9話 ダンジョンとエンガイムの進化
1階層、カンナの攻撃法を知ったのでフォーメーションを変えた。俺はカンナの5歩前を歩く。カンナのリボルバーは射程およそ100m。超高速の鋼製弾が敵を打ち抜く。単純なスピードと局所的なダメージは当たり所が良ければとんでもないダメージになる。
「カンナは主にウルフ種の魔獣を狙ってくれ。その他は俺が斬る。」
サモンは幼いころからアーサーの剣術練習相手をしていた。本人は自身の実力をわかっていない。単純な剣術の実力だけでも一般騎士や剣士より強いのだ。
「わかった!任せて!」
…カンナが動くとその胸部が…揺れる。見ないようにしよう。
と、5分ほど進むと3匹のスライムが出てきた。属性は火・水・風・土・氷・雷・聖・闇の6元素2極性に分類されている。こいつらは火・水・雷か、合成のスキルを念じ、水と雷のスライムを一呼吸でまとめて切断する。
一度エンガイムとの合体が切れた。そして懐にエンガイムが出てきた。カンナにばれないよう見ると、色は白ベースの不思議な色をしていた。火のスライムを切断し、もう一度合体をする。
『サモン様、流石です。100%合体に成功しました。』
(うん、合体した感覚も違っている。相当強化されたのか。)
あとで余裕が出来たらエンガイムのスキルを確認してみよう。とりあえずペースを上げないと、このダンジョンの大きさは中。一般的には20~30階層はあるのだから、カンナのことも考えて長期間ダンジョンに潜るのは厳しいだろう。アイテムボックスには一か月侵入しても十分なほどの食料に浄化煙が入っていた。本当に村長には感謝しなければならない。
「カンナ、とりあえず下の階層への階段があればすぐに進む。コアさえ破壊すれば魔獣増加の心配が減るから、残りの魔獣はあとから討伐すればいい。」
「わかったわ。…それとサモンのオーラ、10分前より更に大きくなってるんだけど…」
…そんなにか?自分だとわからないが、ダンジョン内で万全の状態を解く訳にはいかない。
「気にしないでくれ、…というか、ダンジョンからでるまでは気にしないでほしい。俺はドリューに平和を、安息をもたらすことが目的だから。それを信じてくれ。」
「…うん。そうだね!がんばろう!」
笑顔が似合う女性だ。ケントさんのためにも危険な目にあわせるわけにはいかない。
そのあとはドンドンダンジョン内を進んでいった。3Fまで進むと魔獣の侵入がない部屋にたどり着いた。そういう部屋には椅子や暖炉がある。もっとも使用の形跡はない。サモンは魔王の道楽だろうと考えていた。そして若干嫌気がさしたが、魔獣が襲ってこないのはありがたい。カンナも多少疲れているように見える。ダンジョン突入から6時間は経っているだろう。あまり強力な魔物はいないとはいえ、精神的にはつらいだろう。
「カンナ、休憩にしようか。」
村長からもらった干し肉に水を取り出し、カンナに渡す。
「ええ、体力的にはサモンのヒールのおかげで大丈夫なんだけど、戦闘って精神的につらいものがあるのね。相手は魔獣なのに…殺すことに痛みを感じるわ。」
…それはたぶん魔獣が元はただの動物で、魔獣に変化したとはいえ、本質的な部分では動物であることが起因してるだろう。
「カンナ、魔獣は元動物が魔王によって存在を歪められた命だ。だから殺すことにためらいを感じているのだろう。割り切らないといけないことだけど。」
「…そうなの?私は、魔王が生み出す人工的な命だと思ってた。そう…魔獣たちは命をもてあそばれた動物ってことなのね…。」
カンナがそういう風に思うのはカンナが命を大切に考えている証拠だ。奪われたら帰ってこないものだしな。俺も苦しむ魂を救うための殺傷と考えなければとても割り切れていなかった。なにせ、動物は幼いころ一緒に育ってきた存在だったから。
休憩をしている間、エンガイムのステータスを確認した。
名前:エンガイム 歳:生後1か月 lv 25
クラス:テトラセントスライム スキル:テトラセントアタック
称号:ガーディアン・オブ・スライム
HP 500
PW 500
DEF 5000
INT 2000
SPD 1000
SPI 1000
属性 火・水・雷・聖
合成前:セントバーニングスライム
強すぎるな。ダンジョンに入ってから急激にレベルも伸びたようだし。カンナもどんどん強くなるのを感じたが、エンガイムの成長ぶりはやはり合成に起因しているだろう。恐らく上級魔獣の上位には位置するほどの強さに見える。
(流石のステータスだな。本当に強い。)
『ッハ!私の望みはサモン様のお役に立つことです。そのためなら努力も何も惜しみません。今後もスライム族がでたら合成をお願いしてもよろしいでしょうか。』
(そうだな。エンガイムが強くなることで困ることもない。やろう。)
『ありがたきお言葉。今後ともあなたの盾となり矛となります。』
まだ二人が出会ってから2週間も経っていないが、絆が芽生えていた。




