推理という名の開戦
先日、王と会った部屋を訪ねると、既に王の姿はなく、そこには静けさしかなかった。俺達は優佳里姉の知らせを聞き、食事もとらずにそこに向かった。
「こいつは・・・」
血の匂いがプンプンする。これは俺でもキツイ。兵士達も息を飲んでいる。俺の後から優佳里姉、桃花も来た。
「状況は?」
「はっ、はい!我々はいつも警備をしていたところ、急に王が血を噴き出し、・・・
「急に?」
「はい。」
よく見るとガラスの割れた跡がある。あそこから何かをされたと考えるのが妥当だろう。
「・・・どうやら犯人は絞れたようですね」
そう言うと優佳里姉は椅子から何かを取り出してきた。それは血で濡れた銃弾だった。
「これは・・・」
「勝利、我々天使は銃を使いません。これがどういうことだか分かりますよね?」
「まさか誠治を疑ってるのか!?」
「私だってそうは思いたくありません・・・。しかしこの状況で彼以外に誰がいるのですか?」
「それは・・・」
反論の余地がなかった。この状況で誠治を疑うのも分かる。
「そんなことない!」
「桃花っ! ?」
それに反対したのは桃花だった。
「どうして誠治君を信じてあげないの!?一緒に・・・一緒に旅をしてきた仲間なんだよ!」
「では姫様、誰がこの惨事を起こしたのですか?」
姫様と呼ぶ、それはこの惨事がそれほどのものだと示すには十分だった。
「それは・・・」
だが俺同様誠治がやっていないという確証は出せなかった。
「とにかく八神さんを探さないといけませんね。勝利、彼に連絡を」
「っ・・・」
俺は声にならない舌打ちをしつつ、携帯を出し誠治に電話をする。だが誠治は出なかった。
「これでますます誠治さんが怪しくなりましたね」
「優佳里姉・・・本気なのか?」
「ええ、彼が犯人という確証が出来次第、即刻始末します」
本気だ、優佳里姉は。しかし俺には誠治を斬る覚悟はできなかった。そんな時だった。
「優佳里さん。誠治を発見したという情報が来ました!」
月村が真剣な顔で来た。きていた執事服は薄汚れていて必死に探していたことが分かった。
「場所は?」
「それが、
月村がいい終える前にそれは来た。まず聞こえたのは壁の亀裂音。キリキリという音が響き壁はすぐに破壊され人が一人吹っ飛んでいく。それに兵士たちも巻き込まれた。
「ッ!誠治!?」
それはブレイブ状態の誠治だった。
「ったくいきなり仕掛けてきてその程度かよ」
次に現れたのはキラさんだ。続いて正喝も息を散らしつつ来た。
「勝利か?コイツは裏切りもんさ、いきなり撃ってきやがったんだからな」
裏切り者、その響きが俺には理解したくなかった。ただ誠治が俺たちに敵対する意思を持ってることは明らかだった。
「フェンリル!サラマンダー!行きなさい!」
優佳里姉も誠治に攻撃を仕掛ける。二体の容赦ない牙が誠治に襲いかかる。
しかし誠治は造作もなく迎撃に移る。
その隙をついて正喝が槍での突きを入れる。
誠治は左手に持っていたライフルを犠牲にし、右手のライフルを正喝の腹部分を狙って撃ってきた。
「チッ」
正喝はギリギリのところで避けた。しかしその先には桃花がいる。
「桃花っ!」
「わっ」
俺のシールドは間に合い、銃弾を弾いた。今の誠治は正喝もろとも桃花を撃ち抜いたようにも見えた。
正喝は一旦下り、反撃の隙をうかがった。
「利、姫様は大丈夫か?」
「ああ、そっちは?」
「擦り傷程度だ、問題ない」
「皆さん引き続き攻撃を、勝利は姫様の護衛を」
それは俺が戦力として見られていない・・・ということだろう。現状数の有利はこちらにある。俺が抜けても問題はない。
前衛にキラさん、月村、正喝の三人、後方には優佳里姉がいる。これなら・・・
「遅いよ」
見えなかった。誠治は恐るべき速度で俺の前に現れ、接射を仕掛けてきた。俺の抜刀は間に合わず、当たった。
「くっ」
「利!」
正喝は咄嗟に誠治に向けて槍を投げ、誠治を一旦引かせた。
「勝利君!?大丈夫?」
「少し痛むな・・・」
さいわい致命傷は避けたが次来たらヤバイ。
「誠治!なんでお前が!?痛っ」
「なんで?だって僕にとって王様は邪魔なんだもん」
誠治は笑っていた。今までのあいつからは考えられないような悪い顔をしている。そして間髪入れず月村が斬りかかる。
「邪魔なんだけど?月村」
「邪魔しに来たんだ」
月村は攻撃をさせないよう、銃を押さえつけるようにした。
「甘いよ」
『吹き飛ばせ 風牙!』
誠治は風を刃のように具現化し、月村の周りから切り裂いていく。
「少し、服が破けてしまいましたか」
月村の回避は間に合ったが距離を取った。いや、取らされたと言った方が正しいだろう。
「誠治さん。貴方がそんな人とは思いませんでしたよ」
「月村さん、遠慮は要りません。全力で潰しにかかってください」
「優佳里さん・・・了解しました」
『ブレイブ』
太刀から双剣に切り替え身軽になった。
しかし誠治のあの術は明らかに風系統のものだ。誠治が今までそんなものは使ってこなかった。単に隠していたにしても何故得意分野の水系統の術じゃなかった?
「なあ誠治、お前昨日の夜は何を作っていたんだ?」
俺は一つカマをかけてみた。
「答える必要は・・・無いね!」
誠治の反撃で一斉射撃が開始される。
「全員!退避!」
優佳里姉の指示でその場から引く。部屋は粉々に崩れあたりは瓦礫の山と化した。そこから巻き上がる粉塵があたりの視界をなくす。
「ケホッ、皆さん無事ですか?」
「なんとかな」
粉塵がなくなった頃には既に誠治の姿はなく、俺、桃花、優佳里姉、キラさん、正喝、月村の六人しかいなかった。
「キラ、誠治さんの詳しい状況を教えていただけますか?」
「詳しい状況ったって、俺様が正喝の奴と食事しようとした時、急に撃ってきやがった。」
「急に?」
「ああ、健やかな笑顔を見せながらな」
「本当に誠治かと疑ったが、ブレイブまで同じなら間違えない」
正喝も誠治に襲われたようだ。しかし俺たちは一つ忘れている。
「とにかく誠治さんを見つけ次第・・・
「待ってください優佳里姉」
「なんですか?まさかこの状況で誠治さんが犯人で無いというのですか?」
「そのまさかだよ」
誰しもが俺を疑う。犯人である誠治が認めているのだから間違えない。普通ならそう思うだろう。
「では聞かせてもらいましょうか、勝利の考えてを」
「ああ」




