表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ごく平凡  作者: 美月里亜
17/18

隣の芝生は青い17

「す、す、鈴木くんって彼女とかいないの?」



カラオケへ向かう道中、熱を帯びたような目をしてオレの事を上目使いで見てくるから、ズズズと後退りしてしまった。

麗らかな春の日差しに包まれながら、クラスメイトの蒼井雅樹は大きな目を何度も瞬きさせながらオレの答えを待っていた。

コイツはどんな心境でこの質問をぶつけてきているのだろうか?

そう思う一方で、冷静に考えてみれば。

いやいや、オレの考え過ぎではないか?

と思う自分もいた。

オレだって同性の友達に、彼女いないの?って質問はよくする。

と言うことでこの質問は単に好奇心以上の物はないと受け取っていいはずだ。


「いや、特にいない」

『特に』ってつけるのおかしいだろう?

と自分の言葉に突っ込んでしまった。

彼女いないか?と聞かれて、特にいないって言っていいのはオレの右隣を歩いている、どこからどう見てもイケメンの天王寺とかが使うものだろう?

しかも、女の子に聞かれて、『特に』とか使うならまだしも男に聞かれて、『特に』と言う言葉は見栄を張っているようにしか思えない。


「わぁーーーーー良かった!」

ピョンとジャンプして小さく手を叩く蒼井は、すぐにハッと我に返り頬を赤くして頭を掻いた。

へ?良かったって、これまた奇想天外な答えが返ってきたが、この答えだって考えようによっては、彼女募集の自分が友達に彼女がいると言われたらショックであるが、友達も彼女がいないと答えてくれたら、安心して『良かった』と答えるのが常ではないか…。

と…思いつつも蒼井の喜びようはそれとは違う気がして、救いを求めるように天王寺を見上げたが、天王寺は春風に吹かれて悠々と口笛を吹いていた。

生い茂る木々の下でただ口笛を吹いているだけなのに、どうして彼はこんなにもイケメンなのだろうか?

日差しさえも彼に味方して、スポットライトのように彼を照らしていた。


「ん?」

ようやくオレの視線に気付いた天王寺が口を開いた。


「天王寺、話し聞いてた?」

「悪い、全く聞いてなかった」


だと思った。


「蒼井に彼女いないかどうか聞かれたんだけどさ、天王寺も彼女いないよな?」

そう、どう言う訳かこんなにイケメンな天王寺に彼女はいない。

天王寺には忘れられない初恋の相手がいるそうで…その相手と言うのがまだ確証はないのだが、恐らく自分ではないかと言う疑念が出てきている…。

その話は置いといて。

「彼女話しか-。青春って感じでいいなー。そう言う蒼井は彼女いないの?」

イケメン天王寺の残念な点。

それがこの昭和ちっくな言葉だ。


天王寺に会話を振られた蒼井はオレには見せない、苦い顔で渋々答えた。


「彼女なんているはずないじゃないですかぁ」


そこでひと息つき、パァと顔を輝かせて、オレの腕にしがみつき元から高い声を更に高くして言った。


「好きな人はいますけどっ」




ああ、神さま。

いつか女の子にこんな事されたいと思うのはワガママなのでしょうか?








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