隣の芝生は青い7
森久保、森久保の姿が見付からない…。
クラス確認した時、確かに森久保の名前を発見したのにな。
「誰探してるの?」
背後から前野の声が聞こえた。
「え?お前もクラス一緒だったのか?」
オレの後ろの席に腰掛け、上目遣いでオレの事を見ている前野がそこにいた。
「てか、お前何でこんなとこ座ってるんだよ、出席順なんだから、ここじゃないだろう?」
そう言うと、ふふんと鼻を鳴らして、
「鈴木くんの夏音探知機レーダーを感知したので、邪魔しにきた」
と言ってきた。
「はぁ?何だよ、それ?」
「夏音はみんなの憧れだよ、男女問わず夏音の事を嫌いな人なんてこの世にいるはずない。そんな夏音が鈴木くんに振り向く可能性は0%、鈴木くんが傷付かないように私が見張ってるの」
「ますます意味分かんねー」
確かに、森久保がオレのことを振り向くなんてのは0%だと思う。
でも、片思いするぐらい勝手じゃないか?
しかし…。
こうして新しい教室を見回すと、このクラス女子のレベル高くないか?
さすがに森久保以上の女子はいないが、前野レベルならウジャウジャ…。
「今私をディスったでしょ?」
前野に背中をつまれ、鈍い痛みを感じた。
「何だよ、お前、オレは何も言ってない」
「鈴木くんは考えてる事がすぐに顔に出るから分かるの!」
前野はエスパーの能力を持っていたのか?
チャイムが鳴った瞬間、教室の扉が開き、颯爽と森久保が入ってきた。
森久保の長い髪を風がさらう。
あー、何かいい香りがここまでしてきそうだ…。
クラスのほとんどの人間が森久保に目を奪われる。
一瞬目があった気がした。
え?今オレを見て笑った?
神様、ほんの少し時間を戻せる能力を僕にください。