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05 Funeral

いつもよりも台詞を多めに入れておりまーす!

 翌朝、エイワズの仲間達の葬儀は村の外で厳かに行われた。

 神様から直々に騎士の称号を与えられた者は死者の葬儀を執り行うことができる。俺はエイワズの手を借り、四人分の墓穴を掘り、凍り漬けにした四人の遺体を埋葬することにした。

 墓穴の底には草と砕いた石炭を敷き、遺体は副葬品と共に埋葬し、神様の教えと加護を説きながら、彼等を丁重に土の中で火葬した。


 石炭は土の中でも良く燃える。凍らせたアンデッドが万が一火葬中に復活でもしたら厄介なので、今回は土の中で灰となってもらった。


 埋葬後、供養の一環として墓の前で火を焚き、エイワズに仲間達のことを聞いた。死者の人生をよく知る者の口から振り返ることはその人の人生を称えることでもある。この役割はエイワズにしかできない。


「僕らは同じ村で生まれ、育ちました。男五人で気が合い、いつも一緒にいました。村を出るときも一緒でした」

 五人の中でロルグと言う金髪の少年はリーダーとして仲間を引っ張っていた。後、二人の剣士はカリオスとミナスと言うらしい。この三人はパーティーの前衛としていつも仲間を守っていた。

 そして杖を持ってのが、フェザー。彼は薬売りとして旅をしたことのある母親から魔法を習い、旅に出たときも母親から受け継いだ知識と魔法で仲間達を支えていた。

 魔物との戦いのときはロルグが先頭で指示し、カリオスとミナスがフェザーを守り、エイワズが敵を引き付け、フェザーの魔法で仕留めた。


「ロルグはとても勇敢でした。いつも前に立って僕らを引っ張っていました。カリオスとミナスは力が強くて力比べではいつも僕が負けていました。フェザーは魔法が使えて、いつも大活躍でした。仲間が傷ついたときもフェザーが魔法や薬を使って処置をしてくれました。

皆、僕なんかよりもずっと凄いのみ・・・僕だけが生き残っちゃいました」


 仲間の話をするエイワズの表情は誇らしげで、輝きに満ちていた。しかし、自分のことをなると、途端に彼の表情は影を落とした。

 もしも、神様が彼を見たら彼を勇気付ける言葉をかけてくださったことだろう。しかし、俺にはそんな器用なことはできない。ただ、神様ほどではないが、俺の思ったことはこの場でエイワズに伝えよう。


「そんなことはない」

「えっ、いいですよ。自分でも分かってます。僕は臆病なんです」

「だろうな。だが、臆病者は時として財産になる。多分、君のパーティーで唯一代えが利かない人材はエイワズ、君だけだ」

「騎士様、そんなことはありません。僕はただの弱虫です。自分よりも強い人に助けられてばかりなんです」


 神様なら、もっと優しい口調で言えた。神様なら、もっとマシな言葉を掛けられただろう。しかし、無骨な俺にはこれしかない。

「いや、違わない。昨日、君の仲間達と戦ったとき、彼等の陣形に穴があった。その穴さえなければ、ああも簡単に俺に倒されることはなかっただろう。彼等に昨日足りなかった物、それが君だ、エイワズ」


 エイワズは、今度は反論することなく、俺の話を静かに聞いた。


「あのパーティーは昨日、リーダーを含めた三人の前衛が一人の後衛を守り、魔法で敵に大打撃を与える戦術を取った」

「はい、それがいつも僕らが取っていた作戦です」

「いや、違うな。あんな戦術で戦っていたら君達はこの村に辿り着くよりも遥か前に全滅していただろう。四人の時は守りと強力な攻撃手段が一つあるだけだった。しかし、君は戦闘中、魔法の詠唱中に敵を引き付ける役目を負っていたのだろう。違うか?」


 エイワズの役目は一見地味に見える。しかし、昨日の戦いでは彼の存在が致命的だった。魔法も遠距離からの攻撃もしない単純な敵に対しては彼等の戦術は有効だった。しかし、昨日は目の前にいる俺に詠唱を許した。

 実力の差はあれど、俺のことを妨害する役がいれば、一回くらいは魔法が撃てたはずだ。この差は大きい。


 戦術的な説明を終えても、エイワズの顔色は優れなかった。勿論、無理はない。彼は先日仲間を失ってしまったのだ。その気持ちが分らない俺ではない。俺も仲間と、そして誰よりも尊い神様を失った。


「エイワズ、今度は俺の話をしよう」

「騎士様の・・・ことですか?」

「ああ、君は気になっているころじゃないか、どうしてこの村には俺以外誰もいないのか」

「・・・・・・」

「この村には二年前まで、三千人の村人と十人の騎士が神様の加護のもと暮らしていたんだ。神様は数百年もの長い時間をかけて村人を導き、平穏と自衛の力を与えてくださった。だが、二年前、“災い”が村を襲い、村人全員と九人の騎士、そして神様が殺されてしまった。俺は一人、最後の最後で神様に庇われ、生き延びた。以来俺は神様が作り、皆で守ったこの村を守って生きて来た。

どうだ、俺もかなりの負け犬だろう?」

「負け犬って、騎士様。僕は自分のことを臆病とは言いましたが、負け犬とまでは言ってませんよ!」

 エイワズは先程と比べて大分元気が出たようだ。


「話は変わるが、エイワズ」

「なんですか、騎士様?」

「もうすぐこの土地は雪で閉ざされる。その間、俺のもとで剣を学ぶ気はないか?」

「教えてくれるんですか!?」

「ああ、俺も冬は暇だ。それに俺の剣は大昔、神様が村に授けた技だ。俺の代で潰えてしまっては勿体ない。誰か教えを受け継ぐ弟子が欲しかった所だ」

「やります!教えてください!」

「よし、なら雪が降ったのを合図に稽古を付けよう。ただ、それまでに村のことを少し覚えてもらうぞ」

「僕、なんでもやります。掃除でも洗濯でも、なんでも」


 とりあえず、移住者確保に向けて一歩駒を進めたな。それに明日からは少し騒がしくなることだろう、良い事だ。


移住者確保計画:レイモンドが村を存続させるために行っている政策。主に行商人や中央の有力者に呼びかけて移住者を募っている。上手くいっていない。

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