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恋ってつまり、どういうものなのさ

☆☆☆


 何か色々云いたいけど……何気に人生が終わっている。どう終わってるか?

 何かもはや最近では妄想かも知れないと思ったりするけど、私には前世があってだね。美女だった。頭に「それなり」がつくけど。ついでに、ちょっと犯罪者だったけど……一応頑張って生きてたよ。

 なんて誰にも云えない話を心で呟く私は確かに終わっているが、別に誰にも知られなきゃ良いじゃんとは思う。私は現在男だから、ちょっと変態じみてるしな。云えねえよな。信じる信じない以前にさ…これを妄想だと思われたら、ある種の願望だと判断されるだろう。それってつまりオカマ?とか思われたら泣ける。色々終わってるのは、まあそういうとこなんだよね。


 溜め息しか出てこないが、遠くを眺める私はそれなりに整った外見してる所為か地味にモテる。あくまでソレナリなので、モテモテとは云えない。しかも、貢いでくれる程の執着はされてない。モテるイコールで貢ぐとか連想しちゃうのは、前世が結婚詐欺師だった弊害かも知れない。しかし結婚詐欺師だったとは思えない体たらくである。いや、別に今回は犯罪者にならなくても生きていけそうだし、構わないんだけどもさ。つうか、前世が美女つっても完璧に化粧マジックだったから、素っぴんは実のところ十人並みだった。寧ろ特徴に欠けてはいるが、左右対称の黄金率が唯一の取り柄な感じで、それ故に完璧に美女に化けれたって云うね。下手に個性的だと化粧だけでは難しかっただろう。因みに、美女に完璧に化けれたって話であり、完璧な美女に化けれたって訳では無い。そこ大事。テストに出るよってくらい大きく異なります。


 つまりは「まあまあ」の美女に化けたって事だあね。でも実際よりは上等の部類の美女に思われていただろう。仕種とか、話し方とか、要は演出に助けられてね。

 しかし現在の私はソレナリに整った顔をした平凡な少年である。端的に云えば十人並みだ。うん。前世と違わないね。性別以外はな。

 性別違うからソレナリにしかなれないのかと云えば、そうでも無い。割と無意識な部分もあるが、異性に魅力振り撒くのは習性に近いし、女が男を惹き付けるのを頑張ってたら同性の視線にも敏感にならざるを得なかった訳で、男に生まれた現在も結構な努力を払っている。


 つまりは……今回の私は平凡以下の外見をまあまあカッコイイと云えない事も無いって辺りまで引き上げてるんだな。これがまた……「しかし、これ何の意味が?」と我にかえること屡々である。


 いや、前世も仕事柄、本気で誰かを好きになった事は無いんだが。しかも私のターゲットってブサ系の中流層男性だったし。不細工でも金持ちだとソレナリに経験あるから、完全に陥落させるのは色々面倒くさいからね。中流層でブサ系……あくまでもブサ『系』ね?十人並みからそのちょい下、またはソコラのレベルだと勘違い出来る程度には激しく無い不細工。もちろん熱烈には行かない。傍に居るとホッとするとか何とか。そんな言葉で紛い物の信頼と良くできたレプリカの淡い好意を重ねあげる。


 真面目で誠実な人だと信じて貰えば、実際はそうでなくてもその様に振る舞おうとするもんだ。しかも「イヤらしい目で見るような男と違う」と信頼されれば、結婚前は清い交際が当たり前ってところに持っていくのは難しくは無い。基本的に男って妻にする女は自分しか知らない処女を望むしな。


 メインターゲットはあくまでもブサ系だが、たまにはイケメン相手の時もあった。イケメンだからこそ、簡単に手折る事が出来ない女に夢中になる事もある。しかしイケメンはやはり面倒くさい。つうか、仕事に徹するならやはりブサ系が良いよね。とか考える辺り、私は恋愛にうつつを抜かした事は無い。


 そんな私も現在は詐欺なんぞしなくても生きていける訳で、なら恋愛のひとつやふたつ……といきたいところだが。


 如何せん現在の私は男である。何の罰だよ……。確かに犯罪者だったが。

 そりゃあ世の中には同性と恋愛する人間もいるからね、やろうと思えば出来ない話では無いのだろうが………生理的に無理だ。男同士とか気持ち悪い。私は女だが、中身が女でも肉体は男なんだし、それで惚れられても普通に引くわ。だからって女の子相手にもたたな……じゃなく、恋愛感情なんか持てないのだ。男に生まれて男同士で猥談とかもして、AVとかも観たりしたが………無理だ。出来ないとは云わないけど、仕事でも無いのに何で態々好きでも無い相手と付き合うかってのよ。


 女の子は好きになれない。女の子に向ける好意は、私にとっては友情とか親愛にしかならん。じゃあ男はって話だが、前述した通り、多少よろめいても自分も男だからどうしようも無いし、万一好かれても迷惑だし気持ち悪いだけだ。

 第一アレだよ。男同士ってヤル事がエゲツナイだろう。別に差別はしないが自分でするのはナイ。無理だ。


 じゃあ何かい?私は一生清らかに生きていくのか?


