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第七十八話『クナイ』

ハーデスちゃんが『隠れ兜』をかぶって姿を隠している。


一呼吸置いて、彼女が言った。

「大洪水 - タイフーン」

彼女の最大クラスの魔法が発動して、ハーデスちゃんに襲いかかった。


パラ、パラ、と水滴が飛び始める。

彼女のが魔力をまとい、その光を中心に、変化が起きる。


「雨・・・?と風・・・?」

僕が呟く。頬に水が当たる。

ヒビキさんを中心に雨粒が、飛び散る。

ほんとうの雨のように、


「キョウちゃんが倒れてるから、なるべく弱く行くわ!」

と言うと、どんどん雨粒が強くなる。

風も強くなる。嵐。が起きている。

これでも力を抑えているらしい。


「キョウちゃん、ちょっとの間、頑張って耐えてね!!」

キョウちゃんがその声を聞いて、ピクリと動いたような気がした。


嵐がどんどん強くなる。

水しぶきが、部屋中にあふれる。

風と水。土砂降りになり過ぎない程度の台風。


それがヒビキさんを中心に発生している。

キョウちゃんに、負担をかけ過ぎないためだろう。

初期の台風くらいの水量だ。


そして僕は、ピンときた。

「わかった。なるほど!」

と当たりを見回す。


「完全に理解しました!」

と僕が言う。ヒビキさんの作戦が完全に分かった。

この魔法は、魔王を攻撃するのが、目的ではない。

『水を部屋中に当てること』が目的なんだ!!


そう、水しぶきで、物の形を見るのが目的だ。

透明になっても、物が当たれば反応する。

水の動きがおかしいところに、魔王はいるってことだ!!


と言って、一カ所だけ、水しぶきの動きが違う場所を見つける。そこに走っていく。


「はい、ハーデスちゃんみっけ!」

僕は言いながら、兜、つまりハーデスの神器『隠れ兜』を取る。


すると、ハーデスちゃんが姿を現す。

可愛らしい姿の美少女魔王ハーデスちゃんがまた現れた。


「返せ!返せ!」

とタダをこねる、ハーデスちゃん。

今までの口調はどこにいってしまったのか、ただの子どものように繰り返す。


「返して!!返して!!」

と何度も何度も言う。

子どものこういうシンプルな攻撃って、効くよなぁ、と心がちくちくする。でももちろん返す訳にはいかない。


もちろん返したら、被って、消えて攻撃してくるからだ。


「いじわるしないで〜!!」

というハーデスちゃん。

ポコポコ僕をグーでなぐってくる。

これは大して痛くない。


「なんだか僕の方が悪者になってしまったような。」

心のほうが痛い感じだ。


「じゃあ、しょうが無い」

と、ハーデスちゃんは、いきなり振る舞いを変え、腰に手を当てて、短剣を手にした。


マズイ、この状態だと、そのナイフをもろに食らってしまう。

こどもだと、侮りすぎた。

曲がりなりにもこの子は魔王だった


僕のお腹に、ナイフが刺さろうとした、その瞬間。

シュッと音がして、ナイフがはじけ飛んだ。


キィィィンと。


クナイが飛んできたのだった。

ハーデスちゃんのナイフがクナイで吹き飛ばされる。


「ハーデス、やりすぎ」

そう、倒れていたキョウちゃんが、最後の力をつかって僕があげた、クナイをハーデスちゃんに向かって、投げたのだった。

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