第七十六話『光学迷彩』
落ちている兜と、突如現れた美少女魔王のハーデスちゃんという2つの事実から推測が確信に変わる。
この兜が、被ると姿が見えなくなる「隠れ兜」だということだ。
このことはネットにも書いてあって、なんとなくは存在を知っていた。ハーデスを調べたときに、ちらっと目にしてはいたのだ。
まさか実在するとは信じていなかったが。
ネットの情報は曖昧で、全部が全部、正しいわけではない。堂々と書いてあるのに存在しないものも今までにたくさんあった。それを全部確認するのは難しい。
それの確認と、キョウちゃんのダメージが交換だというのは代償が大きすぎる・・・。悔しい。生きててくれよ!キョウちゃん。
そして、僕らは追い詰めつつある、エキドナとハーデスちゃんともう一度、対峙する。
「キョウちゃんが心配だ。素早く終わらせるよ!」
と言って、剣を構えた。『覇竜の剣 - ドラゴンキラーナイフ』がキラリと光る。
隠れ兜を検索したいところだが、そんな余裕はないので
記憶をたぐり寄せる。
『隠れ兜 - 巨人キュクロプスによって作り出された、被ると姿が見えなくなる』
たしかこんな感じだった。キュクロプスかキュロプスかキュクロスか、チョコクロワッサンの略称に近いな、という記憶の仕方だったので、実は自信がないが。
このタイプのアイテムはアニメにはそこそこ出てくる。
ネコ型ロボットのアニメに出てくる、被ると石のように誰も気にしなくなる帽子。
SFアニメの光学迷彩など。
どちらかというと、今回のものは光学迷彩に近いようだ。
存在を認知できなくなるわけではなく、見えなくなるだけ『隠れている』だけだ。まさに『隠れ兜』。
高度な光学迷彩という認識でいいだろう。
『足音は聞こえるし、そこに存在する!!』
なので、蹴りを当てることも出来る。
「ぐえっ」
と、美少女にに詳しくない声を出して倒れている美少女魔王のハーデスちゃん。
試しに、何もない空間を蹴った結果、思った以上に綺麗に蹴りが決まっていまったようだ。
やっぱりハーデスちゃんは戦闘タイプじゃないようだ。
倒れたまま『隠れ兜』に手を伸ばそうとしているが、動けなくて届かない。
「結果的に、美少女を蹴り飛ばすという残虐プレイに・・・」
僕のポリシーに反する・・・大変よくない・・・。ダメ・・・絶対・・・。
「気にするのそこ!」とカナデが言う。
「だが、もう一人の美少女キョウちゃんの命がかかってるからしかたがない」
そう、キョウちゃんがハーデスちゃんのバイデントによって倒れてしまった。
「今のは!!緊急避難だ!!」
と自分の行動を正当化する僕だった。
「僕は一人でも多くの美少女を救いたい!!」
「なんの宣言よ、それ・・・」
と、僕の言葉に、カナデが言う。
「ハーデスちゃんが、見えている間にエキドナをやっつける!カナデ!落ちている『隠れ兜』をゲットしておいて!!」
とカナデに『隠れ兜』を任せて、弱っているエキドナに斬りかかった。




