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神様は人間を救いたかった

神様は人間を救いたかった。

だから世界へと手を伸ばした。

しかしその度に人間の中から邪魔者が現れた。

神様の秩序、人々の理想、希望、願い、そんなものを壊す邪悪な心を持った者がいた。


神様は困惑した。

人間は救われることを望んでいないのかって 。

でも、神様は 人間を救ってあげたかった。


だから 先に邪魔者を見つけ出して、殺す事にした

しかし彼らは何度だって立ち上がり抵抗してきた。

そして神様は知った。

彼らを本当に殺せるのは彼ら自身だったことを。



だから神様は彼らを更生した。

自分達の邪魔者にならないように

神に対抗しうる力を人々の為に使うように教えた。


神様は人間の可能性を信じていたからこそ彼らの力を恐れつつも彼らの善意を信じていた。





「それが・・・俺か?」

「はい、貴方はかつて神に抗いそして更生された。殺戮の勝利という者を殺してきたのは他の者でもない。貴方自身なんですよ」

あの後濡れた服を着替え、重要な話があると姉さんと二人きりになり、神様がどうのこうのという言う話を聞いた。

俺はあぐら、姉さんは座布団に正座と引き締まった様子だ。

かつて神に抗い、俺自身の過去に決着をつけた。あの戦いはそういうものでもあった。

「しかし・・・更生?そんなもの記憶にないのだが・・・」

「神様にも色々といますからね。私みたいに手助けをする者もいればただ見守るだけのもいます。きっとその方は覚えてほしくなかったのでしょう」

まるで誰かと知っているような口ぶりだが聞くのも野暮だと思い、口にするのをやめた。聞いたところで何かが変わるわけでもないからな。

「姉さん、一応聞いておくけど聞かれてていいのか?」

俺は出入り口のふすまを目にやる。桃花とイリナが少しだけ隙間を空けてこちらの様子を伺っているのが見えたからだ。

「そうですね、別にいいでしょう。邪魔をしているわけではないので」

重要な話と言っても秘密というわけではないようだ。

「さて、これからの事を話しましょう。貴方の希望はこの世界のやり直し・・・でしたね」

「ああ、俺はあいつらを死なせたままにはできない・・・というかそうしたい」

死んだ人間はたとえ生き返ったりしても一度死んだと言う事実は変えようがない。しかし死ぬ前なら変えることができる。その為の力を姉さんは持ってるはずだ。

「死なせたまま・・・ですか。確かにかの者たちの心身はもうこの世にはない。しかし魂までは今も存在している。・・・貴方が一番よく分かってるはずですよ?」

「姉さん・・・?俺は霊媒師とかじゃないんだ。魂のある場所なんて・・・

「おや?自分でやっておきながら気づいていないのですか?どこまでも罪作りな人ですね」

自分の手であいつらの魂をどうにかしたって?魂・・・か、

この左腕の使い方は何というか直感で分かった。この腕は略奪。全てを奪い去る魔業の手。しかしこの手で喰らったのは黒崎だ。あいつらじゃない。

しかし姉さんは黒崎以外の事を指してる。つまりこれは・・・

「この腕で俺は黒崎の事を喰らった。けど・・・黒崎だけだったわけじゃあない。あいつの復活した時のあの攻撃、あれが俺と同じ能力だとするなら・・・」

認めたくないがあれもまた自分のあったかもしれない世界。この世界とはまた違う俺自身なのだろう。

「答えは・・・出たようですね。

思った通り貴方と黒崎の能力はほぼ同系統の技。かの者は貴方が道を誤り、その力で世界を壊そうとした存在。いわば邪悪なる者ですね」

「皮肉なもんだな・・・。自分自身との戦いとは本当に嫌なもんだな。なんていうか・・・本能でここにいてはいけないような感じがして、さっさと失せて欲しいというか・・・

「その思いはドッペルゲンガーに近い者ですね。自分がそこにいるわけがない。いてはいけない。そういう倫理観を乗り越え、覚醒した者こそがWDなのです」

「しかし・・・

姉さんが俺の左腕を取り心配そうに見つめる。

「この力に目覚めた者はそう長く生きられないでしょう」

「なっ!?」

衝撃の事実だった。この腕のせいで生きられない?

