記憶の島 キホウ
俺達はキホウに行く。
しかし…………
「あ〜駄目だ。まだ慣れない。」
ここは船の上、天本さんの船ででキホウに行くのだがあいにく俺は船酔いとゆう物に慣れない。
「そういや、勝利は水が苦手だったね。」
「克服しろ!」
喝を入れられて少しは元気が出た。
「ああ、まあなんとかするさ。」
とにかく、人生は気合いが大事である。
「あ〜あ、この舟いつ着くかな〜」
「あと少しですよ」
天本さんがいつの間にか近づいていた
「あれ?天本さん。操縦はいいんですか?」
「今は自動操縦ですから、問題ありません」
「そうですか」
呑気に話していると酔いが………
「・・少し部屋に戻るわ」
酔いを治すには寝るのが一番いいと俺は思っている。
部屋には、なぜか桃花一人だった。
部屋割りは二人室が五つあるのだが、天本さんと桃花は当然同じ部屋で正喝と誠治そして俺は一つずつ勝手に使っている。
「お帰り大丈夫?」
「大丈夫じゃないから戻ってきた。」
トップを食べながら、桃花は部屋で休んでいた。
「ところで、なんで俺の部屋にいるんだ?」
「何となくかな。何か面白いものないかな〜て」
「ここに来たばかりなんだ。あるわけないだろ」
「えっ?そうなの?」
「そうなのって、当たり前だろ」
「ふ〜ん。つまんないの」
「つまらなくて悪かったな」
そういえば、俺は女の子と普通に話すのは初めてかもしれない。まあ、どうでもいいことか。
二人の何気ない会話に正喝が割り込んできた。
「利、キホウに着いた。」
部屋の外から正喝の声が聞こえてきた。
「やっと着いたか、キホウに。」
会話しているうちに酔いもなくなり、気分爽快だった。
けれど問題は山積みだ。
まずあのアホ師匠は一人でどっか行っちゃうし、ここで何をすればいいのかすら分からない。天本さんはよく説明してくれない。
・・・ま、なんとかするしかないか。
「ところで天本さん、ここで何をするんです?」
「そうですね。とりあえず戦いましょう」
「え?」
いきなり戦えと言われても何とたたかえばいいのやら。
俺がそんなことを思っていると、いきなり何かが襲いかかってきた。
???「ワォォォォ」
???「ウゥゥゥゥ」
二頭の魔物(?)だった。
元の世界には魔物はいない。
魔物の一匹は赤いヘビのような物で空を飛んでいた。もう一匹は青く、狼の形をしていた。
「あれはサラマンダーとフェンリルですね」
「え?いきなりあんなのと戦うの?」
「大丈夫ですよ。あの子たちは私のペットのようなものですから」
天本さんが意味深なことを言ったが俺には届かない。
「やるぞ。利」
「ま・待ってくれあれかなり強いぞ。もっと慎重に」
「大丈夫だよ。勝利君なら」
お前が言うな。と言いたいところだ。桃花は俺の後ろで足をガクガクとさせている。
正喝は既にレジェである槍を出していた。
「心がやらないなら僕が勝手にやるよ〜」
誠治もレジェの銃を適当に出していた。誠治はやや短めのライフル銃を二つ両手に一つづつ持ち戦闘態勢は万全でいた。
「分かったよ。やればいいんだろやれば」
俺もしぶしぶレジェの刀を出した。近距離戦なら正喝や誠治より得意だ。
「では、これを使いましょう」
天本さんは右のポケットから小さな箱を取り出した。
「バトルバャーチャルフィールド。通称BBF。簡単に言えば擬似空間ですね」
箱を宙に投げると、箱の中から白い線が飛び出してきて地面に張り付いて枠になった。
「随分と大層なシステムだね〜」
「擬似空間なのでこの中ならいくら暴れても問題ありません」
100m×100mの空間ぐらいだろうか。擬似という割には体に違和感が無い。
「おや、桃花ちゃんもフィールドに入れてしまいましたか」
「え?」
俺は後ろを振り向いた。
そこには何も分からなかった顔で桃花がいた。
「?どうしたの?変な顔して?」
俺は呆れた顔で桃花を見る。
「どうやら中から外には出られないらしいね〜」
「ハァ、・・・誠治、正喝、さっさと終わらすぞ。誠治はサラマンダーを正喝はフェンリルを頼む。」
「勝利は〜?」
「俺はテキトーにやるよ。来る火の粉を弾くだけ」
「りょーかーい」
仕掛けたのはまず正喝だった。槍を構えたまま突進しフェンリルを突いた。しかし軽い身のこなしにかわし俺のほうに突っ込んで来た。
「利、来たぞ!」
「え?」
まさか、いきなりくると思わず何も準備していなかったため、抜刀せず鞘でフェンリルの爪を抑えた。
「きゃあ!」
後ろには桃花がいるため下がることはできない。フェンリルの力は思った以上に強く押し返すのは到底無理だった。
「はぁあああ」
正喝が隙を見て体を槍で貫きフェンリルはその場で倒れた。
「ふぅ、助かったよ。正喝」
「まだだ。サラマンダーが残っている」
サラマンダーは空中を自在に駆け回り、で誠治を圧倒していた。
「・・攻撃かまるで当たらないよ〜」
