第五十七話『弱点』
「みんな、いくぞ!」と声をだす僕。
「オッケー」
「わかった」
「了解よ!」
みんなの返事が聞こえる。よし大丈夫なようだ。
「戦闘開始!!」
僕が続けてそう言った。
これから一気に、この『ミノタウロス』正しくは『ミーノータウロス』を倒すのだ。
「とはいうものの・・・」
と、僕が続ける。さっき検索したときに、この『ミノタウロス』のすごいところに気がついた。ミーノータウロスの出自とか今回関係なさそうなところはささっと飛ばして、必要になりそうなところを全部見たときに気がついたのだ。
「『弱点がない』!!」
そんなに的にポンポン弱点があるかいって、当たり前に感じそうだが、実はいままでこんな敵はいなかった。そう、だいたいどこかしら、なにかしら、敵には弱点があったのだ。それもだいたい1ページ目に書いてあったのだ、重大な弱点が。
「ケルベロスは音楽聞いちゃうと、寝ちゃうし」
と、いままでの敵の弱点を思い出す。これなんかかなり、激しい弱点だ。バレたらもう勝てないレベルのイカした弱点がついていた。あのときは僕のスマホの電池が斬れてしまって、そのまま倒すことはできなかったが、そのくらいの弱点をもっていた。
『ヒュドラー』は9つのうち、一つだけ、不老不死の本体があるということもわかっていた。読むのが遅かったけど、首を切るとそこから二本の首が生えてくることも書いてあった。超重要な弱点になりそうなエピソードが必ず入っていたのだ。
「神話の敵は、『弱点になるようなエピソードがだいたい付いている』・・・はずなのだが、『ミノタウロス』には一切ついてない!!」
そう、このミノタウロスには全く無い!!ホントは星、雷光を示す、アステリオスというかっこいい名前がついてたこととかしかのってない。多分今回の戦いにこの情報はまったく役に立たない、こう書くと伏線ぽいけど、ほんとに関係ない。
「お手っていうと、クウゥゥゥンってなっちゃうような弱点が欲しい」
と僕思った。
「そんな弱点はなく」と続ける。
「ただ、強いって書いてある・・・」
そう、ただ強い。強いし、人をパクパク食べちゃう。
手加減してくれる感じも0。
確実に人を倒すつもりの獣人だ。
「そのヒント、まったくいらない・・・見れば・・・わかる・・・」
「グオオオォォォォォ!」
咆哮をあげるミノタウロス。
その咆哮により、地面が響く。
そんなことってあるのだろうか。
音もエネルギーだから、あるといえばあるのか。
そんなことを学校でならったような気がしないでもない。
と冷静に考えてしまう僕だった。
「ほらね」
咆哮だけでプレッシャーがこんなにある。踏ん張らないと、吹き飛ばされてしまうかもしれない。
こんな敵に一切弱点がないという。
まさに正念場。
体力勝負。真剣勝負。ガチンコ勝負。
「力の勝負になるってわけね!」
と僕は『覇竜の剣 - ドラゴンキラーナイフ』を抜いた!




