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00 Myth

村の神話


その昔、痩せた土地の上に小さな村がありました。

村の痩せた土地では作物は育たず、村人達は毎年のように食べる物に困りました。

村の周りに聳える山々には魔物が住み、時折山を下りては村人を攫っていきました。

食べる物も働き手も無い村の現状に、村人達はいつか村は亡くなると考えました。


ある日、途方に暮れた村人達の前に若い青年の姿をした神様が現れました。

神様が村に来た最初の年、魔物は村まで来ませんでした。

山の魔物達は皆、神様を恐れたのです。

神様が村に来た最初の年、村にはいつもよりも多くの作物がとれました。

神様が村人に農業に関する知識を与えてくれたのです。


村人はこの神様を崇めることにしました。

大昔に司祭が逃げ出した教会を皆で綺麗に磨き、神様のための家にしようとしました。

ところが教会を捧げられた神様はそれを見て、困ってしまいました。

教会で崇められていた神様は神様のお爺様だったのです。

そこで、村人達と神様は話し合い、教会は教会のまま、神様には教会の隣にある空き家に住んでもらうことにしました。

今度は神様もとても喜んでくれました。


それから百年、村は神様の加護の下、平穏な日々を謳歌しました。

神様は村人達に教えました、人が天国に行くにはこの世に対して奉仕しなければいけない。

奉仕は神にではなく、人や生き物、自然に対して行いなさい。

朝、祈る時、自分に何が出来るかを考えなさい。

夜、祈る時、自分が一日何をしたか思い出しなさい。


村では年に四回、大きなお祭りが開かれました。

春の祭りでは村人達が神様と一緒に花を愛で。

夏の祭りでは皆で輪になり、夜を通して踊り。

秋の祭りでは穀物の収穫を祝い、月を見上げ。

冬の祭りでは蝋燭を灯し、皆で歌いました。


ある日、神様は村人達を教会に集めました。

教会には初めて神様が村に現れた時よりも沢山の村人が集まっていました。

神様の加護の下、村の人口は増えたのです。

神様は集まった村人達に村が魔物に狙われていることを告げました。

昔の痩せた土地に建つ貧しい村と違い、今の村は魔物達の目に美味しそうに見えたのです。


大きくなった村を守るため、神様は十人の若者を選びました。

若者達は神様から特別な加護と知識を授けられました。

彼等は有事の際、神様と共に村を守る騎士となったのです。

騎士達は武の業を磨き、神様と共に村人と村を守りました。

それ以降、村では十人の騎士が選ばれるようになりました。


神様は突然村人達に告げました。

もうすぐ、とてつもない災いが来ると。

災いは村を焼き、畑を荒らし、周囲の山々すら亡ぼしてしまうと。

神様は周囲の山々に暮らす主達とも手を組み、災いから土地を守ろうとしました。


神様は村人達を東の山へ避難させました。

東の山の主、賢鹿は村人達を守ることを約束しました。

神様は騎士達を引き連れ、主達と共に災いを待ち構えました。

大がかりな罠を仕掛け、念入りに策を練り、災いに備えました。


しかし、神様達の準備を裏切るかのように災いは真っ先に東の山へ下り経ちました。

賢鹿は配下と共に災いに挑むも敗れ、村人達も助かりませんでした。

神様と主達は異変に気付き、すぐに駆けつけるも遅く、東の山は焼け野原でした。

その後、神様達と災いの戦いは続くも、災いの前では力及ばず。

最後には若い騎士が一人、神様に守られ、生き残りました。

神様は最後に騎士に言いました。

『ありがとう、ずっとこれまで、ありがとう』



神様:元々は天に暮らす雪の神々の内の一柱。地上で人々と共にあることを選び、人界に降りた。地上へ降りたときに雪の神から霜の神となった。

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