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蒼の彼方からきた細い何か

「か〜つ〜と〜し〜さ〜ん?」

「イリナさん、ただいま」

部屋へ戻るとイリナさんが妙に低いテンションで迎えに来た。

「どこに行ってたんですか〜」

「宮殿だよ。姫様に会ってきた」

「あ、そうですか。分かりました」

棒読みと共にイリナさんはベットに戻った。

「それじゃあおやすみです」

「ああ、おやすみ」

その夜は妙に寝つきが良かった。だがある夢を見た。

たくさんの友人に囲まれている学生の夢だ。笑顔がたえない日々が進んでいく・・・そして夏休み・・・

「さん・・・勝利さん!」

「・・・イリナさんか、おはよう」

俺は大きく欠伸をしてベットから出た。結局あの夢の続きは見れなかったが、ある意味あれも俺が求めていた日々だ。

「あ、あの、勝利さん・・・」

イリナさんが申し訳なさそうにこちらを見る。

「ん?ああ、気にすんな。生理現象だ」

いわゆる朝立ちというやつだ。とゆうか、イリナさんは普段の言動がアレだからそれなりに経験あると思っていたが、案外ウブな人みたいだ。そしてなぜ逃げる?

「もしかして勝利さん、私を襲う気ですか?」

「はぁ!?」

話を聞いていなかったのか?いや聞いていてあえての発言だろう。

「生理現象なんて嘘をついて、本当はヤりたいだけなんでしょう?」

「・・・はぁ」

今度は溜息をついた。ここでこの人の調子に乗るわけにはいかない。

「イリナさん、目閉じて」

「はい・・・」

覚悟を決めたかの如く彼女は目を閉じた。俺はそのデコにデコピンを食らわせた。

「痛っ!・・・もう、何するんですか!?」

「イリナさん、俺のキスは高くつくぞ?お金で買えないくらいな」

俺は自慢げにそしてフランクに言った。イリナさんにはこれぐらいがちょうどいい。

「むぅ、じゃあどうしたら買えますか?」

「そうだな、俺に大好きって言わせるくらいだな」

「それ、物凄く難しいですよ〜」

「なら諦めるんだな」

「何勘違いしてるんですか?」

「ひょ?」

「まだ私は諦めると言ってませんよ?」

「何言ってるんだか、もうペースは完全に俺が握ってるじゃないか」

「速攻魔法発動!バー痛っ!」

「それ以上はやめとけ、これ以上は付き合いきれんぞ?」

またデコピンを食らわせてやった。それとこれ以上付き合ったら俺が倒されるハメになる。

部屋から出ると正喝がいた

「正喝か。おはよう」

「おはよう、利、早速だが昨日は楽しめたか?」

「いや、そんなことはないさ」

「・・・そうか、では訓練に向かうとしよう。」

おそらく正喝が聞きたかったのは俺とイリナさんの事だろう。冗談じゃない。俺が桃花以外と・・・するわけないだろ。(何をとは言わないが)

「誠治は?」

「開発で徹夜だ。お昼頃には起きるだろう」

「ああ、目を覚ますって意味ではあってるな」

誠治は徹夜して朝寝ると昼には目がさめる。だが夕方の5時くらいまでは布団から出ようとしない。

「昔からのんびりとした奴だ。たとえ起きたとしても半分寝ぼけて来る」

別にそれが悪いとは思ってはいない。よく言えばマイペースだ。

「ふぅん、今日はあののんびり屋のガキは休みか」

「キラ隊長、おはようございます」

「ああ、おはよう、・・・確か、勝利って名前だったな」

「ええ、何か?」

「いや、お前さんはそれなりには強いんだろう?」

「まあ、自覚はありますけどね」

「そうだな、利はココ数日で力をつけてきた」

「それはみんなのおかげだよ。俺一人じゃあブレイブゼロはできなかったらな」

「ふぅん、そのブレイブゼロって奴がどれほどのものか見せてもらおうじゃないか」

そう言われ、来たのは無機質で覆われた白い部屋だ。上下左右に無数の線が引かれてある。おそらく闘技場か何かの後だったのだろう。コロッセオの形と言えば分かりやすいだろう。

「さて、準備はできたか!?イリナ!」

「ばっちりですよ〜。スイッチ〜!オーン!!」

上にいるイリナさんがスイッチを押す。すると周りが景色を変えていく。ここはまさに本物の闘技場だ。

「ふぅん。今の俺たちは誇り、自由のために命を賭して闘った古代ローマの剣闘士のようだな!さあ、鞘から剣を抜きな!」

俺は言われた通り鞘から剣を抜いた。この場所だと抜いた時に逆手持ちになる。上手にしようとも考えたが、まずは様子見ということで、こちらの方がリーチは狭くなるが、小回りは効くため守りやすい。

「なるほど〜まずは手を見る感じですね」

「利は慎重だな。だが、相手が悪いな」

「ふぅん、その程度の態勢でおれを止めることは・・・できねぇ!」

相変わらずの突撃。怖い怖い。俺は取り敢えず右からの攻撃を剣で左を鞘で防いだ。

「そんなもん!」

「(俺の鞘を抑えたまま逆手に持ち替えた!?)」

そこから柄の部分でガードを捲られる。俺は左手のガードを解き、柄の先で無防備な腹にガツンとぶつけてやった。

「っその程度かい?」

俺は焦り、急いで距離を取った。しかし左腕に痛みが走った。二の腕に傷をつけられたようだ。

「(まずいな、力が入らん)」

こんな状態では鞘を使うのは無理だ。実質右腕一本で戦うことになる。

「今の攻撃で左手がまともに動かねーみてーだな。・・・いいぜ、俺も右腕一本で戦ってやるよ」

彼のその言葉は慢心か、それとも自信か、おそらくは後者だろう。

「お前もブレイブを使いな、久しぶりに楽しめそうだ。」

『ブレイブ』

俺はそう口にし、体の底からエネルギーが来るのを・・感じなかった。

「あれ?」

「ん?どうした」

なぜ発動しない?俺は幾つかの可能性を考えた。この空間では能力が制限される。ブレイブ自体がそう易々と使えるものではないのか?

