そうなるとインナーは……ヘンリーネックのカットソー?


 衣装候補の中から第一候補を着ていくことに決めたはいいものの、コーディネートで迷ってしまった。

 姿見の前で着たり脱いだり履いたり換えたりを繰り返す。

 メイに見てもらうとなると手は抜けない。

 普段はつけない腕時計もつけてみた。

 リップもラメ入りの物にした。


「……寛、まだやってるの?デートじゃあるまいし、何をそんなに悩むことがあるのよ」


 フリースのパジャマをだらしなく着たお母さんが呆れている。


「お母さん、これでどうかな?」


 仕上げにキャスケット帽を被って、お母さんに向き直る。

 めいっぱいよそ行きの装備が出来上がっていた。


「……うん、まぁ、いいんじゃない?ジャケット、ブローチでもつけたら?」

「あ!それいいかも」


 面倒くさそうにしながらも的確なアドバイスをくれるお母さん。

 伊達に金髪美女じゃない。確か赤いリボンに小さな白いバラのついたやつがあったはず……。

 私は自室に戻って、小物入れをひっくり返す。


「……よし」


 もう一度鏡で全身を確認して、約四十分の格闘に決着がついた。

 キャリーにヘアカタログが入っていることを確認して、おみやげの紙袋をハンドルにぶら下げる。

 ギターを背負って、準備完了だ。


「じゃあ、行ってきます」

「はいよ。メイちゃんによろしくね」


 あくびをしながらひらひらと手を降って見送るお母さん。

 私は軽い足取りで出発した。


 快晴の空の下、キャリーの車輪がガラガラと鳴る。

 時間は朝八時。相変わらず人通りの少ない大通りを進む。

 すっかり秋らしくなった空気を指先と頬に感じる。

 昨日メイと手を繋いで歩いた駅までの道のりをなぞって、あっという間に駅にたどり着いた。

 逸る気持ちを抑えて、切符を買って改札をくぐる。

 なんだか旅行に行くような心持ちで、キャリーと一緒にエスカレーターに乗る。

 ホームの自動販売機にホットドリンクが置かれているのを見つけて、ココアを買った。

 小さな缶を両手で包むようにして持つと、気持ちがほっと落ち着いた。

 好きな人が待つ場所へ向かうというのはいいものだ。

 ありきたりなはずの何もかもが輝いて見える気がする。

 メイはもう起きているだろうか?電車を待つ間、メールを打ってみることにした。


『おはよう!もうすぐ電車に乗るから、九時少し前に着くからね』


 すぐに既読のマークが付いた。

 その二文字さえ愛おしい。

 八時二十分、時間通りに車両がホームに到着した。

 貸切状態の車両に乗り込んで席に腰掛けると、スマホが震えた。


『おはよう。昨日は少し夜更かししちゃって、ヒロカのメールで目が覚めたよ』


 私はすぐに返信する。


『モーニングコール、じゃなくてモーニングメールだね。毎朝やってあげようか?』

『なんだか悪いからいいよ。ちゃんと自分で起きられるもん』


 黒猫があくびするアニメーションスタンプ。

 動物シリーズのスタンプは、私が送っていたらいつの間にかメイも使うようになった。

 なんとなくその黒猫はメイと雰囲気が似ている気がして私もお気に入りだった。

 

 電車が動き出す。

 すぐ会えるのに、メールは続いた。


『昨日の夜は何してたの?」

『筋トレとか。腹筋ついてきた気がする。ウエストが締まって嬉しいかも』

『それ以上スタイル良くならないでよ。隣に立つ立場にもなってー』

『ヒロカも体鍛えたら?』

『うーん、運動苦手なんだよね……』


 ココアを開けて飲む。

 寒くなってくると甘いものが一層美味しく感じるのは、体が冬に向けて蓄えを始めようとしているからだろうか。


『……動かないと本当に太っちゃうよ?』

『う……頑張ります』


 ――メイに合う前に、ココアは飲み終えて缶は捨てることにしよう。


 メールをしている間に電車は薊橋駅に到着した。

 私は早足で改札を抜けて、そのままステーションインに駆け込んだ。

 のんびり動くエレベーターを急かしつつ、三階に到着。

 廊下に出ると、302号室の前辺りから男の人が歩いてきて私とすれ違った。

 ひょろりとした長身に白髪交じりの頭、真面目そうな四角い眼鏡。

 頬の痩けた顔は少し神経質そうでもあり、何より酷く疲れているように見えた。


 (あれ、もしかして……メイのお父さん?)


