第四十一話『プロポーズ?』
「おおお、倒した!!」
僕が叫ぶ。スマホなしでしっかりと。僕は確実にちゃんとした勇者に近づいている。そういう実感がたしかにあった。
そう、強力な洞窟のボス『ケルベロス』を倒したのだった。
そして、ここを抜けると次の街『ギリムウィル』だ。
キョウちゃんがいつもどおりしっかりと『素材集め』をしている。「これは使える」「これも使える」「うんいい」といいながらケルベロスから素材を集める。
「魔剣とか作れそう」
と僕がぼそりと言う。ケルベロスって立派な魔獣だよな、音楽を聞くと寝てしまうという、『うっかり弱点』が可愛すぎるけど、立派な魔獣、獰猛な犬。
「作れるけど、危険」
と、キョウちゃんが応える。魔剣についてだ。RPGだと魔剣の扱いが軽い、強い剣くらいのイメージだけど、実際に仲間が持ってたら、かなり厄介だよね。実際。
「その名の通り、魔剣だもんね」
と僕も考えてみる。バーサーカーみたいになっちゃうのかな。いきなり、仲間に斬りかかられたら困る。めちゃくちゃ困る、めっちゃ怖い。
やはり画面の中で思っていることと、実際に体験することはまったく違うよなー、これから流行るといわれてる、バーチャル端末だと、ゲーム性が変わるのかなぁ、などと、のんきなことを思う。
「つ、つかれたー!!」
ペタンと、尻もちをつく僕。このままちょっと休憩しようという魂胆だった。こんなに激しく動いたら、疲れてしまう。みんなは一日中動く生活をしているから、ピンピンしているけど、スマホばっかりみているような生活をしていた僕にはなかなかハードだ。
「次はギリムウィルか、そこには何があるの?」
「なんでもある。都市」
都市かぁ、異世界の都市ってどうなってるんだろう。楽しいといいなぁ。映画館とかはないよなぁ。やっぱりおしゃれなカフェとか??
「それはかなり楽しみだな。」
と僕が言う。
「おいしい食べ物あるかな」
と、僕が言う。カフェあるかな、カフェ。
「あるけど、唐揚げの方がいい」
と即答するキョウちゃん。洞窟にくる前に作ってあげた、唐揚げにご執心の様子。そんなに気に入ってくれたら嬉しいよね。全部ネットでみたレシピ通りだったけど。
「まじで?」
と驚く僕。
「この世で一番美味しい」思っていた以上にお気に入りの様子だった。
「そこまで!!??」と僕が突っ込む
「命、以外なら何と交換してもいい。ずっと一緒にいて作って欲しい。」
「そこまで!!」
と僕が笑う。ん?ずっと一緒??ずっと作って欲しい?とあることに気がつく僕。
「ん、それってプロポーズ??」
と思ったことをそのまま聞いてしまった。ずっとお味噌汁を作って欲しいというプロポーズがあったような気がしたから。
「あ・・・」
気がついたのかかなり顔が赤くなるキョウちゃん。
一瞬間を置いて
「また作って欲しい」と言うキョウちゃん。
「そりゃ、またつくるけど・・・?」
「うれしい」
と言う。キョウちゃん。かわいい。可愛すぎる。
「ん?あれ??メインヒロイン。キョウちゃんなの?」
と天に問い掛ける僕。すっかりキョウちゃんの胃袋を掴んでしまったようだ。
そんなやりとりをしていると、微笑みながらヒビキさんがこういった。
「さて、ギリムウィルに行くわよ」




