13話 救う騎士 サモンフリント
「…ああ。…ああ。」
カンナが泣きながらデーモンに抱き着いていた。デーモンも涙を流していた。
「お願い、カンナ、早く!逃げなさい!」
カンナは離さない。
「いやああああああああああああああああああああああ。」
デーモンは叫びデーモンの腕が動く、しかし、その時間はサモンが状況を整える十分な物であった。サモンはその爪を大剣ではじき、カンナを引きはがす。
「サモン!離して!お母さん、お母さん!!」
「落ち着け!」
サモンがいつもは出さない大声でカンナを制した。カンナが驚いた眼でサモンを見ている。
「カンナ、コミュさんにお前を殺させるつもりか?」
サモンは大剣を振りかぶり、デーモンに向けて放つ。デーモンは後ろに飛びそれを避けていた。カンナ涙を抑えられず、その場にうずくまっていた。母がデーモンになっている。どれ程の苦しみかサモンには想像もつかなかった。だからこそ、一言だけ声を掛けた。
「俺に任せろ」
カンナはサモンを見つめ、言葉なくうなずいていた。
『エンガイム、とにかく補助を頼む。ララ、大丈夫か?騎士モードで一緒に攻めてくれ』
『かしこまりました。サモン様、あなたの命、私が守ります。』
『勿論よ!次は大丈夫!』
サモンはエンガイムの強化により更なる速度でデーモンの懐へ飛び込んだ。そしてデーモンの腕をはじき脚に蹴りを入れた。デーモンがぐらつく、そこにスキルを試した。
「魔獣使役!」
灰色の閃光がデーモンに当たる…が効果は見られない。
「ダークネスボール」
「っく!ホーリーランス!」
互いの攻撃が接触、爆発を起こす。サモンは距離をとるが、何故かデーモンは動かず爆発をまともに受けていた。かなりのダメージを受けている。再生をしているが完璧ではなかった。
「コミュさん!聞こえているんですか!?俺はあなたを助けます!だから、意図して命を落とそうとするな!」
「カンナを守って!早く私を殺して!っつ!あああああああああ」
抗っているのがわかる。苦しんでいるのだろう。一刻も早く解放しなければと思っていた。
デーモンが再びカンナを狙い瞬間移動した。ララがデーモンを大剣ではじく、後ろからサモンが超スピードで切りかかりカンナからデーモンを遠ざける。サモンは突破口を考えていた。
『サモン様、デーモンの胸部にある青い石から魔力の流れを感じます。そこを局所的に狙えば使役のチャンスが出来るかと。』
『なるほど、狙ってみるか!ララ、頼む!』
ララが変形しサモンがまたがる。先ほどよりも更に超スピードでデーモンの上空に移動する。ララは騎士モードになり大剣でデーモンの腕を弾く、サモンも同時にシールドに魔力を注ぎ、デーモンの顔面を思いっきり殴り、デーモンのバランスを崩した。そこに大剣で胸の石を貫いた。
その瞬間、魔力の暴走を感じた。石の中にはもう一つ、暗黒に輝く物質が封じられていた。罠だ。サモンは理解した。それが魔王の魔力であることを、サモンは今までで一番強力なホーリーシールドをララと自分の周りに展開していた。
「サタン…スプレッド…」
近距離で無数の闇の弾丸が撃ち込まれた。ララもサモンを吹き飛び、エンガイムはサモンを守るために最大の防御魔法を自身に唱え、サモンへのダメージを減少させる代わりに大ダメージを負い、合体は解かれていた。
『サ…サモン…様』
『エ…エンガイム!』
「ホーリーライ…っぐは!!」
魔獣使役を使い、回復魔法を唱えようとしたサモンにデーモンのけりが入り、サモンは更に吹き飛ばされていた。
「っく!!」
サモンもダメージを負い、状況は悪化していた。デーモンはカンナに顔を向け、手を構え、魔法を唱えていた。
「ダークネス・ランス・ソリッド」
「お…お母さん…」
カンナは茫然としていた。カンナに巨大な闇の球が向かう。
