15話 カンナ
カンナ宅での夜、夕飯がふるまわれた。親子3人で泣き笑いしながら料理をする光景にサモンは若干ここにいていいのかという疑問を感じながら、ソファーでゆっくりと座りながら、明日の式典について考えていた。確かに盛大な扱いを受けるであろうが、言わなければならないこともある。サモンのクラスについてだ。もしかしたら攻撃されるかも知れない。その場合は即刻ララで村からでなければならない。
『サモン、何の心配?』
『明日、住民たちに俺が魔獣使役士だと伝えないといけないのさ。』
『なんで?』
『隠すことは辞める。それにそこを隠すのはララやエンガイムに悪いしな。』
『サモン様、そのような気遣い、不要です。私はサモン様の隣に入れればそれで、』
『エンガイム、そんなことは出来ないさ。お前らは家族なんだ。』
『…サモン様に仕えることが出来て幸せです。』
『あたしもーー!!』
「サモン、できたぞお!」
ケントが声を掛けてきた。食卓には家庭的なメニューが所狭しと並んでいた。
「これは豪華ですね。」
サモンも加え四人で食卓を囲む。
「じゃあ、全知全能の神にこの恵みへの感謝を。」
「「「感謝を」」」
ケントさんは信仰心の厚い人物だった。一家の祈りに合わせてサモンも祈る。正直サモンには信仰心なんてものが微塵もなかったが、郷に入っては郷に従えということだろう。
「美味しいです!俺が一人で作ったごはんの数倍おいしい!」
「でしょ!?サモン、お母さんの料理は最高なのよ!」
カンナが胸を張る。その…胸が暴れているので激しい動きは避けてほしいと思ってた。
食事も平らげ、各々が居間に座り談笑していた。大半はカンナのサモンとコミュの自慢話で、最愛の娘からの話にケントはデレデレした表情を見せながら話を聞いている。全くイメージと違った。しかし、何か張りつめていたであった頃のケントに比べればその表情には絶望ではなく希望が満ち溢れていた。しばらく談笑が続くなか、コミュが話をいきなり切り替えた。
「あなた、カンナ、私はサモンさんと一緒に辺境地への平和をもたらそうと思うわ。そして、あなたにはこの姿を見てもらわなければいけない。」
カンナは元のエンジェルの姿に戻し、カンナとケントさんに向き合った。ケントさんは騒ぎもせず落ち着き、カンナは無言でうつむいていた。
「コミュさん、俺は反対です。この幸せな環境からあなたを連れ出す気持ちになれません。」
サモンは正直に自分の意志を伝えた。擬態機能があるのだ、生活に不自由もない。また家族で幸せに過ごしてほしかった。たった一人で平和のためにダンジョンへ向かった誇り高き騎士に。
「あなた?」
「ああ、行ってこい。それがお前の道なんだろう?ただし、約束してくれ、必ず戻ってきて、またみんなでカンナの誕生日を過ごすと。」
「ええ、勿論よあなた。私の隣はいつまでもあなたとカンナなんだから。サモンさんというわけなのでよろしくお願いします。」
「…最終的には魔王の消滅に行くことになります。それでもいいのですか?いくらここから実力を伸ばしても、命がある保証はありません。」
脅しでもなんでもない。本当のことだった。
「サモンさんには大きな救いを受けましたから。それに報いることも私の騎士道の一つですよ。それともサモンさんは私の騎士道を認めてくれないのですか?」
そこまで言われたらもう何も言えなかった。
「わかりました。険しい旅になることは必然ですが、よろしくお願いします。ケントさん、必ずコミュさんは連れ帰ってきますから。」
「…俺はサモン、お前に計り知れない恩を受けた身だ。お前のことは誰が何といおうと信じるさ。」
ケントさんからの信頼は嬉しかった。さっきから何も言わないカンナの方向を向く。目が合った。そして、
「…お母さん、私も…行く!ついていく!」
サモンもケントさんもそこで急激に動揺し始めた。
「な…カンナ!お前はまだ子供だ!今回はコミュのことがあったし、サモンもいただから一回だけ許したんだ。お前がまた危険な場所に行くことなんて俺は我慢できない!」
「私はサモンと一緒に行きたいの!!」
カンナが叫ぶ、そしてケントさんがこちらを素晴らしい目でにらんできた。
「おま…娘をたぶらかしたなあああ!?」
じ肩を掴まれてブンブン振られる。たぶらかしてません。サモンは心の中で突っ込んだ。そのあとはしばらくケントさんとカンナの戦争を目の前で見せられる形になった。コミュさんはそれを見て幸せそうに笑っていた。
夜、静かに眠ろうと思ったら真上が夫婦の部屋だったらしく、雑音が聞こえてきた。教育に悪い雑音だ。木の軋む音で寝られない。ガッテム。するとカンナが入ってきた。薄めの服をしているため、余計にサモンは動揺する。
「カ…カンニャ!?」
また盛大に噛んでいた。
「サモン…私がついていくの迷惑じゃない?」
おっとそういう話か、それなら安心して真面目に話せる。上からの音がうるさいが…




