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ナナシマ到着

「それでは儀式を始めましょう」

我が両腕に宿る二つの石よ。その輝きを持って我らに新たな道を示せ!

『レイズロード!』

ルビーマリンとアクアマリンを使い、地面に光の輪っかができる。その光は上空の雲を払うほどの光だ。

「これでナナシマに行けますね」

「こんなもので?」

「こんなものとはなんですか!?これは歴代の天使に伝わる移動術です。ナナシマほどの場所は魔石2つ使わなければいけないほどの距離ですから」

その言い分だと船を使っていた意味がない気もするがあえて突っ込まなかった。

「さて〜行こうか〜」

最初に行ったのは八神だった。

次に月村、正喝、優佳里姉、最後に俺と桃花が移動した。




「ここが、ナナシマか?」

「ええ、久しぶり・・・ですね」

「ずいぶんと暖かいんだな」

正喝は思わず腕まくりをした。確かに空の上と聞いていたので寒いとは思っていたが、25度はあるだろう。

「ここは気候安定機を使っていますからね。本来なら人間は生存できないくらい寒いですよ」

恐ろしいことをさらっと言われた気がする。だが、気にしてもいられないだろう。

それより外観がすごい。マンションの様にきちんと並べられた建物。非常に大きな噴水。奥にはカラフルな宮殿の様なものが見える。

「まるで遊園地だな」

「別に楽しくはありませんよ?それと、これから言葉は慎むように。」

そういえば、桃花はここの姫様という説明を受けた。記憶を掘り出す。優佳里姉はその教育係で直接血縁関係はない。

王様関係の人との会話だろうから言葉には気をつけないと、とより一層緊張感がでた。

宮殿の方へ進み入り口へ向かうと検問の様な場所が見えた。

二人、いや二天使がその場に堅牢な鎧と、槍、翼、を持っていた。

「!?桃花様!?ご無事で?」

「うん!ごめんなさい。心配かけて」

「ええ、遅くなりました」

「はっ、大変恐縮であります」

「・・・どうやら本当らしいな」

実は半信半疑だったが、検問の会話で本物だと判断できる。

「優佳里様、そちらの人間は?」

「私の客です。丁重にもてなしてやって下さい」

「はっ!どうぞお通り下さい」

優佳里姉もどうやら権限を持っているようだ。

「お、おお、なんかすごいな」

まず目に飛び込んできたのは螺旋階段、それと空中に浮かぶ石のような物体。奥行きも広くこれまでに見た全ての建物のスケールを凌駕している。

「こちらです」

優佳里姉が螺旋階段を眺める。永遠とも伸びていそうな空間である。

「すごいな。この城(?)は一体どうなってるんだ?」

「ナナシマは本来目には見えない存在です。私がいなければ歩くことすらできませんよ。」

「なるほど。」

またもや怖いことを平然言っている。だが、怖がってもいられない。

「・・・で、この階段はいつまで続くんだ?」

「・・・実はこの階段は普通に登っても玉座の間につきません」

「え?じゃあこの階段は何のために?」

「カモフラージュですよ。王はこの奥です」

そう言いつつ、奥の壁のほうに進んでいった。壁だと思っていたそれは実は扉であった。

「さてここから先は言葉を慎んだほうがいいかもしれません」

「了解!」

俺たちも扉をくぐり、王の、謁見の部屋にはいった。

「特務隊一番天本優佳里、桃花姫を連れ、帰還しました」

「・・・フム、ごくろう。そちらの人間たちは?」

「彼らは協力者です。下界の危険から桃花姫の護衛を引き受けてくれました。

「なるほど。其方も大儀であった」

「い・いえ!大変恐縮です」

「(利、言葉が変だぞ?)」

俺が大変恐縮していると後ろから殺気を感じた。

後ろから斬りかかろうとするのが三人いた。恐らく俺以外に対する当て付けだろう。

正喝、月村、誠治が戦闘態勢に入ったその後3秒。一斉に襲いかかったのが運のツキだろう。とりあえず動きを封じて戦闘不能にした。

「・・・で、これはどういうことですか?王様?」

