センシン 五日目 勝利VS月村
今回短いです
今日は朝早く起きた。時間で言うと五時くらいだ。二度寝しようかと思ったが、昨日寝ていたせいか眠気が無い。なので次は体を起こそうと少し散歩に行った。
雀がまだないている時間、昔の俺はそんなものは知らなかった。戦闘ばかりで、今がこれほどありがたいと改めて実感する。特に行くあてはないが、二十分ほど歩き港の方へ向かった。
「ん?あれは・・・」
先客がいた。まだ明け方なので月の光がたなびいている。その月の光に反射する太刀。それは美しさと豪傑さを感じる。
「随分修行に熱心だな、月村」
太刀を振るっていたのは月村だった。基本は剣道で言うメンだが、ドウや突きも練習に入れている。
「私は皆と違ってレジェスターではありませんから、鍛錬は皆さん以上に必要なんですよ」
「そうか、大変だな」
レジェスターは魔法使いみたいなものだ。火や水を操ったりするのは朝飯前。だが最大の特徴は武器であるレイブを使うこと。人それぞれの潜在能力を具現化したものだと言われている。
「と言っても、これと言ったことはしていません。心さん、付き合ってもらえますか?」
意外な提案だった。普段の月村は必要以上戦闘はしないのだが、その強さは一級品と俺が認めている。
「いいけどここは場所が悪いな。少し移動しよう」
コクッと月村は静かに頷く。
港の近くにある河原に向かった。
「ここでいいか」
『レイブ起動』
レイブの刀を取り出す。また、両腕にはリストバンド型の収納システムがある。
中にはブーメランとシールドの役割をもつBBCと拳銃BSRが入っている。元々武器が足らなかったが、今はある程度中距離戦もこなせるようになった。
「じゃあ、そろそろ始めましょう。どこからでもかかって来てください」
「んじゃ、まずこいつで!」
早速BSRで撃つ。距離は二、三十メートル程度なので俺の腕ならはずさ・・・無いわけない。
月村はほぼ棒立ちでも当たらない。流れ弾を少し防ぐ程度だ。
「この距離じゃあ当たらんか。なら!」
走る。距離が約十メートル付近まで近づいた。あと一歩まっすぐ進めば月村の間合いのため、これ以上近づけない。
「どうしました?近づかないんですか?」
月村が挑発する。それに簡単に乗るほど俺もバカじゃない。俺が一歩踏み込み、それと同時に月村も踏み込めばリーチの長い月村の方が有利だ。問題はタイミング。しかし月村は隙を見せない。ならば
「あーーー!あんなところに宇宙人がー!」(棒読み)
「・・・心さん、今時そんな技が・・・ッ!
一瞬月村の気が緩む。決して逃がすわけにわいかない。俺は別に後ろを向いてもらえるとは思っていない。少しでも隙を作り、間合いを詰め、太刀が振れない距離まで追い込む。
「これで!」
「ッ!」
間一髪で月村が俺の居合を止める。だが、この距離なら太刀は振れない。このまま押し切る!と思ったが、急に目の前がぐちゃぐちゃになる気が着いたら俺の目には雲があった。つまり空、俺は倒れていた。
「心さん、私が太刀だけだとは思わないことですね」
押し切ることに夢中で足元をよく確認していなかった。踏み込んだ際の右足を引っ掛けられ、体制が崩れた。
「私の勝ちですね」
「・・・ああ、そうだな。負けた」
月村相手だと自然と悔しい気持ちにならない。
勝負が終わって一休みした。俺はボーとしていたが月村は自動販売機で飲み物を買って来てくれた。
「心さん、飲みますか?」
手には麦茶が2本ある。選択権は取るか取らないかしかなかったようだ。
「ああ、ありがと月村」
3分の1ほどを一度に飲む。ぷはぁと呼吸をし、一旦飲むのをやめる。
「月村、お前はナナシマについた後何をするんだ?」
「着いた後?」
「俺はこの世界に残るけど誠治や正喝は向こうに帰るだろう。その時どうするんだ?」
「それは・・・まだ、」
月村が珍しく戸惑う。
「私は自分が何者なのか知らない。けれど私を必要としてくれる人がいるならば、それに応えるまでです」
必要としている人、それは優佳里姉のことだろう。
「そういう心さんはどうするんですか?」
「・・・なんかやめないか?その呼び方?」
「何故です?」
「え〜と、ほら、月村は見た感じ俺より年上なのにさん付けされて呼ばれるのはなんか違和感が・・・」
「じゃあやめます。心、いや、勝利、ナナシマに行ったら何をする?」
「・・・実は俺は何も考えていない。ただ楽しいんだ。この生活が、永遠に続けばいいと思っている。そもそも俺がナナシマに行く理由がなくなった。あるとすれば、誠治と正喝の最後を見届けることかな。あっちに行ったらもう会うことは無いんだから」
そうだ。帰らないという選択肢は二度と二人に会うことがなくなるということ。それはとても辛い選択だか、自分が選んだ道をやすやす変えることは無い。
「あと、・・・
プルルルルルとケータイが鳴る。
優佳里姉からだ。
「もしもし、
「今どこにいます?さっさと帰って飯でも食いなさい。この豚が」
「あ、あの、優佳里姉?」
ドSだ。今日の優佳里姉はドSだ。
「まあ、今のは冗談です。朝食ができましたので、月村と一緒に帰って来てください」
なんで月村と一緒だと分かるんだ?そんな疑問はさておき、俺たちはこの島最後の朝食へ向かった。