「落ち着いて聞いてください。この腕によって貴方は黒崎と共に八神さん、本田さん、彼らの魂を奪っていきました。そして彼も・・・。この腕はなにかを喰らっていなければ持ち主すらも喰らう呪われた力なんですよ」

「何ですか!その話!私聞いてないですよ!?」

あまりの衝撃に俺は肩をびびらせ、障子から入ってきたイリナと桃花の方へ目をやる。

「落ち着きなさい。イリナ、その対処法も今から話すところです」

イリナは苛立ちつつもその場に居座り、話を聞く態勢だ。桃花も恐る恐るその隣に座った。

「呪われた力か、この左腕も右腕と同じ運命にでもするつもりか?」

「そんな事をしてみれば、貴方は一生苦しみ続けますよ?死に地獄をね・・・」

つまり腕の除去程度でどうにかなる問題ではないと言いたいのだろう。わざわざ生き地獄と言わないのだから。

「その腕は今や貴方の一部なんですから、それだけを取り除くのは不可能です」

「「そんな」」

「そうか・・・で、俺はどうすればいいんだ?」

二人は悲観的になっているが俺は平静を保つ。恐怖のあまりむしろ冷静でいられるような感じだ。死ぬ前の走馬灯・・・とは少し違う気もするが、余命を申告された患者の様な気分だ。