此処で怪我して良かったと思った。

「ハッハッハッ、なるほど護衛というのは嘘ではないようだな」

「試していたんですね。私たちを」

「そう。天本が操られてる可能性も考えてな」

「私まで疑われていましたか?冗談ですよね?」

「冗談ではない。君は知らないだろうが、かつてそう言ってこのナナシマに災厄をもたらした人間がいたかならな」

「そ・・それはすみません」

「何、謝ることはない。それに姫の恩人なのだ。頭を上げよ」

「はっ、はい!」

王様はよく見ると随分と素朴な格好だった。俺の思っていたイメージはもっと金とか腕にシルバーとか巻いていると思った。

「私も反省しているのだ。徹底した教育だけが教育ではないと思ったのだ。桃花よ」

「?私は平気だよ。それにとっても楽しかった。きっと家出なんかしなければ私は変われなかったよ」

「よく話が見えてこないんだか?」

「それは私が説明するのだ」

王様が席を立ち、こちらにむかってくる。

「恥ずかしい話だか私は天本に姫の教育係を押し付けて豪遊していたのだ。そんな私は姫になにもしてやれずに公務に没頭していたのだ。天本には姫を厳しく教育するよう指令していた。姫はそんな生活に嫌気がさし家出したのだ」

「そうなのか?桃花?」

「うん。だいたいあってるよ」

「??おい!貴様!姫を付けろ!無礼だぞ!」

「っと、失礼しました。桃花姫」

俺に突っかかって来た男は御曹司オーラをおもいっきりかもしだしていた。今には珍しいタイプの鎧を着ているが、天使の正装なのか?

「それではまた桃花姫に教育を?」

「いや、姫はもう十分に成長していると、私は思うのだが?」

「ええ。桃花姫、ブレイブを」

桃花は静かに頷くと集中するため、目を閉じた。

『ブレイブ』

翼と槍が姿を現わす。相変わらず無駄に多い扇だ。

「おお、姫様、随分と成長なさった」

兵士の一人が呟く。確かに桃花は心身共に出会った頃とは比べものにならないほど成長した。

「ふむ、心身は十分に鍛えられたようだの。では次は、・・・姫の帰還を祝うぞ。そうだ、明日にでも行おう」

王様が部下に命令する。顔には出していないが嬉しいのは確かだろう。

俺たちは客室用の部屋に案内された。

「・・・ったく、車椅子も楽じゃないな」

自分でタイヤを回すのは案外力がいる。普通に進むのも疲れる。

「勝利、手伝いますか?」

「ああ、頼む」

親切な月村は俺の車椅子を押してくれた。月村が悪魔つきだとは到底思えない。

「ふぅ〜し・・・じゃなかったね、今は天本勝利だったね〜どう?緊張した〜」

誠治が緊張がほぐれたようにいつものペースで話しかけてくる。

「そりゃ緊張しないほうわけないだろ。それより・・・

俺が言いかけると出入り口の扉が開いた。入ってきたのは優佳里姉さんと姉さんと同い年くらいの女性、さっき俺を注意してきた御曹司だ。

「勝利さん、貴方の怪我を直せるかもしれません」

「!本当ですか?」

「ええ、イリナさん、お願いします」

「はいっ、分かりました」

イリナと呼ばれた女性は俺の骨折した包帯を外しまじまじと見る。

「すごく大きい、それに赤くなっていますね」

ツンツンと足を突かれ、俺は痛みに声を上げた。

「イリナさん、・・・」

姉さんが呆れた顔でイリナを見る。

「大丈夫、これはちゃんとした問診ですよ」

「ちょっと我慢してくだいね〜」

そう言い問診は続いた。その度に声を上げる。

「ん、ここですね。」

イリナが腕を止め集中して詠唱を始めた。

『癒しよ、その加護を持ってかの者を救え、フレキシブルボーン!』

みるみる骨の痛みが無くなり、完全に戻った。

「治った?すごい治癒術だな」

「えへ、ありがとうございます」

イリナは自慢げに笑顔を浮かべる。案外あざとい人だ。

「さて貴様、私と戦え」

さっきの御曹司が怪我が治ったから調子に乗ってきた。

「・・・は?」

「貴様は一度姫を呼び捨てにしていたからな、貴様がそこまでの腕があるようには見えないのでな、私が叩き直してやろう」

何を言ってるんだ?コイツ?アンタの方が弱そうだが?

