第四十七話『朝の市場』
ドンドンと音がする。
「いくわよ!!」
カナデだった。スマホの時計に目を通す。なぜか日本時間とだいたい同じなこの異世界。
「先生!朝五時なんですが!!」
とカナデに抗議する僕。
「太陽が出たら朝よ!!」
とむちゃくちゃな理論により、カナデに連れられて出かける僕らだった。
「こんな朝早くに一体どこにいくんだよー!」
と僕が言う。朝五時ってなんだよ〜。人間が活動しちゃいけない時間だよ〜。と心のなかで唱え続けた。
「決まってるじゃない!!」
「え?どこ??」
まったく僕の中では決まってなかった。検討もつかない。景色がいい山・・・とか・・・?この時間から山登りは倒れちゃうのでは。
「市場よ!」
「おお、異世界にも市場があるのか。」
と、カナデのアイデアにうっかり興味を示してしまう僕。市場なら興味がないこともない。一体何がおいてあるんだろう。わりと生態系が似ているので、元いた世界にあるものが結構あるかもしれない。唐揚げに必要なアイテムが買えるかも。
「そう、魚に果物、野菜なんでもあるわよ!」
「へーなんでもあるんだね、ちょっとだけ目がさめてきた」
と僕が言う。興味が出ると、身体的な何かというのはわりとすぐ忘れてしまうものだよなー、と思いながら。とはいえまだ、完全に目が覚めたわけではない。寝不足なのは本当だ。
たどりついて、いろいろ見て回る僕ら。
「酸っぱい果物でも飲んだら?」
「お、飲んでいくかい??レモンのすりつぶしだよ??」
と市場のおじさんに話しかけられた。つまりレモンジュースってことかな。生レモンジュース。100%果汁。それはかなり酸っぱいはず。
「飲む飲む!この人に一杯頂戴」
僕の許可を待たずに、カナデがちゃっちゃと購入して、お金も払っていた。出してもらった、お金はあとで僕がちゃんとカナデに渡した。
「生ジュースか、OLが朝飲むみたいな感じだ」
と、言いながら、生ジュースを眺める。
うーん、かなり酸っぱそうだ。
「なにしてるのよ!男なら一気に行きなさい一気に!」
と言ってぐっとするカナデ。
「すっぱ!!めっちゃすっぱい!!」
と僕が慌てる。目が完全にあいた。めちゃくちゃ酸っぱい。
「ちょっと、これカナデも飲んでみてよ、マジでヤバイって!!」と僕がカナデに言う。
「え?いいの??」
と聞くカナデ、確認するようなことがあったかな??
「もちろん!」
といいつつも、カナデが赤い顔していたのが気になった。
ん?なんで、酸っぱいだけだが・・・。
僕が飲んだから??とここまで考えて気がついた。
はっ!これは間接的なあれか!!
だから顔が赤くなってたのか。
と気がついた頃にはカナデは飲み始めていた。
「めちゃくちゃすっぱい!」
と微笑むカナデ、その姿は可愛すぎた。
なんだかんだあったけど、そのことしか覚えてないのは内緒だ。一通り市場を回って、ホテルに戻ってくる僕ら。
「交代」
キョウちゃんがそう言った。
「はいはい!わかってるわよ!!コータ、じゃ、またね!」
と部屋にもどっていくカナデ。
「道具やさんに行く感じ?」と僕が聞く。
「うん」
次はキョウちゃんのショッピングだ。




