11話 白銀の閃光とボス??17階層
10階層を越えたあたりから魔獣のランクが下級から中級へとランクアップしていた。構成がウルフ種という点は変わらなかった。しかし、たまに飛行種の魔獣が出てくる。カンナのリボルバーが役に立った。ただし、剣などの武器と違い、カンナのリボルバーはレベルアップに伴う威力の上昇がない。なにせパワーが上がっても銃弾の威力が上がるわけではないからだ。中級の魔獣に対し、はじかれることが増えてきた。サモンは特に変わりなく、魔獣を駆逐しつつカンナを守っていた。
「カンナ、そこを左に曲がる!曲がったらホーリーランスを撃つ。ララ!カンナの後ろをき」
『わかったわ!』
「ええ!」
「ホーリーランス!」
ララとエンガイムを同時に使役することが可能なことは途中で確認したのでララを戦闘に参加させ、カンナの守護につけた。カンナは大剣を使う。自身の堅い守りを生かして威力の高い攻撃を発する突貫タイプだ。ホーリーランスで通路上の魔獣が消え去った。サモンは更に進む。
「きゃあ!」
カンナの声だ。振り向くと壁から土でできた魔獣がカノンに向けて飛び出していた。
サモンは焦り、魔法を構えたが威力的に巻き込む恐れがあり判断が遅れた。しかし、
『白銀の閃光!』
ララが剣を振ると魔獣は切断されていた。遠距離攻撃も可能らしい。そういえば、ララは森の中で一際目を引く美しい黒色の馬だった。体は非常に大きく、モテていたみたいだがいなくなる寸前までどの牡馬とつがいを作らなかった。それもララより強い牡がいなかったからかもしれない。
『ララ、ありがとな。』
『ララさん、ありがとうございます。』
『これくらいは当然よ!もっと頼ってくれて構わない!さあ、進みましょ!』
『そうだな。』
そうして3人は更に奥に進む。
1回の休憩をはさんでサモンたちは17階層まで進んでいた。休憩の合間にララのスキルボードを確認したサモンはフォーメーションを変更した。ララを前衛、サモンとカンナを中距離に置いたのだ。
名前:ララ lv 40
クラス:シルバーバスター スキル:バスタード
HP 1000
PW 2000
DEF 1000
INT 500
SPD 2000
SPI 1500
属性:土
この方がフォーメーション的に効率が良かった。10階層から継続的に壁から土の魔獣が出る。たちの悪いことに、カンナを狙っているようだ。しかし、ホーリーシールドをカンナの側面に展開することで攻撃を避けていた。
17階層を進むと、ララと再会した部屋と同じく広く魔獣が1体のみいる部屋についた。中央にいるのは巨大な蛇だった。
『エンガイム、あの魔獣が何かわかるか?』
『ッハ!あれはヒュージサーペント、中級上位に含まれる魔獣ですね。火や水に対する耐性が高いようですので、サンダースラッシュやライトニングカッターなどが有効かと思います。カンナ様は腹部の柔らかい箇所を狙っていただければ。』
使える技が増えているのはわかるのだが、エンガイムに聞かないと分からないのが難点だった。ダンジョンを踏破したら合体時に仕える技を把握しておこう。
『ララは俺と一緒に前線に!行くぞ!カンナ、エンガイムのいう通りだ!』
『わかったわ!』
サモンは地面を強く蹴り、一気に距離を詰めた。ヒュージサーペントからの噛みつきを盾ではじく。
「サンダースラッシュ!!」
一気に胴体目掛け剣を振りぬく。サーペントが上下に両断された。しかし、上はまだ生きている。ララが上に向け斬撃を放つ。
『バスタード!』
サーペントは更に分断されたが、それでも顔だけで動いた。
『うげ!なんだあの魔獣。しぶといな…』
サモンはすぐに魔獣の首にむけて魔法を放とうとするが、魔獣は壁の中に入っていった。
『っく!気を付けろ!!カンナ、周囲の壁や床だ。警戒を怠るな!』
『ええ!わかってるわ!』
カンナがリボルバーを壁に向け警戒する。その直後、カンナの足元よりサーペントの頭部が舌でカンナを掴み部屋を高速移動した。
「カンナああああああああああああ!」
サモンの現在の脚力では追いつけないほどのスピードだった。
『サモン私を合体して!』
『わ…わかった!魔獣合体!』
カスミが馬の形に変形していた。そしてサモンを乗せた。
『サモン、バスターソードを使って!全速力でいくよ!』
瞬間、ものすごい勢いで加速した。壁と天井をサーペントまで最短で駆け抜け、天井を這いまわるサーペントに追いつく。重力が仕事をしていないのは何故かわからないが、サモンは落ちない
『サモン!』
『ああ!フン!!!』
サーペントの舌を切る。そしてカンナが落ちる。それをサモンは抱きかかえた。そして最後に、サーペントに向けて片腕で魔法を放つ。
「サンダーボルト!」
サーペントは灰を残さずに消滅した。
「危なかったなーーー。カンナ、怪我はないか?」
カンナを見ると顔が赤くなって汗をかいていた。
「毒か!?」
サモンはホーリーライフを唱える。
「あ、いや、ちが、あの、大丈夫だから!!」
「そ、そうなのか?」
『サモン、馬…お姫様抱っこ…王子様…。』
カンナの思考が漏れてきた。なるほど、カンナは感情が高ぶると思考コントロールが出来なくなるんだな。サモンは冷静に分析していた。
『カンナ!思考漏れてるよ~~』
ララが余計なことを言った。
『え!?あ、なんで意識共有したままなの!?』
…カンナに胸を殴られた。正直危険な戦いの後でそこまで心的余裕がなかったからだろう。サモンはカンナの頭を撫でていた。カンナは殴るのをやめ、真っ赤な顔でうつむいていた。