「利?いったいどうした?」

「分からん。ただ発動出来ない」

「・・・ハァ、やめだ、やめだ。本気出せない奴に闘うつもりはねぇ」

そのまま闘技場を後にするキラ隊長、

「今日の訓練はここまでだ。あとは各自でやってくれ」

俺は呆然とした。理由は分からないが、ブレイブが使えなかったのは事実だからだ。

「なんなんだ、いったい・・・」

「おそらく精神的な問題だ。相手を絶対に倒す等の強い意志が必要だ」

「そういうものなのかね?」

「ああ、俺はそう感じる」

俺は話を終え、時間を確認する。11次頃だった。昼にはまだ早い。そういえば昨日の夜、桃花に食事に来てと言われていたな。何か暇を潰す何か・・・

「じゃあ今度は私が見せますね〜」

「え?」

「私の実力?気になりますよね?気にならなくても見せますよ?」

「なら俺が相手をしよう」

正喝が相手をするようだ。さっき話していたのか?


<バトル スタート>(°○°)

(なんだこの顔文字・・・)バトルは始まるがこの顔文字は流行らない。


ってあれ?正喝の装備に盾が追加している?

左手には身を隠すほど大きな盾を持っている。その姿はパラディンに見える。対してイリナさんはレイピア一本のみ。あれじゃ盾は突破できそうにないな。

先に仕掛けたのはイリナさんだ。高速の突きを正喝は槍で切り払った。そこからお互い突きの乱撃に入る。避けてはかわし、防ぎを繰り返す。突きのスピードはイリナさんの方が上だが、正喝の盾の方が先だ。しかし正喝の攻撃も避けられて互角の勝負をしている。

「ムムム、一時撤退です」

「逃がしたか・・」

イリナさんは一度距離を取り、レイピアは左手に持ち替えた。

「あ〜ちょっと待ってくださいね、手が疲れちゃいました」

「おい」

呆れた、持ち替えて本気を出すかと思えば疲れたとは・・・おそらく正喝も俺と同じ考えだろう。手をぶらぶらさせて軽くマッサージまでした。

「よし、ok」

レイピアを右手に持ち替え、試合を再開した。

「今度はこちらから行く」

「どうぞどうぞ〜」

正喝が盾を横に構え、そのまま突進した。

「あひぃ!?」

正喝にしては珍しい奇声をあげその場に転んだ。

「ふっふっふ、戦略とは、常にニ手三手先を見据えて行うものですよ」

よく見ると正喝の転んだところにうっすらと何かがある。それは棒のようにも見えるが、ここからではよく見えない。

「私は手を休めている間あるマジックをしました。それがこけた原因ですよ〜」

もう試合は終わったも同然であるのを見て俺も下に降りた。

「イリナさん、おつ・・・ ガン!

俺もこけた。これは地味に痛い。

「だから、言いましたよ?ニ手三手先をみすえてるって」

出入りの方にも棒を仕込んでいたようだ。よく見たらそれはただの木の棒だった。直径は5センチもないのでこんなものにひっかかってもこけるとは思えないのだが・・・

「不思議に思いますか〜?ではここでネタバレで〜す」

イリナさんの能力は物体の大きさをある程度変更させることができる能力らしい。だが代償として大きくするほど見えにくくなるというなんとも使い方が分かりにくい能力だ。それを使いこなしているイリナさんはひょっとしたら頭はいいのかもしれない。

*・゜゜・*:.。..。.:*・'(*゜▽゜*)'・*:.。. .。.:*・゜゜・*(流行れ)

時間も来たので食事に行くことにした。




宮殿には月村が待っていた。なぜか執事服を着ているが妙に似合っていた。

「お待ちしていました。勝利さん」

「月村、なんか初めて会ったときみたいだな」

「・・・TPOです。今の私は自分を執事と思っています。この格好はそのためのものです」

「ま、今はそういうことにしておきます」

「で、食事の要件でしたね。こちらへどうぞ」

月村に連れていかれて、食事にと向かった。

「この部屋です。何かご用があれば呼んでください」

「月村は入らないのか?」

「姫様のほうからできるだけ二人にしてほしいと言われましたので」

「そうか、ありがと」



「桃花、待ったか?」

部屋に入り、桃花を呼んだが返事はない。よく見ると寝ているようだ。可愛いな。

「ん?ぁあ、勝利君おはよう~」

「おはよう、と言ってももう昼だけどな」

「ん、知ってる」

待ってる途中で寝てしまったらしい。

「じゃあ早速・・・

俺が椅子に座ろうとした時、ドアが強い勢いで開いた。ドアを開けたのは優佳里姉だった。珍しく息を荒くしている。

「優佳里姉?一体どうしたんです?」

「王が、・・・殺されました」

絶句、それしか表現がなかった。






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