第六十二話『真剣勝負』
「あの攻撃もこの攻撃も致命傷に至らない。ほんと最強のモンスターだよ君は!!」
と笑い、また構えた。
強かろうがここで、諦めるわけには行かない。
先に進んで魔王のところに向かわなければ。
「そろそろほんとに決着をつけたい」
と僕が呟く。ほんとに疲れてきた。これ以上長引くと、うっかりミスでやられてしまう。向こうの体力は半端ない。きっとずっと元気なままだろう・・・。困ったもんだ。
「ミノタウロスがほんとに強いのはよく分かった。とくに弱点はない。強靭な肉体。地面を揺らす程の咆哮。巨大な斧『ラブリュス(両刃の斧)』」
と、特徴を並べて整理して口に出してみる。『ラブリュス(両刃の斧)』はさっきのページに書いてあった武器の名前だ。武器に名前が付いているのはなかなか、かっこ良くていいよね。
「真剣勝負と行こう!」
と、いつまでも、細かい知恵比べをしてても意味が無いことがわかってきた。すべての小細工はあの強靭なパワーで吹き飛ばされてしまう。
「『覇竜の剣 - ドラゴンキラーナイフ』と『ラブリュス(両刃の斧)』がどちらが強いか比べて、決着にしよう!」
と、大きく『覇竜の剣 - ドラゴンキラーナイフ』を構える。集中する。『覇竜の宝石』が光る。
次のミノタウロスの攻撃にカウンターを仕掛ける。
こちらのほうが、スピードにはやはり分がある。
スピードと、剣の力で、決着をつけよう。
ミノタウロスの剣戟より速く僕の剣を叩き込む!!
そう決めた瞬間。ミノタウロスが動き出す。
「来たな!!」
ぐっと構えを深くする。
ミノタウロスが両刃の斧『ラブリュス』を振り上げる。
その斬撃より。
早く。速く。疾く。
少しでも速く!!!!
『覇竜の剣 - ドラゴンキラーナイフ』を
叩き込む!!
最短のイメージを描く。
高くから振り下ろされるミノタウロスの斧。
下から切り上げる僕のナイフ。
僅かに僕の方が速い。
ズバアアアァァァァアン。
ミノタウロスが振り下ろす前に、僕が斬撃を与えた。
そう、あの巨体をナイフ一本で切り裂いたのだ。
ミノタウロスの巨体が
ズガアアァァァアンと
後ろに倒れた。
「やっ、やった!!」と僕が目の前の光景、つまり、ミノタウロスが後ろに倒れるという信じられない光景を見て
「た、倒した。」
と、なんとか口に出す。
そして、ペタリと座った。
もう立っている体力も残っていなかった。
「倒しちゃった、一人で』とカナデが言う。
「すごい」キョウちゃんも言う。
「すごいわ」ヒビキさんも手を胸の前にもってきて驚く。
「大分苦戦したけどね」
と、僕がいつもの軽口を叩く。シリアス成分高めすぎたからね。さくっ、さくっとほんとは倒したいんだけども。と笑う。
「強いわ!ミノタウロス!!」
と、ミノタウロスの、力、頑丈さ、執着心すべてを褒め称えた。
そして魔王城はまだ二階。魔王へと続く道は続く。
「先はまだあるけど、少し休憩しましょう!」
疲れきった僕に気を使いつつ、作戦会議の時間をとるつもりだろう、ヒビキさんがそう言った。




