第二十三話『二度揚げ』
「さぁ、揚げますよ!」と僕が言うと
「揚げ・・・る・・・?」と目を輝かせるキョウちゃんがそこにいた。
唐揚げを楽しみにしている、キョウちゃんは、僕の一挙手一投足を見逃すまいと、覗きこむ。子どもが好きな料理の一例を出した時に、唐揚げという単語が出てきて、食いついたキョウちゃんは、ずっと楽しみにしている。
「そんなに、見られると、照れるよ」
と、僕が言うが気にしない様子のキョウちゃん。
その期待に答えられるといいのだけど、ただ作るのは初めてなので、インターネットの力を頼りにするのみ!!
「油の中に入れるのね?」
と、ヒビキさんも実は結構しっかり見ていた。基本的には料理担当はヒビキさんだからだろう。下味を付ける段階で、結構手伝ってくれていたので、なんとなく、何をやろうとしているかはわかっているっぽい。
「うーん、みんなに見られてやりづらい」
と、笑う僕。
「コータ、がんばれ」
と応援してくれる、キョウちゃん。
バチバチッと油の音がする。
鍋と火はキョウちゃんに用意してももらっていた。
「跳ねるから、気をつけてね」
と、鶏肉を油の中に入れる。
「おお!」
「おー!」
「なるほどなるほど」
と女子陣から歓声が上がる。
「そんなに、くいつくとこ?ここ」
と、僕は笑った。
「なんか凄い」とキョウちゃんはいった。
スマホに視線を落とす。
「まずは、160℃で揚げる。これが3分」
ほうほう、なるほど、これで、一旦取り出して、3〜5分休憩させるらしい。ここがポイントなのだな、と、僕は思う。そのおかげでカリッとジューシーな唐揚げが出来る。楽しみになってきた。
「三分たったので、いったん取り出す」
と、言いながら僕が唐揚げになりつつある鶏肉を一旦とりだす。
「休憩させてるあいだに、中に火が通るらしい。これがコツっぽい」と僕は納得する。
「なるほどなるほど」とヒビキさんは手を胸にもってきて、感心し、頷いてる。
「すごい。おいしそう」
と、ほぼ唐揚げになった鶏肉をみて、喜ぶキョウちゃん。
「まだまだ!ここで、更に、火力を上げます。カナデっちよろしく!」
「よっし!」
と、言って、薪木を追加する。昨日覚えた火の付け方でさっと熱量が上がる。
「ちょうど、5分たった」
と、温度が上がったところで、スマホのストップウォッチで測っていた時間が5分と表示される。
「もう一回入れます!」
と、休憩させていた唐揚げを油の中に入れる。
「おー!!」
「おー!!」
「おー!!」
もう一回、三人の歓声が上がる。そんなに盛り上がるとこ?とまた笑った。
「これは200℃で2分!これでカリッとする!」
「カリッと!!」
ごくりと、キョウちゃんが喜ぶ。
そして、2分。ついに完成した!
「さあ、これが唐揚げだよ!」
と、みんなの分盛りつけた。
「早く食べたい!」キョウちゃんの目が輝いていた。




