第五十一話『となりの魔王城』
「さて、そろそろ戻って作戦会議だ!」僕が言う。
「うん」キョウちゃんも頷く。
そうこうして、僕らはホテルに帰ってきた。
「そろそろ出発の準備をしましょう!」
とヒビキさんが言う。何故か僕の部屋で。
いつの間にか全員が集まっていた、僕の部屋に。
「なぜ、僕の部屋で・・・」と僕が訊ねる。
「女子の部屋は聖域だからね!」
と、美少女剣士カナデが胸を貼って堂々と言った。
自分で聖域というのはかなり怪しいな・・・。
はっと気がついた。
「部屋が汚いだけなのでは・・・?」
と、僕が言うと軽く睨まれた。
おおう、正解だった。地雷のスイートスポットを踏んだ。
話を変えよう。危ない危ない。爆発する。
「さて、次はどこにいくの?」
と僕が、カナデの視線から逃れるように切り出す。
「もちろん魔王城よ」
驚くべきことをさらりと言う、ヒビキさん。
「え、いきなり??」
まあ、最初から向かっていることはわかっていたけれども。
「勝てるの魔王に?」と僕。
「勝てる」
キョウちゃんが断言した。前に質問したときは、勝てないと即答だった気がする。そんなに僕らは強くなったのだろうか??
「可能性が高い」
追加して訂正された。『勝てる』から『勝てる可能性が高いに』ジョブチェンジした。
「まぁ、可能性が高いならいいか」
と、僕が笑った。はて、魔王城はどこにあるのだろう。
「で、魔王城はどこにあるんですか、また山を越えて、海を渡り、川を越えていく感じですか?」
と、大冒険を思い浮かべて聞く僕。
「そこよ」
と、カーテンを開けて指差すヒビキさん。
「はい!?!?」と僕が驚く。
「あれ、魔王城だったの??なんか城があるな、とは思ってたし、ちょっと王様の城にしては禍々しいかな、って思ってたけども!!すぐそこですやん!!てか、もうついてるじゃん」と僕が激しい勢いで突っ込みまくる。突っ込みが追いつかない。
「そうだけ・・・ど?」カナデが不思議そうに言う。
「そう」とキョウちゃんも言う。
「ええええ、なんでこんな緊迫感ないの!!なんで、僕のテンションが間違ってるみたいな感じなの!!てか大丈夫なの??こんな近くに街があって!!根絶やしにされちゃうんじゃ」
「結界がある」とキョウちゃんが言う。
「結界、そんなに万能なの・・・」と僕が呟く。
「条件が合えば」と続けるキョウちゃん。
「こんなに近くにいて、魔王とか、ドラゴンとかそういうのが襲って来こないの?」と言ってから、そういえば「ギリムウイル」も「最後の意思」的な『最後の街』っぽい名前だなっと思った。
「うおー、マジか、もうラスボスなのか」
と僕は考えこむ。
「大丈夫、魔王までは結構、敵がいるから、すぐには辿りつけない、という噂よ!!」いきなりラスボス倒して終わりじゃない、という意味だと思うけど、それはそれで全然、嬉しくない情報だった。死なないといいな・・・。
「まいっか、行きますか!」
僕は納得して切り替える。切り替えの速さが売りな僕だ。
負けそうならすぐ返ってこれるという話でもありそうだし。
「行きましょう!」
ヒビキさんがみんなに言う。
そして僕らは魔王城に向うのだった。