「護衛もマトモにもできず、怪我をするような奴は私が叩き直してやろう(大事なことなので二回言いました)」

「(ここは弱いフリをしておくか)」

「ええ、ぜひ頼みます」




・・・訓練場にて

「さて、どこからでもかかってこい」

彼はレイピアを構え、挑発してくる。とりあえずレイブを使うか。

『レイブ起動』

出てきたのはいつもの刀ではなく、ブレイブ状態の剣だった。

「え?」

俺は戸惑った。刀を手にする構えをしていたため、一人だけアホな事をしていた。

「なんだ?自分のレイブもまともに扱えないのか?そんな奴に護衛を務める資格はない!」


彼は構えもしてない俺に向かって突きを仕掛けてきた。

間一髪で躱し、態勢を整えた。まずは鞘から剣を抜き軽くレイピアを斬った。

「な!?」

彼はすこぶる驚いていた。俺はその隙を見逃さず足を引っ掛け、刃を向けた。

「言っておきますけど、人は見た目だけで判断しないほうが良いですよ。特に俺みたいな奴はね」

「くっ、貴様ぁ!この私、袁士を愚弄するかあぁ!」

「愚弄?いいえ指導ですよね」

得意げに挑発してみる。すると袁士は激怒した。

「いいだろう。そこまで言うなら本気を見せてやろう」

『ブレイブ』

出てきたのは二本のレイピア。先ほどより手数が増したのは見て明らかだ。だが・・・

「なん・・・だと」

彼の猛攻を、軽くいなし回し蹴りをして彼を倒した。俺の敵ではない。確かに攻めだけなら彼は優秀だった。だが、攻めの隙が大きい。あれでは戦場を生き残れない。

「クソぉ!なぜ貴様ごときにぃ!」

「袁士殿、もう十分でしょう。今のあなたは俺には勝てない」

「・・・今は引いてやる!だが、今度こそ貴様を倒してみせる!」

そう捨て台詞を吐き彼は立ち去った。



「ま、及第点かな〜」

「利、あれでよかったのか?」

「ああゆう調子に乗る人は早めに叩いておいた方が無難だと思うからな。大丈夫だろ」

今の俺達は客室に戻り一時の休憩をしている。だが次の事案はすぐ起きた。

「月村影野、天本殿がお呼びです」

衛兵が部屋に入り、月村を呼ぶ。月村はすらっと立ち、部屋から出ていった。

「どう思う〜」

「ん?何が?」

「月村のこと〜彼は天本さんの従兄弟だよ?ひょっとしたら大出世するかも」

「いや、悪魔の一部として拷問される可能性もある。まあ、天本さんは認めないだろう」

八神の意見と正喝の意見、どちらも可能性はある。だが、その予想はどちらも外れた。

「ただいま」

「ああ、おかえり月村。で、何があった?」

「何もない。優佳里さんの話し相手をしていた」

「へ〜デートかな」

「いや、勝利たちの騎士団の入団の手続きだよ」

「なんだ、デートではないのか、・・・ん?ちょっと待て!今なんて言った!?」

「だから、騎士団入団の手続きをしてきた」

「聞いてないぞそんなの!?」

「仕方ないじゃないですか、本来ここには人間は入れないから騎士団に入る見返りとして滞在出来るようにした」

「」

絶句した。まさかそんな決まりがあるなんて知らせてくれと切に願った。

「でも、いいじゃないか。俺と八神はともかく、利は姫様を守りたいのだろ?」

「え、ああ。そうだな」

そうだ。俺は何があっても桃花を守る。その為に騎士団に入るのはごく自然のことだろう。

「けど〜僕はやりたくないな〜」

「それも大丈夫だ。騎士団に入る代わりに元の世界の帰還をお願いした。元の世界に戻ると同時に解任される」

纏めると、俺は騎士団に正式に入団し八神と正喝は戻るまで仮入団と言った感じだ。

「明日に騎士団の入団会があるから出席するように」

「ああ」

「」コクッ

「りょうかい〜」

立場が変わっても俺達は何も変わらない。今は、時を待つだけだ。



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