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友人代表が魔王とサディスト

☆☆☆


 私が二人の友人と出会ったのは中2の頃だ。別に厨2では無かった筈だが、厨2に相応しい友人であったよ。何か魔王とか呼ばれてる姉妹校の生徒とサディストの先輩なんだけど。真っ当な友達欲しい。


 因みに。十年を経過しても、私は同じ様な事を呟いている事になるのだが、そんなもん当時の私は気付く訳が無かった。


 幼なじみの二人とご飯食べた後、いつもの様にマッタリした昼休憩過ごすのかと思ってたら、二人して教師に呼ばれてるとかでチラチラ私を振り返りつつ去って行った。

 私は一人屋上に残り、日向ぼっこしながら食後のお茶を啜りつつマッタリしていた。そこにやって来たのが魔王である。魔王って……もはや草生やすしか無いよね?カッコワライって感じだよね?しかし魔王が自称ならともかく、他称だからなあ。たかが中学生だし、大した事は無かろうと思いつつも、積極的に関わろうとは思わない。


 魔王は中学生ながら仕事をしている。この学園は結構な坊っちゃん嬢ちゃんが通う成金学校なので、いや由緒正しい家柄の子供も在籍しているが、姉妹校がモノホンのお坊っちゃま学園とお嬢様学校なので、なんか成金とか呼びたくなる学校なのだ。校則弛いしな。とはいえ、成績が良い場合に限り……と云う注釈付きだけど。

 魔王が在籍しているのは、その由緒正しい家柄の子供が集まるお坊っちゃま学園である。そこの生徒会役員なので、交流会で当校に訪問して来たのは知っていた。私の家は成金より由緒正しい系の家柄だが、財力も権力もごく普通。この学院でも魔王の学園でも埋没する中庸のお坊っちゃまが私である。お嬢様で無いのは、まあ仕方ないね。いま男だしね。因みに妹がいるけどお嬢様と呼ぶのも戸惑うくらいの地味っ子である。やっぱり姉妹校のお嬢様学校に通っているが、コッソリ片隅で地味に棲息しているらしい。周囲に埋没して生きるのって、我が家の家訓だしね。

 平和に生きるためには良い家訓だと思うわ。


 そんな感想を持つ私は、当然乍ら魔王と呼ばれる輩なんぞと深く関わる気は無かった。


 魔王んとこの生徒会は結構有名どころが集まっている、親の仕事を中学生の今から手伝う勤勉で優秀な男の子たちであるとの話だ。その中で異色を放つのが魔王だった。当然の様に優秀だが、実家は弟が跡継ぎで、本人は別の名家の養子になっている。ここまでなら異色と云う程では無いが、彼の養父は名家の生まれではあるが家を出て自立しちゃっている。尚且つ、魔王もその養父と同じ仕事?に就いている。仕事と云うか、仕事?だよね。うん。それがまた異色。なんとプロ棋士と来ましたよ。囲碁してる子供なんぞ周囲に居たことが無いんだけど……私は前世で囲碁覚えてるけどさ。世話になった爺さまが、若い頃はプロを目指したってくらい本格的な囲碁好きだったんだよね。詐欺師って云うか、まだちょっとした当たり屋じみた事しか出来なかった頃から、ずっと世話になってた爺さまだから、私も当たり前の様に碁を覚えさせられたんだよね。小さい頃はメッチャ苦痛だった。あれ……ものっそ眠くなるんだよ。寝たら怒られるんだよ。変な手を打つと怒られるんだよ。爺さま曰く、碁

は人生だそうでね。後戻りも取り消しも出来ないだの何だの………私は子供心に思ったさ。


 それ……当たり屋させといて云うかね?詐欺の手伝いさせといて云うかね?それこそ後戻り出来ない犯罪者への道を、私は着々と歩んでいたし、その私の手を曳いているのは、当の爺さまなんである。


 まあ、そんな前世だったので、結構強くなってアマ四段くらい。県代表の人にも勝ったことあるくらいさ。所詮は素人の手慰みだけど。アマ四段てプロ初段にも普通に敗けちゃうしな。段位意味無いじゃんさ……と思わないでは無い。つうか私のアマ四段て爺さまが生きてる間にはかった棋力だから、現在の私の棋力が実際はどうなのか知らないけど。爺さま本当は私をプロ棋士にしたかったんだよな、そう云えば。厳密に云うと、此処で云うプロ棋士とは少し違うし、そもそも段位も向こうと此処では少し違うんだが・・・プロになる気は無かったし、棋界事情なんざよくワカランままだった。現在も家柄的に無理っぽいし、当然なる気が無いのも同じな訳で、結局はよくワカラン世界だけどな。魔王を見た私は、囲碁を連想した所為か、前世を思い出してちょっとしんみりした。


