昨晩はお楽しみでしたね
「おはようございます勝利。昨晩はお楽しみでしたね」
「えっ?何何?何を楽しんでたの?」
姉さんの意図を読めずにイリナが右往左往する。一応時間をずらして部屋を出たが一緒に寝ていたことは姉さんにはバレバレだった様だ。まあ隠す様なことではないが気まずいのもある。
恋人同士で寝ていたって事はつまりはそういうことだ。だがこれに関してはまたも主導権を握れなかった。ブレイブ修得の時もそうだ、衰弱死しかけるまで攻勢をかけられてあの時は本当に死ぬかと思った。
「イリナは知らなくていいぞ?俺がサタデーナイトフィーバーしかけたことはな」
「サタデーナイトフィーバー?・・・つまりは夜の街へ繰り出して踊って楽しんでいたと!?」
「・・・まぁそんなところだ」
ここに大馬鹿と大嘘吐きが誕生した。変に誤魔化すよりはこう言ってしまった方が楽だしな。
てかサタデーナイトフィーバーしていたってなんだよ。言ってる俺も少しおかしいんじゃ無いかと思えてきた。
確か最後は止まるとか止まらないとか揉めていた様な・・・
そんなことを考え出す前に朝風呂から出た桃花が戻ってきた。今度はちゃんと着替えている。
「おはよ、みんな」
「おはようございます桃花ちゃん。・・・いえ、もう何も言いません」
姉さんは呆れてものも言えないような態度だった。桃花はモノが分かっていないようで首をかしげる。そこに俺が耳元で事情を説明してやると赤面しだした。
「え?えええ!?一体何がどうしたというのですか?」
イリナが更に困惑している。普段の言動から演技なのか・・・という考えはなく素で分かってないようだった。
「イリナ、世の中には知らない方がいいこともあるんだ」
「知らない方が良いこと?例えば・・・いわゆるキスマーク。あれは実は体内の内出血を引き起こす原因となるとかですか?」
「マジかよ、知らなかったな。まぁ二割くらいは当たってるかな・・・」
イリナのどうでもいい知識に苦笑する。俺の意識の中じゃあ、つい一昨日までは激戦していたというのにまるで遠い日の夢のようにも思えてきた。
「それともう一つ、お医者さんが使う聴診器。あれは巨乳の人の心臓の音を聞くために開発されたとか。まぁお二人には関係ない話ですけどねwww」
「くっ」
「むぅ、大きさじゃあ価値は決まらないんだよ」
イリナが二人に対してセクハラ攻撃を繰り出す。確かにイリナの胸はそれなりにでかい。少なくとも二人とは比べ物にならない。だが、
「そうだな。大きければいいというものじゃない」
「おや、ということは勝利さんはロリコン何ですか?」
「どーしてそうなる・・・違・・・違うのか?」
違うと断言したいはずだが俺の中の何が言い淀む。桃花はどちらかといえばかわいい系の方だ。背もちっこいしもしかしたら俺はそういう部類の人間に知らず知らずのうちになっていたのかもしれない。
「おやおや〜?否定しないということは本当にそうなんですか〜」
伝家の宝刀を切り出す時がまた来たようだな。
「イリナさん。はっきり言いましょう、俺は断じてロリコンなどではありません。なぜならロリコンとはそもそも13歳以下に興奮を覚える人種だ。俺はそんなこと今まで一切ない!
つまり俺は精神的にセーフだということだ。何の問題もないしこれからもそうあり続けたいと思っている、うん」
「おや?精神的にセーフだと本当に言い切れるのですか?本当のことを知らないくせに・・・」
突如姉さんが会話に入ってくる。本当のことを知らないのはイリナのはず・・・
「どういうことだ?」
「そうですね・・・ストレートに言ってもつまらないので順を追って説明しましょう」
姉さんがテーブルに紙を置きその上に大きな丸を書いていく。
「まずこの大きな丸が私、そしてそこから小さな丸を一つ出します。これを桃花ちゃんとします」
これは桃花が姉さんから生まれた存在ということだ。次に別の紙に小さな丸を八つ書きその中心に同じ大きさの丸を書く。
八つから一つのものに矢印を指し黒に染めていく。
「そしてこの丸が貴方です。八つの丸は前世界で散ったもの達の魂、その結集が今の貴方です」
その話は前にも聞かされた。事実戦争中にも助けられた。名も知らないが存在だけは分かる。記憶は無くとも魂は消えちゃいないってことか?
「では、ここでクイズです。この散らばった魂達を束ねたのは誰でしょう」
「そりゃあ・・・姉さんだろ、普通に考えて」
「簡単すぎましたかね?そうです、貴方を生み出したのはこの私天本優佳里です。つまり私は貴方の姉であり母でもあるんですよ?」
「うわぁ、姉が母さんとか言っちゃたよこの人。そーゆーのは妄想の中だけにした方がいいよ?ゆかりん」
「と、ゆうことで今なら私を母として甘えてもいいのですよ?」
「・・・嫌です、絶対に嫌です」
「言いなさい」
「嫌です」
「言った方がいーと思いますよ?勝利さん」
「嫌です」
「言わないで」
「いやで・・・ハッ・・・」
勢いあまって言いそうになったがなんとか堪える。しかし先手を取られた。
「いやではないのですね。では言いなさい」
俺は観念し一つ溜息をつき覚悟を決める。いやいうだけならタダなのだが。
「優佳里・・・母さん・・・」
「聞きました?ゆかりん、今の録音しておきました」
「おや、いい心がけですね、ではいい値で買いま・・・
「待ってくれ、消せ!いや、消してください!」
あまりのことに頭も体も動揺し、つい言葉使いも変わる。ああやっぱりこういうことになるのか。
「まあ録音は嘘ですよ。でも今の勝利さんはレアでしたねぇ〜、今のもっかい」
「・・・無理です」
「嫌です」ではまた二の舞になるので速攻否定した。さっきもこうしておけば良かったのだが頭が回らなかった。
「勝利君、大丈夫、私はこんなことで嫌いにならないよ?」
桃花、それあんまりフォローになってないんだよ。しかしフォローする気があるだけでもありがたい。
「まぁ私も貴方を子扱いするのは不本意です。今まで通り姉さんと呼んでください」
さっきのはただのからかい。本気ではなかったようだ。しかし姉さんが母さんか、何を言ってるんだと疑問もたくさん残る。それでも姉さんは姉さんだ。俺の中では何も変わらない。
「話が脱線しましたね、貴方も桃花ちゃんも私を起点に生まれた存在、つまりは魂の兄妹なのです」
魂の兄妹・・・か。俺が妹みたいだって言っていたのは間違いではなかったんだな・・・。ん?ってことは俺がやっていたことってきんしn・・・ああああぁぁぁ!
「勝利さん!?・・・何やってるんですか?いきなり庭の池に飛び込むなんて・・・」
「勝利・・・君?いきなりどうしちゃったんだろ?」
しばらく池に顔をつけこれまでの行動を反省する。知らなかったとはいえ割とガチな方面で過ちを犯していた俺は軽い自己嫌悪に陥る。しかし桃花はそんなこと気にしてないかのように振舞っている。俺だけが過剰に反応しているのかと少し落ち着きを取り戻し呼吸を整え部屋へと戻った。