 そうなるよな。


 成人しても?三十過ぎても?丸童のまま?清らかさん?


 無いわあ。それはそれでキモいわあ。

 自分で自分に鳥肌。しかしそんなトリハダモンの未来が半確定。いやだ………。


 うう。一回くらいは女の子と付き合うかな。童貞で成人、下手したら童貞の中年……泣けるし。


 もともと前世の私も経験豊富とは云い難い。処女でこそ無かったが、私の手口は清らかさんを演じてこそだったし。故に、そうそう経験は増えなかった。ある意味結構な初心者だ。それが恋愛って意味なら完璧に初心者だ。結婚詐欺師が何を云うかって話だが、感情面では幼稚園児のレベルと云って良いくらいの経験則しか無い。と云うか、寧ろ経験則なんか無い。


 そんな私が初めて自分を縛る枷をなくして、周囲を見渡せば。

 男に生まれ変わってた……と云うね。


 そして女の子に恋愛感情は持てない。また、男相手だと同性だからブレーキがかかるし、況してや多少の性知識が完璧に邪魔をして忌避感すら募る。


 もう完全に終わっていると思っても仕方ないだろう。



 そりゃあ、恋愛が全てとは云わないし、視野を広く持って、生き甲斐とか見付ければ良いのかもって思う。思うけどさ…………やっぱり、この現状を「無い」よなあ、と嘆いてしまうのだ。


 誰かに夢中になりたいとか、それってそんなに大それた望みなのかね。経験が無さすぎて全くわからない。

 淡い恋心すら、私の記憶の中では曖昧で、前世が女で現在は男だって事もあり………どちらに惹かれるにも拒否反応があるし、どちらに対しても、何か異性に対する感覚が抜けなくて友情育むのにも微妙な遠慮って云うか……警戒?が滲むのだ。いや、異性の友人はアリだけどね。異性だと友人でも二人きりの部屋で過ごしたり、旅行したりは避けるでしょ?それが同性だから一応避けるべき事では無いのに感覚的には異性だから、こう……もやもやするって云うかさあ。

 苛々するんだよね。その苛々は友情育むのにも、ぶっちゃけ邪魔するよね。弊害だよね。障害物が私の内面にある訳だが、こう………多分結婚詐欺師だった前世では恋愛感情なんかそれこそ仕事の邪魔でしか無かったから、無意識のセーブ癖もあるような気がする。


 色々と、前途多難と云うか、難しか無いと云うか………面倒くさくなって、もう出家しようかと考える。………いや、出家は無いな。私には神や仏に仕える気持ちは一切無い。気の迷いだった。


 でも、無意識に周囲の好感度を上げつつ………それが結婚詐欺師の過去の習性だからちょいちょい誑し込みに入りそうになりつつ、相手の女の子に恋愛感情が生まれつつあると気付けば。

 我にかえって潰しに入る。莫迦だろう私……。


 普通の生活、結構な苦痛です。


 友達とか、何のこだわりも無く作ってみたかったけど、色々難しいし。もう嫌だ。疲れたし。


 やっぱり出家しようかな………。



 この世には神も仏もあったもんじゃ無い……と、そんな風に思いながらも。

 ふらふらと宗教に逃避したくなる今日この頃。



 いやいや。

 今はアレダヨ。年齢的にも、性に興味が出てくるって云うか、夢中になっちゃう時期って云うか………きっと、大人になれば多少はマシになる筈だ。

 周囲を見渡せば恋だの愛だの気恥ずかしいくらいに、キラキラギラギラ熱い人たちが沢山居てね。………自分探しの旅とか、そう云う逃避行動に出たい気持ちって、こんな感じかなあ………とか。


 そんな風に思った。




 やっぱり私の人生終わっている。



 何度考えても、同じような答えしか出なくて、私はそっと溜め息を吐いた。



☆☆☆





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