 魔王とサディストの先輩は知り合いらしくて、どうやら周囲の目が煩くない屋上に来たっぽい。つうかサディスト・・・貴様は何故に中等部に来るのか。高等部に連れて行けば良かったのに。あ、不良が居るからか・・でも不良もサディストの手下じゃなかったか?

 足掻いても奴等がこの屋上に来た事実に変わりは無い。そして私がマッタリしてるのを見付けたと。あれ?場を外せって視線か?気にしないけど。別に君らの話にも興味は無いから勝手にやっててくれ。そんな私の気持ちはガン無視された。魔王とサディストは揃って私の傍に来て腰を下ろす。何なの?そんなに邪魔なの?

 思わず睨むと二人とも何とも愉しそうに嗤う。いや、魔王は何て云うか…愛らしいくらいの笑顔だけどさ。眸の奥に「あ、この辺が魔王なんですね?」と云いたくなる感情が見え隠れしてるし、サディストはもはやガッツリ逆らう者はいたぶり尽くすぜって顔をなさってます………イヤン。私は極めて平凡なモブですよ?虐めても愉しくないですよ?即効弱気になった私だが、仕方あるまい。最近の中高生怖いな。つうか子供の癖に怖いな。ドキドキ。しかし怯えたら多分駄目だよな………獲物認定はゴメンこうむる。などと、愚かしくも考えた。寧ろ怯えて逃げたほうが余っ程興味を逸らして平和を享受出来たなんて、その時の私は知る由が無かったんだから仕方ない。


 しっかり興味をひいて、でも不倖中の倖いで獲物では無く仲間になりました。倖いか?微妙な話だが。

 けど、まあ。


 私にとっても、私に全くヨロメカナイ相手は貴重だ。性格と云うか性質が悪いから、完全に油断は出来ないが、二人は気のおけない友人となった。

 因みに……魔王は傍に居るのが気が引けるくらい美貌の持ち主で、サディストは一見地味だがやたら端整な造作をした美形である。前世でこの美貌があれば、どんな難敵も陥落せしめただろう………いや、過ぎた美貌は面倒のもとか。大体あんまり大物狙うのも、面倒呼ぶしな。下手に執着されて諦め悪く追われ続けても仕事に支障があるな。こんな美貌あったら高望みしちゃいそうだし、あれくらいで丁度良かった。うん。


 納得していると魔王は折り畳み式の碁盤を広げた。プロ棋士と云えばかなり日々が囲碁漬けだろうに、まだやるのか……と云える程、魔王の普段なんか知らないけど思った。サディストは僅かに眉を寄せた。


「相手をする気は無いぞ。」


 しかしあれだな。拒否を示すって事は、逆に考えれば囲碁打てるんだな。サディストは校内でこそ余り知られてないが、街では結構な有名人だ。不良として。不良と囲碁って……似合わんなあ。別に良いけど。私はマッタリお茶を飲んでいた。


「君はルール知ってる?」

「………。まあ。」


 うっかり沈黙しちゃったのが敗因やね。詐欺師にあるまじき失態である。恥ずかしい。中学生相手なら、それくらい誤魔化すの余裕な筈だが……魔王を単なる中学生とは私にも云えないよ。


 つまるところ。

 敗因1が怯えるべきところを落ち着いた態度を見せたこと。

 敗因2が囲碁なのである。


「強いね。」

「君に云われてもね。」


 私は肩を竦めた。当たり前だがアッサリ敗けた。魔王は棋界では天才の呼び名が高い。アマチュアどころかトッププロ相手にさえ早々敗けない人だ。つうか魔王はともかく、君までどうしてそんなに興味深そうなのかね?意味不明だが、サディストとも打つ事になった。勝った。僅差で……。魔王はプロだから仕方ないが、しかもトップ棋士だから敗けるの当たり前だが、高校生相手に僅差って……私は弱くなったんだろうか?それともこの子が特別なのか?サディストが囲碁三昧してるとことか、想像出来ないんだけど。


