8話 サモンの目覚め
サモンは爆発直後衝撃で意識を失い、そのまま力なく上空を吹き飛んでいった。意識が戻らぬまま地面に打ち付けられようとした瞬間。
『ホーリーシールド!!』
エンガイムは主人を守るために魔法を唱えていた。サモンは無事に着地することが出来たが、状況は良くなかった。サモンはそこから丸一日目を覚まさずにいた。
『サモン様…私がいながら…』
エンガイム達はサモンの傍でずっと待機していた。
『エンガイムのせいじゃないわ。』
『そうだよーエンガイムさんー元気出して…ウウ』
ボルとララの慰めにも聞く耳を持たず、エンガイムはずっと震えていた。サモンがホーリーライフでも目を覚まさない以上エンガイム達になすすべはなかった。
『サモン様…』
――――目覚め――――
「…う」
サモンは暗闇の中で目覚めた。あたりを見回しても何も見えていなかった。しばらくここはどこか、どういう状況なのかを整理した。そして爆発で吹き飛ばされたことを思い出した。
「村は!?俺はどれくらい気絶していた…?」
『エンガイム、ララ、ボル。』
返事がなかった。影にもいないようであった。そこで外側から爆音が鳴り響いた。
サモンは音の方向へと動く、体には問題ないようであった。
外に出るとエンガイム達が小竜と戦闘していた。ボルはララの頭の上から炎を放っていた。見ただけでも分かるほどに全員がボロボロだった。
『お前ら!!ホーリーライフ!!!』
ホーリーライフは発動しなかった。サモンはエンガイムの使役を念じた。しかし、いつもあるつながるような感覚がなかった。エンガイムたちとのリンクが切れていたのだ。
「そうでもしないと、あなたを守れなかったのです。」
コミュさんが小竜を切り捨て、集団から抜けてサモンの隣に立った。
「サモンさんは2日間眠り続けておられましたよ。それをエンガイムさんは自分のせいだと、ララもボルも心配そうにずっとあなたの隣にいました。しかし、恐らく竜が小竜たちにあなたの行方を追わせていたのでしょう。半日経たずに小竜の大群が襲ってきました。」
「な…エンガイム…お前のせいであるわけがないのに…あいつらもコミュさんも俺の為にずっと?」
サモンは目の前でボロボロになりながら戦い続けるエンガイム達を見つめていた。
「ええ…サモンさんと繋がっている状態では私以外はあまりサモンさんから離れることが出来ません。だからあの子たちはあなたへのリンクを自ら切って安全な場所に移動させたのです。」
サモンの目から涙があふれていた。自分のふがいなさがエンガイムやララやボル、コミュさんを傷つけたのだ。
「俺は…」
「サモンさん、言いたいことは伝わります。でも今はやることがあるでしょう?もう一度あの子たちとリンクを、そして伝えてあげてください。ありがとうって。」
「…はい!」
サモンは力強く返事を返し、エンガイム達のところへ向かった。そして3体の中心に立ち、唱えた。
「魔獣使役!!」
繋がった…はっきりと分かった。サモンたちはまた心通しでつながり合っていた。今までよりも強く。サモンはその場で魔法を放つ。
「アークホーリーフィールド!!」
フィールド内に含まれた小竜は存在が消え去り、フィールド外から侵入しようとした小竜は粉々に砕け散った。
『お前ら…』
『サモン!』
『うわぁぁぁ…サモン…よかったよおお』
ララとボルが話しかけてきた。
『サモン様…私がふがいないばか…』
『何も言うな、エンガイム、俺はもう大丈夫だから。お前ら守ってくれてありがとうな。』
ララとボルが抱き着いてきた。そしてエンガイムも自らサモンの懐に飛びつき震えていた。
『心配をかけてすまない。また、一緒に歩こう。俺らは家族だ。』
サモンがエンガイム達を抱きしめた。コミュさんはサモンの横に立ちその姿を柔らかいまなざしで見ていた。
そしてサモンが光につつまれ、エンガイム達も光り始めた。
光が収まると同時にサモンは唱えた。
「聖獣の誓い」
エンガイムたちが姿を変え、光より解き放たれた。
「お前ら、俺の家族によくも手出ししてくれたな。この場から消え去れ!」
サモンが目前に迫る200を超す小竜の群に放つ――――
「ライト」
サモンの身体から極光が放たれた。それは魔獣のみに効果を示し、魔獣はみな消えていた。
サモン・フリントは聖獣使いへと覚醒していた。




