隣の芝生は青い16
「す、す、鈴木くん、今日、いっいっ、一緒にカラオケ、で、でも、行かないかな?」
放課後、天王寺と一緒に下駄箱を出ようとしたとろを小柄なクラスメイトに掴まった。
久々の登場の蒼井雅樹だ。
いや、同じクラスなのだから顔を合わせているのだから、久々と言うのも可笑しいが、あれ以来蒼井は話しかけて来なかったので、正直存在を忘れていた。
蒼井雅樹は、男子にしておくのは勿体無いほど(?)のかわいさで。
容姿はもちろん声までかわいくて、学生服を着ていなければ一見男女の区別ができない。
しかも、この蒼井、オレに気がある感じがしてどう接していいか分からない。
自意識過剰なのかもしれないが…。
ん?男に気があると思われるのが自意識過剰なのか?言葉の使い方が可笑しいか?
まぁ、取り合えず、できたらあまり関わりたくないが…。
キラキラとした目でオレを見上げる彼を邪険にするほどオレは残酷ではない。
まるで子犬のように、ハッハッと呼吸してオレの返事を待っていた。
だが…。
「ん?カラオケ?いいんじゃないか?オレも行くー」
天王寺の答えを聞いた途端、明らかに怪訝な顔を見せた。
え?
オレと目が合うと、一瞬だけバツが悪そうな顔をしたが、すぐに極上の笑顔を向けて答えた。
「あ、あ、はい、一緒に行きましょう」
見間違えだったのかな?
「鈴木、行くだろう?」
まぁ、天王寺が行くのなら構わないか…。
スクバを両手で抱え込むように持った蒼井はスキップするような足取りでオレの隣に立った。
やっぱり…。これは自意識過剰なんかではないのだろうか?
「蒼井くんって女の子っぽいよな、オレも初めて見たとき女かと思った」
「でも、⚪ャニー系な感じもするし、女の子に人気あるんじゃない?」
さっきから天王寺が一人で話しているような感じがするが、天王寺は一応蒼井に話しかけていた。
しかし、当の蒼井は聞こえない振りをしいるのか、一向に返事をせず、オレを見ている…。確かに見ている。
熱い視線を感じるのだから間違いないだろう。
ああ神さま、いくら二人きりでは無いとは言え僕はこのまま一緒にカラオケ行ってもいいのでしょうか?