 なんとなくその人がエレベーターに乗り込んで行くまで待ってから、私は302号室のインターホンを押した。

 すぐにドアが開く。


「おはよう。いらっしゃい」

「おはよう。お邪魔します」


 ダメージジーンズと黒いカットソー姿のメイ。

 声も表情も穏やかだ。

 私はほっとして、導かれるままに部屋の中へ。

 お父さんかもしれない人を見かけたことは、とりあえず話さないでおこう。

 荷物を置き、まずはメイに簡単にお惣菜の説明をして、備え付けの小さな冷蔵庫に入れる。


「エリカさんにお礼伝えておいてね」

「はいはい。まあその話はいいとして」


 メイの前に立ってポーズを決めてみた。


「どうかな?衣装、こんな感じが良いかなって思ってるんだけど」

「……へぇ」


 少し後ずさって、私の全身を上から下まで眺めるメイ。


「……可愛い。ヒロカってやっぱりおしゃれだね」

「ふふん、メイのその服だって、私の見立てなんだからね。Irisの衣装担当はお任せあれ」


 私はキャリーから衣装候補達を引っ張りだしてベッドの上に並べる。

 スカートはお気に入りなので決定としても、インナーと上着はメイの意見を聞いてみたかった。

 私の衣装持ちっぷりにメイは感心しきりだった。

 実はお母さんのお下がりが少なからず含まれていることは、伏せておくことにする。


「こっちの、白いブラウスを中に着てみるのはどう?上は真面目っぽいけどスカートは明るいからメリハリがつくんじゃないかな?」

「だよね、私もそれ気になってたの。ネクタイしてみてもいいかな?」

「あ、素敵」


 カットソーをノースリーブのブラウスに変えてジャケットを羽織る。

 細身のリボンタイをゆるっと締めて、出来上がり。


「……それだと、帽子の形も真面目な方がいいのかな?」

「うーん、ハットは持ってないんだよね……。帽子は無しで、やっぱり髪の毛すこしいじってみようかな?これこれ」


 私はキャリーのポケットからヘアカタログを引っ張りだす。

 私はジャケットを脱いで椅子の背に掛け、ベッドに腰掛けて膝の上にカタログを広げた。

 メイが右隣に座って覗き込んでくる。

 私の髪色と髪の質が近い写真を中心に一つ一つ吟味していく。

 私が気に入ったものを指差して「これは?」と聞くたびにメイは目を閉じて頭の中で私の頭と髪をモンタージュする。

 何十とある選択肢の中から候補を絞り込んでいく作業は予想以上にワクワクするものだった。

 最終的に、前髪を短めにして眉をしっかり出すカーリーボブに決まった。


「じゃあ、日曜日麻生に戻ってから、美容院行ってくるね」

「オッケー、楽しみにしてる」


 それから、メイクやネイル、小物なんかをどうしようかと相談が続いた。

 あまりゴテゴテと数を増やしても良くないというのは共通の見解で、あくまでアクセントとして効果的なものがないかを探して、ヘアカタログのモデルがつけているアクセを参考にしてみたり、スマホの通販サイトの画像を眺めてみたりする。