「カンナ!よけて!いやあああああああああああああああああ」
デーモンが悲痛な声を発した。サモンはデーモンの手から放たれる魔法を見ながら体を動かした。コミュさんの清潔な魂を、カンナの笑顔を、これ以上壊させるわけにはいかなかった。
「させるかあああああああああああああああああ」
瞬間、サモンに無の魔力が流れた。そしてサモンの口から自然と言葉が発せられた。
「ナッシングレス!」
デーモンから発せられた魔法、向かう先にはカンナの前に立つサモンとエンガイム、ララがいた。
「無の守護者!!!」
サモンが唱えると、手にデーモンの魔法は吸収された。
「魔獣騎士の誓い!」
ララは大剣に、エンガイムはサモンに吸収された。事態を把握できていないデーモンの目の前にはサモンがすでに立っていた。
「サタン・スプレッド」
「無の…守護者、光への奔流!」
デーモンの放った最大級の魔力が込められた魔法はサモンにまた、吸収されていく、そしてサモンはデーモンを大剣で突き刺した。吸収した闇の魔力を光へと変換し、デーモンにすべて注いだ。
「その魂を浄化せよ、我が名のもとに闇を光へと導く、サルべ―ション!」
サモンが唱える。コミュの異質な魂はサモンから発せられる魔力により解放されていた。
「その身に我が名を刻め、そして、解放されよ!魔獣使役!」
突き刺された大剣にデーモンは吸収された。
サモンはすでにボロボロだった。魔獣騎士の誓いを解き、膝をつく、エンガイムもララも傷つき、その場から動けずにいた。ぎりぎりの戦い、勝ち目は薄かったが、彼らはやり遂げた。
サモンの影から、一体の光輝く魔獣が現れた。
『サモンさん…ありがとう。エンジェル・ヒール』
サモンたちの傷は全て、魔力の減少も癒された。
『おかあ…さん?』
カンナは現れた魔獣に歩み寄っていた。
『カンナ…私の可愛い娘…大きくなったわね。』
『ううう…お母さん!!』
カンナがコミュの魂を持つ魔獣に飛びつき、2人とも号泣していた。
『なあ、エンガイム、ララ。』
『何でしょうか、サモン様』
『どーしたの?』
『俺はお前たちと出会えてよかったよ。』
今回の戦いはエンガイムとララがいなければ間違いなく死んでいた。彼らは捨て身でサモンを守ってくれていた。もし片方が欠けていれば、誰も救うことが出来ずにこの戦いを終えることになっただろう。サモンはララとエンガイムに手を伸ばし抱き寄せた。
『ふふ、サモン甘えん坊さん!』
『私は常にサモン様とおります。これからも。』
『うるせーよララ、ありがとな。お前ら。』
カンナとコミュはそれからしばらく抱き合い号泣した。サモンたちはカンナたちをそっとしておき、制御装置の前に行き、3人同時の魔法で制御装置を粉々にした。
そして、サモンはララとエンガイムに向き合った。
『ララ、エンガイム、お前らはもう俺の家族だ。だから、フリントの性を授ける。これから俺の家族としてエンガイム・フリント、ララ・フリントを名乗ってくれ。』
瞬間二人は進化した。
名前:エンガイム・フリント 年齢:生後一か月 lv 51
クラス:テトラセントハイスライム スキル:ハイボルテージ
称号:フリントの意志
HP 3000
PW 3000
DEF 9000
INT 3000
SPD 5000
SPI 2000
属性 火・水・雷・聖
名前:ララ・フリント 年齢:20歳 lv 50
クラス:ナイトオブバスター スキル:ハイバスタード
称号:フリントの意志
HP 4000
PW 5000
DEF 3000
INT 2000
SPD 4000
SPI 4000
属性:土
『身に余る光栄。感謝します。』
『今日から本当の家族ね!サモン!』
数倍たくましくなった二人を見ながらサモンは決意を更に固めていた。そこにカンナとコミュがきた。




