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第四十三話『ギリムウィル』

「見えてきたわ!」ヒビキさんがみんなに言う。

ついに僕らは『ギリムウィル』に到着した。

そこはほんとに街と呼べるものだった。

流石にビルや駅はないけれど。


「とりあえず、今回はホテルに行きましょう、かなりみんな疲れたでしょう!お金もあるし」

と、ヒビキさんが言う。いつもは、この時期は温かいということで、テントで泊まっているのだけど、やはりモンスターが現れるという可能性もないわけではないし、都市の中の方が安全だ。


お金もキョウちゃんの機転に寄りかなりの金額を道具と交換して持っていた。しかも、洞窟で手に入れたアイテムもこの後、換金可能だろう。つまりとくにお金には困っていなかった。


「いいね」

ビシッと親指をたてるキョウちゃん。おちゃめだった!

「わーい!ホテル!!これでだれかさんに覗かれずに済むしね!!」喜びながら、ちらっとこちらを見るヒビキ。


「あれは、不可抗力だって・・・」と僕は言う。湖ドラゴン事件のことだった。


「さあ、いったんみんなホテルに荷物をおいてきましょう。今日は一人一部屋よ!」

と、ヒビキさんが全員に伝える。お金のことももちろんあるけど、それを実現するには部屋がたくさんあるホテルがそもそも必要だ。ここは大きい街なので、一人一部屋が可能になっていた。素晴らしい街『ギリムウィル』。


「いいね」またビシっとする今日ちゃん。

「おおお、豪勢!!」とカナデも言う。


「シャワーも一人一部屋ついていることでしょう。つまらない・・・。」

と、僕がうっかり心の中をつぶやいてしまう。


「いま、つまらないって言ったわよね!!」

「言ってない言ってない!いや言ったか、言ったかも!!」

と、とりあえず否定してみたけど、よく考えたら言っていたので訂正していた。素直さが売りの僕だ。


「かもじゃないわよ!!完全に言ってました!!変態!変態!」とビシバシ叩かれる僕。

「うむ、心地よい罵倒イベントだ」

罵倒イベント頂きました。そんなものがあるのかは知らないけれど。


「それはともかく一人一部屋はいいわよね、キョウ」

「うん」とカナデに応えるキョウちゃん。


「カナデに邪魔されずに、荷物の整理ができる」

とボソリというキョウちゃん。

「なによぉ、邪魔したわけじゃないわよ!!たまたま踏んじゃっただけよ!踏んじゃっただけ」と抗議するカナデ。

「あはははは、その様子は見てないのに想像できるな」と僕が笑う。


「ちょっとぉ、見てもないのに笑うのはヒドイでしょ」

「あはははは、そうね、ひどいわね」とヒビキさんまで笑う。


「ちょっとヒビキまで!!」とカナデが一人で怒っている。

「もうっ」とプンプン怒っているカナデであった。


なんだかんだあってみんなが別々の部屋に向かった。


しばらく部屋でぼんやりしていた。

「いろいろな事があったなぁ」

と、ここに来てからの事を思い出しているとコンコン、とノックの音がする。


「ちょっといいかしら」と、声が聞こえる。

デートイベントかな、これは。と僕は思った。

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