 不思議なもので、探していると私のものばかり候補が出てきてしまう。


「メイにはあんまりアクセなんて必要ないような気がしちゃうなぁ。そのままでカッコいいもん」

「……嬉しいけど、なんだか面白く無いね」

「ほら、だって、男らしいから」

「また言う」

「ごめんごめん」


 私はメイの腕に両腕を絡ませる。

 普段の振る舞いでもやっぱり、私のほうが女の子の役回りになるようだった。


 ふと、くっついたままで会話が途切れた。

 もしこの部屋にいるのが男女のカップルだったら、ちょっといいムードなのかもしれない。

 私達の関係の定義をはっきりさせるのは難しいけど、いまはその結論を出さないままで、この心地良い胸の高なりを楽しんでいたいと思う。

 メイの右手が、私の手のひらに重なる。

 たったそれだけのことで、顔が熱くなるのを感じた。

 こんなの、ただの友達の関係ではありえない反応だった。


「そんなに、私って男っぽいのかな?」


 少し抑えた声が、私だけに届く。

 他に誰が聞いているわけでもないけど、私一人のために発せられるその囁くような声が私の体の芯に響く。


「私と比べれば、ってだけだよ。それに、メイの女の子っぽいところだって、私は知ってるよ?」


 少しだけその距離にいることに慣れてきたのか、今までよりも余裕を持って返事をすることが出来た。


「すっごく寂しがり屋さんなところとか」

「……言わないでよ」

「ごめん、でも、そういうところもあっていいと思うな。こうしてくっついていられるし」


 メイが欲しがるものを私があげる。

 メイがして欲しいことが私のしたいこと。

 私たちはたった二つのピースで出来上がるパズルみたいだ。


「どんなことでも、相談してほしいな。役に立てるかわかんないけど、ちゃんと聞いて、どうしたらメイが寂しくなくなるか考えるからさ」

「……」

「もちろん、無理しなくていいからね。ほっといてもこうやってそばにはいるから」


 自分のことをちょっとズルいと思う。

 本当は私が誰よりそうしていたいだけなのに、相手のためという言い訳を盾にしている。


「……じゃあ、それだけで足りなくなっちゃったら?」

「え?」


 メイの左肩に預けていた顔を上げる。

 窓の外は相変わらずの快晴。

 南向きの窓から秋の陽光が差し込んでいる。

 メイの黒髪が艶々と輝いている様に見とれていると、メイの口の端が少し持ち上がったのが見えた気がした。

 私の腕の中から引きぬかれたメイの左手が、私の肩に置かれる。

 徐々に込められていく力が、抵抗することを思いつく前に私の背中をベッドの上に落下させた。

 窓枠に切り取られた四角い日向の対角線上に、私は仰向けに横たわる。

 髪がシーツの上に散らばる。

 ぬるく締めたネクタイが一瞬遅れて私の胸の上に落ちてきた。

 続いて、メイの黒髪の毛先が私のむき出しの両肩を擽る。

 私の体の上に四つん這いになって、メイが私を見下ろしている。

 私とメイの顔が向かい合って、その両サイドを黒いカーテンのようにメイの髪が覆い隠す。

 潤んだ瞳で、私を見つめているメイ。

 五月蝿いくらいに暴れまわる私の心臓。

 同じタイミングで冷蔵庫が唸りを上げたのが何故か妙に印象的だった。


 いきなりだった。

 でも、早送りのようでスローモーションのようでもあった。

 メイがそばにいると、時間の感覚も脈拍も狂いっぱなしだ。

 体全体が脈動しているように揺れる。

 地震が来たのかと思うくらいだ。


 目の前にメイの顔。

 でも、もうみっともなく慌てたりはしたくなかった。

 メイになら、もう別に何をされたっていいのだ。

 メイがしたいと思うことなら、抵抗する理由なんかない。


 鳶色の目が、私を見つめている。

 私はまっすぐにその目を見返して、じっと見つめ合う。


「……なんだか、恋人同士みたいだね」


 少しおどけるようにして、メイが沈黙を破った。


「……ホテルで二人っきりなんて、ドキドキだね」


 私も負けずに返した。


「私が男っぽいとしたら、ヒロカは、少し無防備すぎるんじゃない?」

「……無防備だと、どうなっちゃうの?」


 自分の声がかすれるのを感じた。

 気がつけば口の中がカラカラだった。


「いつかみたいに、襲われちゃうかもよ?」


 少しおどけて、にやりと笑うメイ。

 私は、真剣な顔を作ってみせた。


「……いいよ。メイになら」

「……」


 メイが小さく息を飲んだのが分かった。


「もし、ただ抱き合ったり、ほっぺにチューするだけじゃ足りなくなっちゃったなら……好きにして」


 流石に真正面から顔を凝視していられなくなって、私は左側に目線を逸らした。

 メイの腕に添えていた両手を脱力して、シーツの上に落とす。


「……どうしたの?いいよ。抵抗なんかしないから」


 口から飛び出してきそうな心臓をなんとか宥めながら、私は目を閉じた。

 顔が火を吹いているかのように熱い。


「……本当に、いいのね?」


 メイの呼吸が乱れている。私は小さく、でもしっかり分かるように頷いてみせた。


「……じゃあ……」

「……あ……」

「ここ……」

「あっ……。ぇ……あっ?!」

「こうすると……」

「ちょっ、あ、何……っ、あ、あはははははっ!何で?!」


 またしても両脇腹を指先で擽られる。

 これじゃ前回と同じだ。


「もう!なんで引っかからないの?!騙されてくれてもいいのに!」

「あはははははっ、な、何……っていうか、な、いはははははっ!」

「いつから気づいてたの?もう、そんなに私って分かりやすい?」

「やめ、やめてっ!こ、答え……っ、あははははっ!られないっあはははははっ!!」

「あ、そっか、ごめん」


 メイの拘束から開放されて、私はベッドの枕の方に後ずさった。


「……私って、演技力ないかな?」


 ……演技?

