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五百文字の小説

連れて行く

作者: 銭屋龍一

 親友が死に逝こうとしている。

 僕は防波堤の上に立ち寄せては返す波を見ている。

 遠く沖合いには船出を待つ何隻もの船がある。


「なあ。俺は若くして死んでしまうことが悔しくて仕方がなかった。まだやりたいことも山ほどある。だがな、こう思うことにした。俺はおまえたちの不幸をみんな貰っていく。そうさせてくれないか。それなら俺は胸を張って向こうに行ける。怖くてもそれを乗り越えられる。だからおまえの不幸を俺にくれ」

 その言葉を僕に言った数時間後に親友は意識をなくした。


 ふたりでよく釣りをした。

 海を眺めながら夢を語り合った。

 歳を取ったらふたりで毎日釣りをしようぜ、というのが親友の口癖だった。


 僕はポケットに手を入れる。

 そこには十数年飲みつづけている薬のケースがある。

 この病が消えることと親友が消えることを引き換えになどできるはずがない。


 水面がぐいと盛り上がった。

 大きな波がくるのだろう。

 僕の心の中にもやるせない思いが膨れあがる。

 奇蹟よ、今こそくるのだ。

 僕はこみ上げてくる熱いものを必死にこらえるために、唇を強く噛んだ。

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