第二十七話『スマホの中の師匠』
「じゃあ、とりあえず、洞窟よね!」
と微笑みながら言うカナデ。
カナデの提案にヒビキさんが頷く。
これからの旅の方針がきまったようだった。
「そのまま次の街に進んじゃいましょう。少しでも魔王に近づいた方がいいわ」
と、魔王を倒しにいくという目標を再確認するヒビキとん。なるほど、美少女の魔王だったな、と思い出した。それは、僕が勝手に思っているだけだが、異世界の魔王は美少女と決まっている。頑張っていきたい。
「キョウちゃん、準備は大丈夫よね?」
と、道具使いのキョウちゃんに確認するヒビキさん。
そう、キョウちゃんのために街まで戻ってきていた僕らだった。
「大丈夫、だいたい買ったし売った」
そう『ブラックドラゴン』を倒して得た素材を売ったり、その素材で『覇竜の剣 - ドラゴンキラーナイフ』を作ってもらったりしていたのだ。
「洞窟に向かおう」と言うキョウちゃん。
「おーっ!」と元気なカナデ。
「頑張りましょう!」と微笑むヒビキ。
「おお、RPGっぽい!」と思った。
洞窟かぁ、どんな感じなんだろうか。
わりとパワースポットっぽい感じなんだっけ?洞窟って、と思った。
ここを抜けると次の街『ギリムウィル』よ。
「いっちょ頑張りますか!」と笑うカナデ。
「頑張る」とキョウちゃん
「頑張りましょう!」ヒビキさん。
すると、影が動く。薄明かりの中、子どもくらいの大きさの影が動く。
「さっそく来たよ、ゴブリンだ」
とりあえず敵といえばゴブリン。さて頑張るか。
『覇竜の剣 - ドラゴンキラーナイフ』を抜刀する僕。
相手が攻撃してくる前に、攻撃する。
一撃で倒した。
「さすが」
キョウちゃんがほめてくれる。
やはり『覇竜の剣 - ドラゴンキラーナイフ』の力は凄い。軽いし、攻撃力も半端ない。
「なるほど」
と、カナデが僕の攻撃を見て、頷いていた。
すると、さらにゴブリンがやってくる。
「ああ、たくさん出てくる感じか」
と、僕は軽口を叩くも、もう一体を逃してしまい、それはカナデの方に向う。
「あ、しまった」
と、僕が言った瞬間。スタッと走って、ゴブリンを斬りつける。カナデ。前回苦戦していた、ゴブリンを一瞬で倒した。
前回はゴブリンと互角だったので僕が、五百円玉で引きつけて倒したのだった。
「え!?すごい僕の動きを真似したのか!すごい学習能力!!」
と僕が驚く。前回の苦戦は一体なんだったのか。という位あっさり倒した。
「もしかして、今まで師匠がいなかっただけ?」
「そう、カナデは独学」とキョウちゃん。
「そうなのか、動き自体はめちゃくちゃいいもんなぁ」
と、僕が言う。そう、僕より重い武器を簡単に扱えるし、動きも軽やかだ。戦い方がわかれば、めちゃくちゃ強そうだ。
僕にはたまたま、師匠がいただけだ『スマホ』の中に。
僕はスマホの師範代の動きを何度も見て、その動きを真似したり、ゴブリンの弱点を検索したりしただけだった。
自力の高いカナデがいろいろ学べば、一気に強くなってしまうのではないか、僕は思った。
「どんどん行くわよ!」
カナデがみんなにそう言って、先に進む。




