不眠城
その街は眠らない
昼は陽の光を浴びて
壁面に照り返す
黙々と 清々と
鳥の鳴く声一つと聞こえず
猫の歩く影もない
やがて陽は入り夕暮れに染まる
一様に 一面に
夜は街の明かりが照らす
虫の一匹も飛ぶ姿はなく
影一つ作るものもない
黙々と 煌々と
生温い風だけがある
時計は刻々と時を刻む
黙々と 淡々と
明滅する電灯がある
取り替えられることもなく
黙々と 点々と
やがてしめやかに雨が降る
黙々と 蕭々と
そうして雫が止む頃に
日付の変わり目を時計が告げる
誰も聞くものはなく
音は空虚に大きく響く
そうして東が白み始め
陽と電灯は切り替わる
光の絶えることはなく
その街は眠らない
そこに誰もいなくとも