隣の芝生は青い15
「鈴木ーーーー」
昼休み、廊下を歩いていると大声で呼ばれた。
しかし、鈴木と言う名前の多いこと…。
その瞬間、何人かの生徒の足が止まった。
「お前もこの高校だったんだ?」
声の主はオレに用があったらしい。
その他大勢の鈴木を無視してつかつかとオレの前まで歩いてきた。
「いやー、良かったよ、お前が同じ高校で」
中学の三年間同じクラスだって鈴村真だ。
身長も体型もオレとさほど変わらない、が、顔に特徴がある。
金髪のリーゼントであり、浅黒い面長の顔、つり目とつり目の間には大きなホクロがある。
こんなとこにホクロなんて、神か仏かと言うところだが…、こいつはそのどっちでもない、どっちでもないどころか、話してみれば分かるが…。
「何かよー、うちのクラスの女ブスばっかなんだよなー、そのくせテンション高いのばっかいやがって、昼休みもろくに寝れないつーんだよ、お前のクラスはどう?可愛い女いる?」
相変わらず口が悪い。
その上…。
「でもよー、ほとんどの女がオレに気があるみたいで、ちらちらとオレを見るから授業に集中できねーし、モテる男ってのは辛いね」
どう言う訳が自信家である。
いや、確かにオレも人の容姿をとやかく言えた義理では無いが、こいつがイケメンだなんて思ったことはない。
「ほらほら、また女たちの黄色い声が聞こえてきたぜ!」
どこから取り出したのか、ヘアブラシを手に持ち、リーゼントを整え始める。
確かに、女子たちの黄色い声で廊下が賑やかになった。
まるで、アイドルでも出現したかの場面。
これはある意味アイドルのあいつの登場だろう。
「鈴木、今日の放課後空いてるか?一緒にパフェ食べに行かない?」
ほら来た。
イケメン天王寺のご登場だ。
天王寺は自然に作られた女子たちの花道を通って、オレの前にやってきた。
「ん?あれ君、見たことあるなー、誰だっけ?」
天王寺がオレの隣で本当のイケメンの力を見て口をポカーンと開けているフツメン以下の鈴村に声を掛けた。
「あ、え、いえ、自分は天王寺くんと同じ中学生活を過ごさせていただいた鈴村と申します」
フツメン以下の鈴村は、イケメンパワーに圧倒されぎこちなく自己紹介を始めた。
イケメン天王寺の破壊力はさすがだ。
「うーん、あんまし覚えてないなー、じゃ、鈴木、放課後一緒に帰ろうぜ!」
あまり興味が無かっただろう、鈴村との会話をさっさと終わりにしてオレに向けて右手の親指を突き出し教室へと向かって行った。
イケメンのくせにアクションがイケメンでない天王寺。
それでも、イケメンパワーは壮絶で、そんなアクションで失神する女子がたくさんいた。
「あんなイケメン死ねばいいのに」
鈴村がボソっと呟いた。