もともと誠治は相手の油断をついて射撃する戦法以外はあまり得意ではないのでサラマンダーとは分が悪い。
「やれやれ、心〜たのむよ〜」
「なんで俺が!?」
「暇そうだから」
誠治はこちらに話しかけていても攻撃の手は一切緩めてはいない。器用すぎるぞ・・・。
「俺がいく」
正喝がおれの代わりに行ってくれておれは暇になった。正喝が接近してBBFの角っこに追い詰め、誠治が止まったところを狙い高速弾用のスナイプライフルをどこからか取り出し、狙い撃った。
「狙い・・・撃つ!」
誠治が放った弾ははサラマンダーを貫いた
その瞬間、BBFも消えた。
「見せてもらいましたよ。あなた達の戦い方を」
「試していたんですか?俺たちのことを」
「ええ」
そう言うと左のポケットから二つの笛を取り出した。吹くと、天本さんの後ろにフェンリルとサラマンダーが出てきた。
「その笛一体どうなってるの〜?」
「召喚ですよ。簡易的なね」
まあ、俺たちにとっては異世界だし何があっても不思議ではないか。
「・・・」
「ん?どうした?正喝?」
正喝の視線がさっきから俺に向かっている。いや、正確には俺の背後。
「勝利くん、ありがと」
「え?俺なんかやった?」
「守ってくれた」
「べ、べつに俺は自分の身を守っただけだ」
「あーでた。心のツンデレ」
「つ、ツンデレじゃねーよ」
明らかに俺は動揺している。
「ツンデレってなに?」
桃花が悪気もなく尋ねてくる。
「ツンデレっていうのはね〜心のようなひとだよ〜」
「勝利くんはツンデレなんだね」
「・・・もういい、俺はツンデレですよ。だからといってどうということはないけど」
誘導尋問により認めさせてしまったが、まあいいか。
「さて、行きましょうか」
「どこに?」
「行けば大体は分かりますよ」
約一時間ほど歩いて古ぼけた建物のなかに入った。古い洋館だ。鍵はかかっていない。
「こんなところに、一体なんのようです?」
「桃花ちゃんのレジェスターとしての能力を覚醒させます」
こんな場所でなくとも別にいいのではと俺は思った。
「具体的に何をすれば?」
「・・・桃花ちゃんを抱いてください」
「なっ!?何を言ってるんですか!?」
「・・ああ、言い方を間違えました。桃花ちゃんにあなたのレジェを分けて下さい。その過程で最も効果的なのが抱くということです」
「・・・ハグの方で?」
「そうですよ。何か問題でも?」
「いえ、そうゆうわけじゃあ・・・」
助かった。もしあっちの意味だったら俺は精神的に殺されていただろう。
「さて、そのための準備をします」
天本さんは桃花の前頭葉に左手をあてた。左手から光が放たれ桃花がその場に倒れた。
「あなた達を桃花ちゃんの夢の世界に送ります」
「夢の世界?」
「意識の中、と言ったほうが正しいかもしれませんがね」
一拍置いてまた話した。
「勝利さん、抱いて効果があるのはあなただけですから」
「俺だけ?なんで?」
「属性的な問題です」
「ツンデレのことかな〜」
誠治は少し黙っておこう、と俺は後で言おうと思った。
「桃花ちゃんの属性は風。対してあなたは炎。炎と風は協力関係ですから。・・・本来は風のレジェスターにお願いしたのですが・・・」
まあ、俺の知り合いにいないこともない。師匠だ。あの人は炎と水と風を合わせて雷を作っている。本来属性は一つだが、努力次第では二、三つ手に入れるのは珍しくはない。あの人は本来風なので効率がいい。だが、いまいない人を当てにする必要はないか。
「勝利さん戦う準備はできていますか?」
「分かりました。やりますよ。やる気になれば」
「がんばってね〜」
正喝は小さく頷く。お前なら出来るとでも言いたいのだろうか。
静かに目の前が真っ白になった。
気がついたら見たこともない場所にいた。辺り一面花で飾られていて、穏やかな場所だ。
「ここは?」
どこからもなく声が聞こえてくる。
「聞こえますか、」
「天本さん?一体どこに?」
「私は声を送ることしかできません、………奥にヴァルナと呼ばれる大木があります。まずそこに行って下さい」
「あれ〜なんで僕たちもいるかな〜」
「え?」
「どうやら俺もやることがあるらしい」
誠治と正喝もいたが、まあ、いいか。
俺は言われるとおりにヴァルナに行った。
「・・・なんだ?この木は」
葉っぱの色が一枚一枚違うのだ。緑や紅、茶色、変わったもので青もあった。
そこには桃花が寝ていた
「なんか、嫌な予感が・・・」
後で殺されるな。これは。まあ、意識の中だから問題ない。さて、さっそく始め・・・
「何か来る!」
正喝が叫んだ。黒い球体状の物体がこちらへ向かってくる。大きさは手のひらサイズだろうか。
「あれを近づけてはなりません。阻止を。」
「勝利〜、君は桃花さんに集中、集中〜なるべく早くしてね」
「ああ」
俺は迷わず桃花を軽く抱き寄せた。
桃花の体、柔らかいな・・・って、そんなこと考えてる場合じゃないだろ!
