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7話 ブラおね1巻特装版特典

台所で鼻歌まじりに食器を洗う伏路の背中を見つめる。泣いていたことなど感じさせない楽しげな雰囲気があった。

過去に何があったか詳しくは聞いていないが、いずれ聞くことがあるんだろうか。

「いやいや、そんなことはない」

「ん?どうしたの?」

つい声に出してしまった。

「何にもない」

すぐに否定しておく。いや別段何があったわけでもないのだから否定と言うのもおかしいか。

「やっぱりあった。俺はソファで寝るから、お前はベッドで寝ろよ」

「別にいいよ、私が泊めてもらうんだから」

食器を洗い終えた伏路が、ハンカチで手を拭きながら対面のソファに座る。そのハンカチには鮮やかな紫色の花柄が散りばめられていた。

「その花、何て言うんだ?」

「これ?これはね、カンパニュラって言うんだよ。綺麗でしょ?」

「まぁ、そうだな。……話を戻すが、俺はソファでいいから。お前をそこら辺に寝かせたことがあいつの耳に入ってみろ。何を言われるか分からん」

「あいつ?って誰」

「衣笠」

「あー、衣笠先生ね。別に私はどこでもいいんだけどな」

「いいから素直にもてなされてろ。風呂も先入れよ」

昼間に会ってから何も連絡がないが、俺が伏路に会いに行ったとか気にしてないんだろうか。むしろ、会いに行くのが分かっていたのかも。

「彼方くん彼方くん、お風呂覗いちゃダメだよ?」

「覗かねぇよ!急に何てこと言うんだよ!」

「だってあの漫画にお風呂覗くシーンあったよ?」

「あれは偶然風呂に入ってることを知らなかっただけだから!」

「偶然ねぇ……」

伏路は何故か俺に向かって疑惑の視線を送っていたが、俺は何もしていないじゃないか。

「ほら明日も学校あるんだから早く風呂入ってこい」

「りょーかいです。お先いただきまーす」

「どうぞ頂いてくれ」

とたたっと風呂場に伏路が入っていく。伏路に食器を洗ってもらっている間に風呂の準備をしていた。

シャンプー、リンス、ボディソープもちゃんと中身があったはず……。でも何か忘れているような……。

「彼方くん彼方くん!ちょっと来て!」

伏路が突然風呂場から僕を呼んだ。何だろう。お湯の出し方が分からないとかだろうか。

「どうした?何かあったのか?」

脱衣所兼洗面所をドアの隙間から覗く。するとそこにはバスタオル一枚だけで肌を覆った伏路がいた。 水に濡れた肌が妙に色っぽい。細い手足がすっと伸び、スタイルも意外といいようだ。出るところもちゃんと出ている。

「こほん。えーっと、何があったか聞く前にその頭はどうした」

「頭?」

伏路がきょとんとした目をしている。早く気がつくんだ。何があったかは知らないが、今お前の頭は泡だらけだ。しかもその泡床に垂れてるぞ。

「あっ、こ、これはね!びっくりしてしょうがなかったの!」

髪を洗っている最中であることを忘れるほどのことがあったのか……ゴキブリとか。

「それで、何があったんだよ」

「中を見れば分かるよ」

ふむ、ゴキブリにしては落ち着いてるか。本当に何があったんだ?

ドアを開けて脱衣所に踏み込む。出来る限り伏路の方を見ないようにして中を進む。

「左の壁を見てね」

「左?……あ」

僕が忘れていたのはこれだったのか。

風呂場の左手の壁にあった物。それは

「このポスターね、最初はこのくらいは普通かなって思ってたんだ。でもねお湯を出し始めたらどんどんこの子の水着が消えていくの!」

ブラおねのお風呂ポスター。それも湯気でお姉ちゃんの水着が消えるやつ。

「いやー、流石にこれはマズくないですか?彼方くん?」

「こ、これはだな……」

切り抜けろ、白鍵彼方。僕なら出来る、これくらいの試練乗り切れるはずだ!

「これは!友達が無理やり貼り付けていって剥がせないんだ!」

「いや彼方くん友達いないじゃん」

神様、どうして僕には友達がいないんでしょうか。

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