第六十三話『冷めない水筒』
そして魔王城はまだ二階。魔王へと続く道は続く。
「先はまだあるけど、少し休憩しましょう!」
疲れきった僕に気を使いつつ、相談の時間をとるつもりだろう、ヒビキさんがそう言った。
「ミノタウロス強かったぁ」
ぺたんと座ったままの足を伸ばして、そういう僕。
大きく伸びをする、動きすぎて、手足が痛いような、痛くないような、筋肉痛がくるのは明日だろうか?
「お疲れ様」
とお茶を出してくれるヒビキさん。この世界にも冷めない水筒のようなものがあるらしい。とてもおいしいお茶をいれてくれた。調度良い温度で美味しい。
「おいしいですね!」とヒビキさんに感想を伝える。
「あら、ありがとう!」とにっこり微笑むヒビキさん。
「キョウちゃんが買って来てくれた、不思議な水筒にいれると、ずっと暖かいのよね」とヒビキさんが言う。
「こないだ買った」とキョウちゃん。
そういえば、僕といっしょに行った道具屋さんで買っていた気がする。
そういえば、あの『冷めない水筒』ってどういう仕組なんだろう??とスマホを取り出して検索してみる。
「冷めない仕組み - 容器を二重構造にし、その間を真空にして熱の移動を遮断している」
とのこと。ちょっとむずかしいが、なんとなく分かった。
「ああ、つまり外気に触れると、容器を通してても、中のお茶が冷たくなっちゃうから、とにかく外気に触れないように、浮かせてるってわけなんだね。外気に触ってなければ温度が下がらないってことなんだね」
と考える。電気などを使わない原始的な仕組み。だからこの世界でも実現可能なのだろう。この世界は、わりと元いた世界と似たテクノロジーが存在する、ただ、モニタなど電気関係の複雑なものはない。
似た時代というと、昭和だと、テレビあるし、電気があるから、そのちょっと前くらい、具体的に言うと、江戸??明治??くらいの技術力なのだろうか、この異世界は。
と、この世界の技術力を推測する。
「真空にして、浮かせるのは、そもそも熱いものと冷たいものが触った時に、エントロピーが云々かんぬんで温度が同じに近づく的ななにかを防ぐためのアイデアなのだろう多分。よくはわからないけど」
と言いつつも難しすぎて、自分でもよく分からなくなりつつ、口にしてみた。
「何を言ってるの??」カナデが聞く
「僕にもわからないんだ」と笑う僕。
「わかっていることは、女子はゆっくりお茶を飲みたいから、すぐに冷えてもらうと困るってことだね」
「ほんとそう」
と、僕の意見にしっかりと頷いて、キョウちゃんが言う。みるからに猫舌っぽい。けど熱いのが嫌いなわけではない、みたいな、キョウちゃんだ。
女子達はちょっとずつ、お湯を注いで、少しずつ飲んでいた。
男子のようにガブガブ飲むわけではない。
「異世界でも女子は女子だなぁ」と僕が言うと
「また、わけわからないこと言ってる!」とカナデが笑う。
「よーっし、お茶もしっかり飲んだし、次に行きますか!!」
しっかりと休憩して、次に向う。