「勝利君!?どーして落ち着いてるの?」

「焦ってもどうしようもないから・・・かな。俺だって内心怖いんだよ、だからこそこれからの事を落ち着いて聞きたいんだ」

「勝利さん、勝利さん、本当に落ち着いてますか〜」

「これが落ち着いていない様に見え・・・

そう言い終える前にイリナが顔を近づけてきた。キスの態勢に入るイリナを俺は左手で突き飛ばす。

「いきなり何をする!?イリナ!」

「うぅ、勝利さんに突き放されました・・もうお嫁に行けません・・・」

「貰う気もねーよ!だいたいお前はこんな状況でよくこんな真似ができたもんだな!人が真剣に考えているのに・・・

「まぁまぁ落ち着いて落ち着いて・・・

「お前が言うな!・・・はぁ、バカバカしくなってきた。姉さん続きを・・・

続きを催促したのだが姉さんが笑っていた。こんな状況で笑うのか?いや笑わされたという状況か。

「全く、こういう状況にもってかれるから追い出したというのに・・・ふふ・・ ・」

苦笑を浮かべその場から席を外した。真面目な話をする気が無くなったのだろう。





「お前のせいで真面目な雰囲気がぶち壊しだよ」

「いやいやそれほどでも」

「褒めてないから。あー、もうこんなこと全部夢ならいいんだがな」

「夢?」

「そ、朝桃花が起こしてくれて、姉さんが作ってくれた朝食でも食って誠治や正喝達と馬鹿騒ぎしてそうやってまぁ普通に暮らしてる方が現実なら何と楽しいことか・・・

「ほぅ、つまり奉仕されてそれを食べ、そしてドンパチするのが好きだということですね」

「一部が少し違うが、まぁそんなところだ」

それこそが俺の望む本当の世界なのかもしれない。命のやり取りなんてない平和な世界。優しい世界、そんなものを望んでいる。

「奉仕を食べる?それってどういう事?」

「あー、知らなくていいぞ。うん」

桃花の問いに却下という形で答える。というか既にしているだろ・・・

「こうやって馬鹿みたいに話しているのが好きになってるよ・・・」

「そーですよ、そのくらいのテンションが一番落ち着いているんですよ。勝利さんは」

「・・・そこまで考えてあんな事をしたのか?・・・いや、ないな」

「あっ、ひどい!私はただの重苦しい雰囲気をぶち壊そうと・・・

「あー分かった分かった。そういう事にしとくからね、少し黙ろうか」

そう言い放ち左腕の能力、略奪を発動させる。

「ひぃ!?まさかその腕で私の純潔を奪う気では?いや、でもこれもまた運命なら・・・んぐぐ・・・

口を塞ぎ、眠らせる程度に体の力を抜いた。

「か・・・勝利君?」

「安心しろ、ちょっと眠ってもらっただけだ」

その言葉を聞きホッとしたのか軽く溜息をつく。

「こいつと喋ってるとどうもリズムを崩される。正直苦手だな。嫌いではないけど」

「うん、そうだね。振り回されてこっちが疲れちゃうね」

二人で何もないのに笑ってしまう。こいつは最高のシリアスキラーだ。

真面目に考えるのをぶち壊す奴だ。





「さて、お茶にでもしながら話しましょうか」

場所を洋間に変え、テーブルの上に茶を三人分用意し更に甘味のビスケットやチョコレート等を用意された。

「今の勝利の状態を分かりやすいよう板チョコで例えましょう」

3×4で区切られた板チョコを用意され、そこからひとつだけカケラを取る。

「このひとかけらが普通の人の状態。私や桃花ちゃんがこれだと考えてください。そして、勝利は板チョコの全てです」

カケラひとつひとつが一人なら俺はそのカケラを合わせた一つの板ってことか。

「しかしこの板チョコのひとかけらだけ猛毒が仕込まれていたとしたら、どうします?」

「食わない」

「毒の部分だけを分けて食べる・・・かな」

「ふむ、どちらも選択肢の一つですね。食わなければチョコの存在意義を果たせず腐って捨てられる。分けて食べるというのもいい。しかし人はそうはいかない。ましてや魂を簡単に分けて食べるなどはできません」

「ならどうやって・・・」

「簡単に分けられない・・・とは言いましたが、出来ないとは言いません。貴方をこの板チョコのカケラの集まりから・・・

素早い手捌きで板チョコをカケラだけにしていく。そして一つを手に持つ。

「この状態にし新たな人生を歩んでもらいます」

「?つまりそれは転生・・・ってことか?」

「そうですね。肉体は本来ただの器にしか過ぎない。私はしようと思えば老婆にでも龍にでも姿を変えることができます」

そんな能力をいまさら言われてもねぇ・・・などと呆れつつも茶を飲む。

「けどそれは根本的に解決してるのか?結局俺が死ぬって事に変わりはないじゃないか」

「では選びなさい。このまま腐り食べなれなくなるか、溶かされ新しいチョコとして生まれ変わるか?」

人の命とチョコを同列に並べるのか・・・けどこのまま腐るのはあいつらにすら顔向けできない。

「生まれ変わる・・・か、どうせなら最高級のチョコレートになってあいつらにたらふく食わせてやりてえな、嫌になるくらいな」

「「ぷっ・・・あっははっは・・・」」

「俺は真面目に言ったんだぞ?」

「真面目にそんな話しないでください。・・・笑うじゃないですか・・・」

「今のは勝利君の渾身のギャグかな?でも自分で最高級ってwww」

「ああもう、いいから俺はチョコになるんだよ」

「チョコの話はもうやめてください・・・。はぁ、では転生の道を行き成長後に彼らを死から救う・・・ということでよろしいですか?」

「ああ、というかそれしかないんだろう?手があるだけマシさ」

「では準備の為に三日、三日準備します。それまで余暇を楽しんでください」


人はどうしようもなく絶望した時に手を伸ばす。唯一手に入れたものが希望だと分かっていなくともそれにすがるしか方法はないのだ。希望のカケラを希望にする者。彼はそのままでいい。

次回最終回です

まぁ大晦日の三日間なんて大掃除で消えるので描写する気もないし本当転生するだけっすよ

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