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8話 慌ただしい朝

「起きろ伏路。おーい、朝だぞー」

布団の中で丸くなる伏路の体を揺らす。昨日は何かと事件があったが、無事に朝を迎えた。

カーテンを開けると眩しい朝日が差し込み、まだ眠ったままの伏路の顔を照らす。一瞬眉間にしわが寄ったがまだ目覚めない。

昨日は俺がソファで、伏路がベッドで寝たわけだが、非常に背中が痛む。変な姿勢で寝るものじゃないな。今日はベッドで寝てやる。

「そろそろ準備しないと遅刻するぞ」

まるで母親にでもなったような気持ちだ。いや僕は男だから父親か。

「あと五時間……」

「せめて五分にしろ!始業まで一時間ないんだからさっさと起きろ!」

「もー……起きますよぉー……ぐー」

「寝てるじゃねぇか!」

時刻は七時二十分。僕はほとんど準備が出来ているからいいが、女の子は準備に時間がかかるだろう。ならそろそろ起きなければいけないはずだ。

「わかったよ……起きる起きるっと……」

伏路は重そうに体を起こし、ベッドから降りようとする。が、まだ寝ぼけているせいか、伏路の体が大きく揺れる。

「んおっととぉ!?」

「ちょっ!うわっ痛って!」

急に倒れこんできた伏路に対応できず、そのまま二人揃って床に落ちる。突然のことに受け身もままならず僕は後頭部を打った。

対して伏路は僕がクッションになって無事らしい。

「あぁ……ごめんごめん……。おやすみ」

「だから起きろよ!」

何で女の子の体はこんなに柔らかいんだ!

そうじゃなくて!起こさないと僕まで遅刻するんだ!

「お前まだ部屋に戻って準備することあるだろ!教科書とか持ってきてないだろ!」

「はっ!そうだった!今日の準備してないじゃん!」

やっと意識がハッキリしたのか俊敏な動きで立ち上がる。そしておもむろにパジャマを脱ぎ始めた。

「待て待て待て!ここは俺の部屋だ!着替えるなら自分の部屋に戻ってからにしろ!」

「ああああ!じゃあ私部屋戻るから寮の玄関で待っててね!」

そう言うとパジャマ姿の伏路は鞄を持って部屋を飛び出していく。

「あ!おにぎり握っといたから持っていけよ」

「ありがと!」

朝から騒がしいやつだ。ていうか俺が起こさなかったらあいつ起きられてないだろ。いつもどうしてんだよ。

リビングに戻ると、テーブルの上からおにぎりが四つなくなっていた。予想以上に持って行かれていた。

椅子に座って残った一つのおにぎり見つめる。元々作っていたおにぎりは五つ。中具はそれぞれ鮭、辛子、梅干し、しそ、わさび。我が家にはまともな具材が無かったため仕方なくわかめを茹でて入れたりしたが、どれが残ったのか。辛子とわさびは苦手だから避けたいところ。

「いただきます」

手を合わせて米に感謝する。そして一口。

「おっ鮭だ」

ということは伏路の口の中はカーニバル状態だな。

準備を終えて部屋を出ようとした時、上の階から叫び声が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。



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