 言われてみれば、なんとなく笑い方がいつものメイと違うような気はしたが……。

 私は百パーセント本気だと思っていた。

 本気でも構わないと思って受け入れていたのに、メイの演技を見抜いて乗っかっていると思われたらしい。


「もし私に本当にそういう趣味があって、その……服とか脱がされ始めたらどうするつもりだったの?」

「……いや、それは……」


 自分の肩を抱きしめるようにして、私は伏し目がちになってつぶやく。

 まだ息が落ち着かないが、なんとか声を吐き出す。


「私は……メイにだったら、ほんとに……」

「……え?」

「それを冗談だなんて……。ちょっとショックだな……」

「……」


 またしてもメイが息を飲む。


「……ねぇ、メイは、そういうのは嫌い?女の子同士だと、やっぱり……ダメ?」


 私はにじり寄るようにしてメイに迫る。

 メイは目を見開いたまま、ベッドの上に尻もちをついて、マットレスの端まで追いつめられる。


「私ね、メイが落ち込んでる時にこうしてそばにいて、気づいたんだ。こんなにそばにくっついても、全然嫌じゃないって。むしろ、できるなら、もっと……」


 メイの鎖骨にこつりとおでこをくっつけて、そのまま囁く。

 体を硬直させたメイが抵抗する素振りはない。

 きっとそんなことを考える余裕もないほど混乱しているのだろう。

 相手が同性であることに対する生理的な嫌悪感はないのだと思う。

 じゃなければ、私に何度もキスなんかさせるはずはない。


「ねえ、もし……メイが良ければ……私は」


 自分でも驚くくらい、女っぽい声が出ていた。

 今まで使ったことのないスイッチが入ったような気がする。


「……ほら、メイだって、無防備だよ」


 せっかく入ったスイッチはもったいないが、こんな展開はまだ早い。

 すべては文化祭が終わった後と決めた。

 だから、今は仕返しだ。


「無防備過ぎて……こんなこともできちゃう!」


 私は両手を脇腹にすべりこませて、さっきメイがしたのと全く同じくすぐり攻撃をしかける。


「……」

「……あれ?」


 薄い脂肪の下の肋骨をぐりぐりと指先で押しこむように力を込めるが、メイは全くの無反応だった。

 呆然とした表情のまま、黙って私を見つめている。


「……もしかして、メイって、くすぐり平気な人?」

「……え?あ、うん、そうみたい。やられたの初めてだけど」

「……」

「……」


 長い沈黙の後、すっとメイの両手が持ち上がる。その指先がゆっくりと私の脇腹に……。


「なっ……あははははっ!なんで?!なんで、また?!」

「な、なんとなく、もうこうするしか収集がつかない気がして!」

「そんなっ……!あひっ、やめてやめっ……あはははははははは!だめ、死ぬ……あははははっ死ぬってば!」


 理不尽な報復はその後たっぷり数十秒続いた。


「ふ……不公平……。絶対こんなの……不公平」

「私もそう思う。けどいいじゃない、たまにはヒロカが負けてくれても」

「わ、私……何かメイに勝ったことあったっけ?」

「うん、演技力は間違いなくヒロカの方が上だよ。絶対本気だと思ったもん」


 事実、半分以上本気で言っていたのだが。

 勝ったはずなのになぜ私だけがベッドにへたり込んでいるんだろう。


「あー楽しかった。たまにはこんなふうにふざけるのも楽しいね」

「そーだね。あー、そーだね。楽しいね。なによ……。メイの不感症」


 やっと体を起こして、解けたネクタイを締め直す。

 こんなことなら冗談じゃなくて本気で迫って、行けるところまで行ってやればよかった。

 まあ、メイがこんなふうにはしゃいでおどけて見せてくれることは珍しいので、それはそれでいいと思えるのだが。


「さて、ちょっと出かけない?お昼ごはんも食べなきゃだし」

「……メイのおごり?」

「それでもいいよ」

「嘘だよ。もー、そのかわり絶対何かで仕返しするからね」


 よいしょと声を上げながらベッドから立ち上がり、上着を羽織ってギターケースを肩にひっかける。

 ハンドバッグなんて持ってきていないので、ギターケースのポケットにスマホと財布をねじ込んだ。

 メイもコートと部屋の鍵を手に持って、ドアを開いた。


「ご飯って、このそばに何か食べる所あるの?」

「うーん、すごく古いラーメン屋さんが、一キロくらい先にあるかな」

「遠いね……。じゃあ一旦麻生に戻る?」

「ヒロカ、高岡って行ったことある?」

「うん、何回かあるよ。あそこならなんでもあるよね。行ってみる?」

「そうだね、案内お願いしていい?」

「オッケー」


 一階から上がってくるエレベーターを待ちながら、スマホで電車の時間を確認する。

 丁度上りの電車が十五分後に来る。

 麻生とは逆方面に四駅ほどいくと高岡だ。

 一応沿線では一番栄えている街で、若者向けの施設も多い。

 食事も買い物も不自由はない。


「でもいいの?デートは文化祭終わるまでお預けなんじゃなかった?」


 ステーションインを出て駅に向かう途中、私は尋ねる。

 一緒に出かけられるのは嬉しいし、正直行き先なんかどこだって構わないが、一応今日は練習する心づもりでいた。


「それが、ちょっと考えがあるの。まずはご飯食べながら相談しよ」


 私はとりあえず、何も聞かずにメイについて改札をくぐった。

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