第百三話『島かと思ったら』
「長い船旅になりそうだけど、楽しんでいこう!」
僕はみんなに言った。
「あれ?島があるわ?」
とアイリーが言った。かなり不思議そうな表情をしている。彼女は、かなりざっくりとした地図を持っている。僕らがイメージするような地図とはかなり違う。ほんとうにざっくりしたものだ。
言ってしまうと、子どものお使いに使うためにお母さんがかいたような、落書きに近い、地図だ。でもそれはないより全然いい。GPSで世界地図に現在の位置が表示される便利な元いた世界とは違う。
彼女は造船所の娘さんなので、いろいろな情報が入ってくるのだろう。ざっくりとした情報をまとめた、簡単な地図をもっていた。
「こんなところに島があるなんてきいた事ないんだけど!」
と、アイリーは言った。
彼女の住んでいた港の町『リーバー』に立ち寄った漁師から集めた情報をまとめた、その地図らしきものを見ていた。そこに、この島の情報はない。これだけの島だ。誰にも見つからないということは、なかなか考えづらい。
「え?島じゃと!!ずっと船の中は疲れたわい。島で休憩したいのぉ!」
とハーデスちゃんが言い出した。彼女のワガママはとどまることをしらない。自分が新大陸に行きたいって言い出したのに。
「いや、この展開、明らかにアレ・・・じゃ・・・」
と僕が言う。これは・・・あの伝統的な・・・伝説系の『船旅あるある』そのものではないだろうか、と当たりをつけていた。
「あれ?島が、うごいたのお」
とハーデスちゃんがいう。
もう彼女の頭の中では、その島で休むこと確定らしい。
もちろん僕の話は一切きいていない。聞こうよ。そこは!
「もっと!もっと!近くに行くんじゃ!アイリー!」
と、ハーデスちゃんが言う。
「いや、さっきから近づこうとしているんだけど、なかなか、近づかないの!」
アイリーが不思議そうに言う。
あの手慣れたアイリーが、島に辿りつけないということは考えづらい。僕は推測した。
『ということは、本当に動いている』ということだろう!
僕がそういうと皆は「え??」と驚いた。
「本当に動いている??」
とカナデが聞き返す。
カナデだけは話を聞いてくれたようだ。
みんな、特にハーデスちゃんは、島に顔を近づけて覗き込んている。
「ぎゃー!!うごいたー、!!」
と水しぶきが上がる。
『島』が『動いた』!!
それは、島が動いた、というよりは、島が、立ち上がったという表現の方が近いかもしれない。
その立ち上がった島から生まれる、波と水しぶきにより、僕らの船『新大陸号』がかなり揺れる。
「まずい・・・みんなしっかりつかまれ!」
と僕が叫ぶ。
「了解!」
「わかった」
「わかったわ!」
と皆は、船に捕まっていた。
もちろん聞いてなかった、ハーデスちゃんは飛ばされていた。小さくて軽いので、簡単に飛ばされてしまう。それをガシッとキャッチして、ハーデスちゃんを抱っこする僕。
そして、しっかり、船に下ろす。
「ご苦労、コータ!」とハーデスちゃんが笑う。
「ご苦労!じゃないよ、ほんと」と僕は笑う。
「そんなことより、島だと思ったら、クラーケン・・・」
定番すぎる定番。伝説かと思ったら、実在したとは。
そう、島だと思ったものは、巨大なイカモンスター、クラーケンだったのだ。
「久しぶりの、戦闘か!最近平和ボケしてたから戦えるかな?」
と、最近、唐揚げ食べたり、カニ食べたり、かなりの平和モードだった、僕は、そう言って、笑いながら剣を構えた。
「戦闘開始だ!」
と僕が『覇竜の剣 - ドラゴンキラーナイフ』を構えて叫んだ!




