3話 新たな魔獣使役(3体目)
現れた竜や他の魔獣がどこに潜伏しているのか情報として分かっていなかったので、サモンはひとまず偵察に出ていた。スワンたちには休息をとってもらっている。
『エンガイム、強大な魔獣の気はないか?』
『ッハ!村の周辺に多数魔獣の気配はしますが…多すぎて特定の気配を感じることは難しいですな。申し訳ありません。』
『いや、いいさ。俺は恐らく竜がナダル山に潜伏していると考えている。だから少し北側を偵察してみよう。山に近づいたら気配察知に力を入れてくれ。ララ!いくぞ!』
『ッハ!かしこまりました。気配察知に力を入れます。』
『おっけー!』
ララに跨りスピードを出す。ララは無音のスキルで音を自ら発生させる音を消していた。大剣使いなのに音をさせずに忍びよれるというのは恐怖だろう。
村からナダル山は徒歩で3日間の距離だ。山はとてつもなく大きいため、山の向こうにも複数の国が存在するが、国交には山越えでなく船による渡航が必要なのだ。サモンがララのトップスピードで山と村の中間地点にて偵察を行っていた。
『エンガイム、どうだ?』
『山の中腹まで気配を辿りました。コンドルより大きい、おそらく小竜の気配を感じます。村周辺には大規模のコンドル、山中には中規模の小竜、とすれば山頂に竜が潜伏している可能性が高いと考えます。サモン様ご明察でございます。』
『やはりか…次の襲撃もコンドルと考えてよさそうだな。』
『サモンってカンナ相手の時だけ別人だよねー。』
ララのキラーシュート。冷汗マックス
『ララ!サモン様に失礼なことを言うのではない!』
初めてエンガイムが怒るとこみた。新鮮だ。
『い…いいって、エンガイム、大丈夫。そしてララ、俺は女の子に耐性ゼロなんだよ!知っているだろ!?』
『うん!そりゃーもう!』
それはそれで不服な反応だが、まあいい。サモンたちは偵察を続けた。
『サモン様、左の方角より小さな気配が近づいてきます。』
サモンはすぐに鋼の剣を構える。コンドルだろうしサモンが無音スキルを持っていないので魔法を使用すると音で他の魔獣に気付かれて乱戦になる可能性があった。雑魚相手とはいえ数が多いし、視界も悪いので面倒になる。
影から出てきたのはボロボロの小さい竜?のような魔獣とそれを攻撃しているコンドルだった。
『タス…ケテ…』
魔獣からの声が聞こえた。
『サモン様…あの魔獣、魔王の人間を襲う命令を弾いております。他の魔獣から襲われているのもその為ですね。』
『というかサモン!!!あれ、ボルだよ!!!!!』
『…ハァ!?』
咄嗟にサモンはコンドルを一刀両断し、ボロボロの魔獣に使役を掛けた。
「魔獣使役!」
ボルはゆっくりとサモンに吸い込まれ、数分後治癒された状態で小さな竜が影から出てきた。
『ボルか?』
『…うん、その…助けてくれて…ありがと』
こんな性格していたのか…性別どっちよ?声高いな。サモンは疑問に思ったが、それよりまずなぜ魔獣になったのかを聞いた。
『…サモン勝手に村を出ていくから僕、寂しくて…だからサモンの匂いを辿って来たの。そしたら、急に黒い魔力が目の前に現れて、気づいたら僕は魔獣になっていて、…そしたら変な声が人間を殺せって、僕はサモンと戦いたくなくて、それが嫌で、抵抗して、そしたら別の魔獣から襲われて…ヒック…うぐ…』
ボルはいつもサモンが森に来るとその頭に乗っていたトカゲだった。サモンも最初は退けようとしていたが、余りにしつこいし、特に乗っても重くなかったのでとりあえず乗せていた。なんだかんだボルはサモンが名前を付ける程のお気に入りだった。
なんだ、こいつ可愛いな。ていうかオスだったか、サモンは正直な感想を抱いていた。取りあえず目の前で小さな竜が大泣きしていて、魔獣を引き寄せそうなのでなだめた。
『ボル…よく耐えたな。偉いぞ!ほら、頭乗せてやるから泣き止みな。もう大丈夫だからな?』
『ええ!本当!?わーい、サモンの頭乗るーーーー』
すぐに泣き止んで笑顔でサモンの頭に乗ってきた。割と重い。そりゃそうか、竜だもんな。
『サモン様、私もサモン様の懐に。』
『あ!ボルもエンガイムずるい!私はそういうことできないもーーーーん!くううう』
俺…モテるな(魔獣に)。サモンは少し悲しくなったが、気を取り直し、とりあえず敵のボスの情報はつかめたので村へ戻ることにした。
『ララ、お前は俺がよっかかるんだからな。それはお前にしかできないぞ。』
そうつぶやくとララが瞬時に上機嫌になり村へと走り出した。
ララに乗りながらボルのステータスを確認した。
名前:ボル 年齢:?歳
クラス:スカイドラゴン スキル:スカイ
HP 200
PW 8100
DEF 20
INT 5000
SPD 2000
SPI 3000
属性:聖・闇
…これまだレベル10になってないのか。というか極端だな。出鱈目なパワーだし、一般人と大差ない防御力。あと、スカイドラゴンってなんだ?サモンは聞いたことがなかった。
『なあ、ボル、コンドル相手に何もしなかったのか?』
『怖くて逃げるのが精いっぱいだったよぉ…うぐ…』
あ、これあれだ。子供だ。
『ボル、怒ってるわけじゃないからな?大丈夫。これからは俺がいるからな?』
『うん!ありがとサモン!』
新たな仲間を得てサモン一行は村に帰還した。




