第八十五話『カニ』
「さて、準備できたわ!」
「よーし、街じゃの!!」
と、僕らはとなりの街『ギリムウィル』に向かった。
「ほほう、ここが街かぁ」とめちゃくちゃ嬉しそうなハーデスちゃん。
「くるの初めてだもんね?」と僕が言う。
「いつも窓から見ておったぞ!!」
と堂々というハーデスちゃん。
「元気だけど、学校にいけなくて窓からそとばかり見ている、引きこもりっぽい発言だ」と僕が笑う。まあ近からず遠からずそんな感じなのだろう。それもなんとなく分かってからあの城からハーデスちゃんをつれだしたという面も少しある。
「来れて良かったね!」とカナデが言う。
「うん!!」
とハーデスちゃんが笑う。いつもの尊厳口調のことは忘れたらしい。とても嬉しそうに笑うのでとても可愛い。
この二人はあっさり仲良くなっているようだった。
ハーデスちゃんとカナデが
「あれはなにかのぉ」「あれはこう使うのよ!」「なんと!!」みたいなやりとりをずっとしている。
「いきなり都会に出てきた、田舎の子どものようだな」
いや、まさにそのとおりなんだけど。楽しんでいたたげたらなによりだった。発見がいろいろあることだろう。
「さて、ホテルに行きますか。ハーデスちゃんは僕と一緒でいいよね?」と僕は、さらりとあくまで自然に提案してみた。
「ちょ!なに言ってるの、コータ!!良いわけ無いでしょ!!ハーデスちゃんは私の部屋に預かります!!わからないこともおおいだろうしね、ねーハーデスちゃん!」
「うむ、そうじゃのう」と答えるハーデスちゃん。
「ぐぬぬ!」
一瞬でバレた。かなり自然に『保護者は僕です感』を出して言ってみたのだが。まあ、いいか、どうせ、部屋で発電機をくるくる回さなきゃいけないのだ。ハーデスちゃんの相手をしてる場合ではない。
「コータ、カニ!」
とキョウちゃんが突然思い出したように言う。
「ああ、そうだ、今度カニ食べようっていう話してたんだった。」
そう、街を二人で歩いた時にいろいろ約束したのだった、レモンをかけて唐揚げを食べる約束はすでに果たしていた。
「カニ!!いいわね!!」カナデが食いつく。
「あら、いいわね!じゃあ、夜ご飯はそれにしようかしら、コータくんの部屋で!」
「あ、また僕の部屋か」と笑う。
「女子の部屋は聖域だもんなぁ、結界が張られてて男子は入れない」と両手を広げて笑う。大変残念ですがね。と付け加える。
「ああ、そういえば結界、大丈夫だった?」
と、僕はそもそもこの街『ギリムウィル』が結界を貼ってあるおかげで、魔王城の隣にあってもモンスターを近づけないことを思い出していた。
「うむ、まったく問題ないようじゃな!」
と、ぴょんぴょん飛び跳ねながら、自身の体に問題がないことをアピールするハーデスちゃんだった。
「よしよし、問題なさそうね?」とカナデが言う。
「じゃあ、カニ買いに行きましょう!」
とカナデが腕を振りながらそう言った。