 地味にショックだったが、サディストも同様だったらしい。そりゃそうだよね。高校生でこれだけ打てたら敵無しだよね………不良くんが何処で打つ場面があるのかは不明だけど。やっぱ魔王との付き合い上で身に付けたスキルなのだろうか?そんな風に思ったが、何の事はない。私と似たり寄ったりの理由だった。身内の碁好きに仕込まれたらしい。ああねえ……新密度と影響力によるが、囲碁漬けレベルの生活をさせる事が、保護者には可能だよね。そんな生活に慣れたら、囲碁に関わらなくなっても無意識に頭の中の碁盤に石を並べてたりする様になるよね。サディストの癖に脳内に碁盤が有ると思うと、何だか可愛らしいね。



 そんな風に、和んだのが・・・・つまりは敗因3なのであろう。


 サディストも魔王も、結局は子供である。人生二度目の私にとっては、としか云い様がないほどに特殊な子供だが、子供には違いない。

 そして、可愛いなどと思われる事に慣れていない子供だった。


 うん。思ったわ。可愛いと思ったわ。そんな感情を向けられて照れる姿もまた可愛らしいわ。


 結果どうなったか。


 懐かれた。



 魔王はまあ良いがな。魔王はな。結局は囲碁やってる時点で、社交界から足抜けしてるもんな。

 問題はサディストである。


 こいつは。

 おもいっきり頂点に程近い場所に存在する。


 こいつの主人が兄から弟に変わるとしても。


 こいつの立場は強固になりこそすれ、弱くなる事は無いだろう。



 サディストの主人はカリスマ溢れる男である。そいつは、財界の頂点に立つより欲しいモノがあるらしい。その右腕になるべく育てられたサディストは、しかしその男の弟に執着されている。

 我が家の情報網は天網宛らに張り巡らされているのだ。


 次なる財界トップの名前が、誰になるのか。現時点ではまだ不明である。だが。


 私の見たところ、兄弟の力量にそこまで差異は無い。人間性、と云うか、兄のカリスマ性故に、兄の評価は天井知らずで弟はその影に隠れているのが実際のところだろう。

 兄の恋が叶うなら弟が。叶わなければ・・・冷徹なまでの、けれど有能な男が頂点に立つのだろう。そして、サディストはどちらにしても右腕としてその隣に立つことになる。


 考えるだに面倒臭い。


 先にも述べたが、我が家の家訓は周囲に埋没して生きる事を目的としたモノである。中庸を以て良しとする。大勢に寄り添い、日和見に生きてきた生活を至上としているのだ。

 有力者には関わらない。敵も味方も曖昧に、地味に生き延びるのが我が一族の家訓なのである。つまりは一族総じて事勿れ主義の日和見なのだが、私は物凄く共感している。


 ぶっちゃけ家の事はどうでも良いが、私は私自身が平和に暮らしたいのである。ひっそりとな。

 それを思えば、サディストとは関わりたくない。多分、それは成功を意味するんだろうけどさ。

 私の本音は楽して平穏人生じゃない?


 チヤホヤされるのは嫌いじゃ無いが、目立ち過ぎるのも余計な怨みを買うのもゴメンだ。それなりに適当に仕事して、うっすら上流階級の片隅に生息して、誰からも顧みられない地味な立ち位置でコッソリハーレム生活したいんだよね。


 うん。男同士のエッチは鳥肌もんだが、よく考えたら男同士の深い友情ってホモ臭いって昔考えてたし。肉体関係さえなければ平気じゃね?とは思う。

 元々、肉弾戦より精神攻撃を得手としている。触れさせずに心を煽るのはお手の物だった。


 私には傍に居る相手を陥落させずにおれない習性がある、それは魔王やサディストに対してさえ発揮されていたんだと思う。そんで・・・・つまりは、恋には堕ちないまでも、それなりに効いたんじゃね?これってそう云う事なんじゃ無いの?

 

 

 

 

 我に返って思い至ったが。



 もう遅いよね。


 うん。知ってた。



☆☆☆

 

 

 

 

 

 




お友達が出来ました。

 

サディストと魔王。頑なに名前を書かずに進めているが、いつまで続けられるでせうか。

 

 

 

 


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