第百話『船の名前』
「さあ、張り切って行くわよ!!いざ新世界に。」
アイリーがみんなにそう言った。
蒸気が上がり、外輪が回り出す。
僕らは新大陸に向う。
「そういえば、この船なんて名前なのかしら?」
とカナデが疑問を口にする。
最初に名前を気にするのが女の子らしいな、と思う。
男はなかなか、乗り物に名前をつけたりしないからなぁ。
「まだ決まってないわ!!」
と、アイリーが、答える。
それはそうなのだろう。
買ったお客さんが愛称として、つけるイメージだから、作っている人はつけたりしないかも。
「よし、それじゃあ、名前を決めよう!」
と僕。
せっかくだし、名前があったほうが、気分が乗るかもしれない。大人気海賊漫画も船に名前があった気がするし。僕らは海賊王になるわけじゃないけど。
「ほほう、名前とな」
ハーデスちゃんが目を光らせた。
キラーンという、効果音が聞こえてくるレベルだ。
「もちろん、ハーデス号じゃろう」
と、自信満々に言うハーデスちゃん。
何がもちろんなのだろうか・・・。
そして皆が間髪入れずに言う。
「それはない」とキョウちゃん。
「それはないなぁ」と僕。
「ないわね」とカナデ。
「ないわね」とヒビキさん。
「ガーン!!なんでじゃ、皆してヒドイ!!一番わかりやすかろう!!ここのチームのリーダーのワシの名前を取るのが一番じゃろうが・・・」と、どさくさに紛れて、リーダーだと主張するハーデスちゃん。
「いつからリーダーになったの」と僕は笑う。
「最初から最後までわたしはリーダーじゃ!」
と堂々というハーデスちゃん。
「そういえばそうか・・・生まれてからずっとリーダーなのか・・・それはそれで大変だよね。ハーデス号は却下だけど」
と、ハーデスちゃんの生い立ちを理解しつつ、ダサい名前は却下しておいた。
「ガーン!!なんでじゃ!!」とまた同じことを言うハーデスちゃんだった。
「あはははは、みんな仲がいいのね!」とアイリーが笑う。
「それほどでも!」と僕も笑った。
そして、気がついた。
「制作途中の名前はないの?」
とアイリーに聞く僕。
「AS-113ね」とアイリーが言う。型番っぽい名前だった。
「いきなり機械っぽい名前ね!」とカナデが笑う。
「アイリー シップ 113?」と僕が口にする。
「そう、よく分かったわね!!」とアイリーが言う。
「この船113個目ってこと?」と僕が驚く。
だってアイリーつてかなり若い、間違いなく20歳は過ぎてない。首を見ればわかる!!
「そうよ!!販売できなかったものもあるけど!!」
とアイリーは悔しそうに言う。さすがに負けず嫌いなのだろうな、そうでなければこんなすごい発明はできない。
「お店にはその113個のうちの、私が作った船がまだまだ、置いてあるわ、あれを売れば多分一生食べていける。そういうのもあって、気持よく追い出してくれたのよ、お父さんも!」
とアイリーが説明する。なるほどそういう事情もあったのか、と納得した。
「名前、みんなひとつづアイデアだしてみる?」
と僕は名前の案を募集した。