俺は一人で脳内ノリツッコミをしていた。
『弾け、水流、スプラッシュ』
まず誠治がヴァルナの周囲に水の壁を作り出した。
「これで時間は稼げる〜」
「上だ!」
黒い球は水がない上空から来た。
しかし正喝にあっさり倒された。
「敵は思ったより脆いな」
「さーて、このまま、このまま」
そして10分ほど過ぎたがあだ終わらない。
「勝利〜まだ〜?」
「そんなの俺が知りたい」
あいつらは俺の苦労を知らない。あいつらの敵は物理で見えるが、俺は理性と言うなの強敵と戦っている。
「あ!」
水の隙間から黒い球が入って来た。
「え?」
グシャと鈍い音をたて、正喝の槍にクロキュウは突かれた。
「集中しろ」
なんとか助けられたな。
だが今度は二十体以上入ってきた。
もう駄目だ、そう思っていたその時だった
辺りに強風が吹き荒れる。
「な・・なんだ!?」
風は黒い球を切り裂いた。
「おはよ、勝利くん。・・・体から力が溢れてくるよ」
桃花のレイブは扇だった。扇子、と言ったほうが分かりやすいだろう。両手に一つずつもち風を切るようにかなり薄くなっている。
切り裂いたクロキュウはバラバラになったが集まり一つの無機質の球になった。
2mほどの鉄球がイメージに一番近い。
「それを倒せば終了です」
デカいは突進をしてきた。
「おっと」
刀の鞘で受け止めてうまくいな・・・せない。
『切り裂け刃、スピネイト』
風を実体化させ、緑色の刃を飛ばした。
黒い球は一部切り取られたがダメージはほとんどないように見えた。
しかし桃花の術に体制を立て直すことができ、なんとか助かった。
「こうゆうデカイ獲物はこれで〜」
誠治は背中の高出力ビーム砲、ラグナロクを放ったがまるで効かなかった。
『闘槍』
正喝は一箇所を激しく突いたが、奴らは分散しあたりやしなかった。
『炎撃破』
抜刀で刀から炎の衝撃波を出したが、届かない。
「チィ・・」
「勝利君、このままじゃあ勝てないよ」
「わかってる、けどどうすれば・・・
「私に任せて」
「え?」
「私はもうちゃんと戦えるよ」
「なにか策でも?」
「さっきの炎撃破に私の風を合わせる」
あの黒いのは風が一番効くみたい。
「そううまくいくもんか?」
「大丈夫、大丈夫、きっとうまくやれるよ」
『炎撃・・・風破!』
勝利の刀に桃花の風を纏わせて勝利自身の炎の力も加えた。
風の相乗効果があるため攻撃範囲は格段に上がったいる。
「これで終わり!」
デカいクロキュウは2つに割れ、消滅した。
「・・・無事に倒したようですね。では瞳を少し閉じて下さい」
瞳を5秒ほど閉じると、次に現れたのは古い館だった。どうやら戻ってきたようだ。
「さて、私の力が身に着いたし一件落着だね」
こんなことがまだあると思うとため息が出てくる。
「やれやれ〜僕も少しだけ本気だしたよ〜」
「なかなか順調な始まり方だな」
「さて、次の島に行きましょうか」
「もうですか・・・」
「さぁ勝利君!次行こ!次!」
「ちょ待て!桃花!引っ張るな!襟引っ張るな!首が首が―――!!!
「ハハハ」
「・・・」
正喝が笑を堪えてるのが一瞬だけ見えて俺の意識は飛んだ。
「では行きましょう。次はグロウの島に」