2話 得られたスキル。旅立ちの日
サモンとアーサーは頭を整理していた。もっともアーサーはすぐに答えにたどり着いていた。
「なあ、サモン、俺のスキルボードを見てくれ」
名前:アーサー・キングス 16歳
クラス:勇者 スキル:神に選ばれし者
HP 500
PW 1000
DEF 1000
INT 2000
SPD 2000
SPI 1000
属性:聖・火
「すげえな。全部の能力が10倍になってるぜ。騎士団長クラスなんじゃないか?」
実際アーサーからものすごいオーラを感じる。そう、アーサーがすべきことは一つ、魔王を倒すことだ。
「俺は魔王を倒す旅に出る。明日の朝だ。サモン俺と一緒に行かないか?」
サモンはアーサーに自分のスキルボードを見せた。
名前:サモン・フリント 16歳
クラス:魔獣使い スキル:魔獣合成
HP 200
PW 200
DEF 300
INT 5000
SPD 300
SPI 900
属性:無
「アーサー、見てくれ、俺は人類の敵、魔獣を使役するものだ。あの、闇の力は神のものではない。人類の敵の力なんだろう。俺には勇者の隣にいる資格がない。」
瞬間、アーサーは反論してきた。
「そんなこと関係ない!お前がそうなったのは俺のせいだ!力を得て油断していた。俺はお前に隣で戦ってほしい。頼む、ついてきてくれ。魔獣なんて使役しなくてもお前にはその頭脳があるだろう!俺が敵わないほどの。それだけで助かるんだ!」
アーサーのいうことがサモンの心を揺さぶった。サモンは必死に考えていた。自分がどうすべきなのかを。そして、アーサーに告げた。
「明日の朝までに答えをだす。だから、俺に時間をくれないか。」
「わかった。村の門で待つ。」
そして二人は村へと戻った。アーサーは村に戻ると住民に囲まれていた。スキルボードは基本的には本人が見せる意志を見せない限り他人に見ることはできない。だが、アーサーはその身から余るほどの聖気を見せている。誰もが理解するであろう。彼が勇者であるということを。そしてサモンもまたその身に妙なオーラを纏っていた。そのため、住民は彼に近寄ろうとしなかった。
「サモン!明日の朝だ!」
アーサーは住民に囲まれながら叫んだ。サモンは小さく手をあげ、家に戻った。
サモンには家族がいない。両親ともにサモンが10歳のころに騎士として魔獣討伐に赴き命を落としていた。殉死した騎士の家族には金が配給される。贅沢をしなければ一生暮らせる程度の金だ。生活には困っていなかったが、サモンはアーサー以外に話しのできる人物がいなかった。だから旅に出ることに抵抗はないキョウコへの思い入れもあまりない。サモンは自宅の父が使用していた帝国騎士の椅子に腰かけ、窓から外を眺めていた。両親の命を奪った魔獣を使役する能力、それを自分が持ってしまったこと、父・母と同じ属性であった風の属性を失ってしまったこと、アーサーの隣に自分が立てるかという問い。サモンは寝ることなどできず、朝まで物思いにふけっていた。
翌朝、サモンは日が昇る前から村の門に立っていた。そして静かにアーサーを待っていた。
「早いな、流石俺の親友だ!」
アーサーが来た。恰好はすでに騎士であった。腰に着けていたのはアーサー家の家宝ともいえるミスリルの魔法剣だ。田舎の村では本当に高価なものだ。白い鎧に身を包みよく似合っていた。
「本当に勇者だよアーサーは、俺の自慢の親友だ。」
こぶしとこぶしを合わせた。いつもの2人の挨拶だった。
「答えを聞いてもいいか?」
本題をあっさりと切り出す。こういうところもアーサーのいいところだろう。
「アーサー俺はお前とは一緒に行かない。」
一晩考えて、答えを出した。
「そうか。分かった。ただ、できれば理由を知りたい。」
アーサーは若干落ち込んだ表情を見せたが、すぐにこちらをまっすぐ見つめてきた。
「…俺も今日この村を出る。魔王討伐を目指す。アーサーと一緒に行かないのは今の俺には資格がないからだ。両親を殺した魔獣を使役する力を得た自分自身を赦せない。確かにアーサーの隣に立ちスキルを使わずに頭脳でアーサーを助けるというのも俺にとっては最高の状況さ。でも、それじゃ俺の夢には届かない。アーサー、俺は自分を見つめたい。そして自分を赦せることになったとき、本当の強さを手に入れたとき、お前の隣に立つ!」
俺は言い切った。アーサーの隣に立つ自分はそれに適う自分でありたいと。
「…そうか、それなら止めないさ!ただサモン、俺は1秒だって止まらないぞ?何せ勇者だからな!」
アーサーの顔に笑顔がともった。サモンはいい答えをだせたのだ。
「俺だって止まるつもりはないさ!なんたって、勇者の隣に立つ男だからな!」
「はは!よし、サモンまた会おう!お互い成長してな!」
「おう!」
こうして俺とサモンは村を出た。
サモンは北を目指し、アーサーは帝都のある南を目指して。




