13話 それでも
レーザーはサモンを目掛け発射された。
『『ヴァルキリア・ストリーム』』
エンガイムはサモンの前にたち、圧倒的な火炎流でレーザーを相殺していた。
『『サモン様は私が守ります。』』
サモンは動けずにいた。目の前の竜に槍を向ける理由が見つからなかったのだ。
『エンガイム…俺はどうすればいい?』
エンガイムにすがっていた。
『『…サモン様が答えを出すべきです。』』
エンガイムはそれを赦さなかった。
「何をしてるのよ!!」
サモンはカンナに頭をはたかれていた。叩いたカンナの方がより痛そうにしていたけれど。
そしてサモンの肩を掴み、揺さぶっていた。
「しっかりしなさいよ!いい?サモンは英雄なのよ、あの竜が人間に虐げられたことは理解したわ。だとすれば、非があるのは人間の方ね。」
「だったら!俺は…あの竜に向ける刃を持っていない…」
「なら…ここの住人が死んでもいいと?」
「ち…違う!死んでいいなんて思っていない!だが、俺は…」
「じゃあもう私たちはここの住人に任せて出ていく?サモンが竜と戦えないならいても邪魔なだけよ。」
それが、楽なのかもしれないとサモンは思っていた。村の住民がまいた種なのだ。
「まあ、あなたが出ていけば、どちらにせよ全員死ぬでしょうけどね。関係ないでしょう、あなたには…サモン。」
現実はそうだ。サモンが出ていけば住民たちは確実に全員死ぬのだ。サモンは見捨てたのと一緒だ。
「っつ!!俺は…見捨てられない。たくさんの…命が…」
サモンは力なく立ち上がった。
「そんな状態であの竜にサモンが向かっても死ぬだけだわ。やめた方がいい。」
カンナは冷たく言い放った。目の前ではすでにエンガイムが竜と激しい闘いを繰り広げていた。
「それじゃあどうしろっていうんだ!?俺たちに人間に奪われ続けたあのホーンフロッグを殺せというのか!?…最後の生き残りの彼を…」
「もう魔獣よ。魔王の手先だわ。」
「でも動物だった!!罪なんてない!」
「すでに襲撃で兵士が死んでいるのよ。兵士には家族がいたわ。罪なき命を奪っている。」
「それは彼も…奪われて…」
そのときカンナはサモンに強烈なビンタをしていた。
「あなたは…何を救いたいのよ。私の…憧れの…英雄なのよ…情けないこと言わないで…」
カンナが泣いた、泣きながら胸を叩いてきた。
「俺は…」
「私にサモンが作る辺境地の平和を見せて…」
涙を流しながらカンナが笑顔を作る。サモンを抱きしめた。
「…そうだな。俺は辺境地に平和を創るんだ。動物も、人間も共に暮らす豊な世界を。」
「うん。そうだよ。」
「…ありがとうカンナ」
「いいの、サモンのこと大好きだから。」
「…カンナ」
「ッッツ!」
サモンはカンナに口づけしていた。
「ば…バカ!いきなりそんな!」
カンナが顔を真っ赤にして震える。
「待っててくれ、すべてを救って見せるさ!」
サモンは笑顔をカンナに返した。そして竜と戦うエンガイムの元へ向かう。




