第九十九話『出発』
アイリーが大きくてを振って出発のジェスチャーをした。
「行くわよ〜！出発！！」
彼女自作の蒸気船が走りだした。
蒸気が上がり、船が進む。
「広ーい！」とカナデ。
「イカダくらいを想像してたから、この広さには驚きだよなぁ」と僕。
「いいわね。小型のボートでこの人数で移動しようとしたら、数日で疲れちゃうわ！」とカナデ。
「だよねぇ」と僕。
「いかがでしょうか、私が作った蒸気船の乗り心地は」
と必要以上に丁寧な口調で、アイリーが僕たちに聞いてきた。
「凄いね！」僕が言う。
「すごいわ！」とヒビキさんも言う。
「こんなに大きいなんて、まるでお家ね」とカナデ。
「お家が移動しているみたい。」とヒビキさん。
「そう、でも、この石炭を燃やす部分が大きくて、すこしせまくなっちゃうのよねぇ、これをなんとかしたいわ」
と、アイリーが言う。その問題はさっき、ネットで読んでいて、次の世代のエンジンタイプになると解決されるらしい、みんな少しづつ不満を解決して、進化してきたのだ。早速問題転に気づいてる時点ですごい才能だということがよくわかる。
「思った以上にすごいな。アイリーはほんとに天才なんだなぁ」と僕が言う。
「天才は言い過ぎだと思うけどね！」と笑う。
「もっといろいろなものを見て、もっといろいろなものを作りたいわ！船だけじゃなくて空をとぶようなものも作れないかしら、って思っているのだけど・・・」
とアイリーは飛行機までつくる野心を持っているようだった。
「よーし！みんなに満足してもらえたみたいなので一周して戻るわね！！帰ってお父さんに出発の報告をしなきゃ！」
と一周終えてもどってきた僕達。
「というわけで、私新大陸目指すから！！」と単刀直入にお父さんに言うアイリー。
「わかった！」間髪入れず返事をするお父さん。
「え、随分あっさり！！ゆるさーんみたいなエピソードがあるのかな、と思ったんだけど」と僕が笑う。
「アイリーが決めたことを俺たちが止めることはできないさ！」と、お父さん。なんとなくその理由はわかる気がする。
「言うことを聞くんなら、この蒸気船だって出来てないしな」とお父さん。
なるほど、皆ができないといったものを、才能で作り上げたのだろう、まさに天才。
「決めたら、言うことを聞かないというところが、この子の強さなのさ！コウタくんだっけ？うちの娘をよろしく頼むよ！！嫁に出したつもりで送り出すから」がははは、と笑うお父さん。
「ちょっとお父さんやめてよ！！そういうのじゃないわよ！！」とアイリーが顔を赤くする。
「はい、なるべく無事に返ってこれるように努めます」と僕は丁寧に返事をする。
「よろしく頼むな！！」と豪快に肩を叩かれた。
そして僕達は出発した。
町で大量の食料を購入して準備を済ませた。
「さあ、張り切って行くわよ！！いざ新世界に。」
アイリーがみんなにそう言った。
