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ラグナルクの旅 一章 ナナシマ編  作者: 村田殿
かけらさがし編
19/49

センシン 4日目 心 勝利の過去

この話は3ー3を正史に作られています。

「雨だな」

「雨だね」

「雨ですね」

昨日の夜から雨が降り、今日も出かけるなんて気は無い。だが・・・

「いるか〜バカ利?」

「いますよ。ここに」

「久しぶりにやらないか?」

「やらない」

「やらないよ」

「・・・」

天本さんは読書に集中して何も言わない。桃花は俺と同じ反応だ。

「おいおい、まだ具体的に何をやるか言ってないじゃねーか」

どうせこの人のことだから、傘もささずに特訓とでも言うのだろう。

「知りたいか?」

「別にいいです」

「なら、俺は一人でフルマラソンしてくるぜ」

師匠は一人で行った。あの人なら問題はないと思うが。

玄関から傘もささず出て行き、気配が消えた。俺は仰向けで両手を頭の後ろで組み、その下に枕を置き足を交差させている。この体制が最もリラックス出来る。

・・・はて?何かを忘れているような・・・

そう考え始めた途端、パタンと本をたたむ音がした。天本さんが読書を終えたのだろう。

「勝利さん。少しお話があります。聞いてもらえますか?」

「ん?ああ、いいですよ」

体制を起こし、あぐらをかいて返答する。「後、桃花ちゃんには席を外してもらいます。」

「え〜なんで?」

「難しい話ですからね、聞いていると頭が痛くなると思います。」

「分かったよ」

桃花が外に出た。




「それで、その難しい話ってのは?」

「ああ、あれは嘘です。桃花ちゃんを外に出す口実に過ぎません。」

「そ、そうですか」

「では、一つ質問を桃花ちゃんをどう思いますか?」

「?難しい質問だな。」

「率直でいいですよ」

「そうだな、妹がいたらあんな感じなのかな」

「なるほど、勝利さんはシスコンと」

「なんでそうなるんですか」

俺は呆れた。

「では、私のことは親しみを込めて優佳里姉と呼びなさい。」

「は、はぁ!?あの、あま・・・」

「呼びなさい」

「はっ、はい。優佳里姉」

「ふふ、素直で宜しい」

笑顔が怖い。

「さて、前置きはここまでにして、そろそろ本題に入りましょう」

「え?前置きだったのか」

「ええ、・・・殺戮(さつりく)勝利(かつとし)とはあなたのことですね?」

「!やっぱり、知ってるんですか・・・」

「ええ、あなたは昨日黒い私に会いましたか?」

「俺を殺そうとしていた方か」

「ええ。話はそちらから聞いています。いや、共有したと言った方が正しいですかね」

「・・・あの人は誰なんです?」

「言うなれば違う世界の私ですかね。正しくは世界番号Bー105の私です。」

「ちょっ、ちょっと待ってください。世界番号って?」

「パラレルワールドにおける時間軸や可能性の番号ですよ。例えば、今ここにいる私が違う人ならそれはすでに違う世界なんです」

「パラレルワールドの番号か。そんなものがあるのか」

「さて、話を戻しましょう。殺戮(さつりく)勝利(かつとし)とは、やはりあなたですね。」

「・・・そうですよ!俺は、・・・俺は・・・平気で人殺しを出来るような奴なんだ!」

何を言っているんだ?俺は、自分の過去と向き合えず今まで隠して来た。それがこうも簡単に崩れる。呼吸が苦しい。意識が遠のいていく。まだ何も話せて無いのに・・・




目覚めたのは大体二時間後だった。ベットに寝させらていた。誰かいる。

目が霞んでいるが、その特徴的なポニーテールで分かる。

「あ、・・・大丈夫?」

「・・・まだ頭が痛い。もう少し寝る。」

目を覚まして最初に見たのは桃花だった。心配そうにこちらを見て、手は赤くなっていた。必死で看病してくれたのだろう。その証拠に、頭が涼しい。濡れたタオルがある。それから一時間寝てある程度は気持ちの整理がついた。

「桃花、軽蔑するか?俺は過去に何度も・・・

桃花が俺の口を抑える。

「辛いよね。一人で過去を抱えて。力になれるかは分からないけど私なら聞くよ」

「桃花・・・ありがと、けど、桃花だけだと俺の気が晴れない。やっぱりみんなに打ち解けるよ」

「分かったよ。お姉ちゃん達はリビングにいるよ。」

「お目覚めですか、勝利さん」

「あ、優佳里姉。

「「優佳里姉!?」」

なぜか正喝と誠治が驚く。

「まさか、心にその属性があるとは思わなかったよ〜」

「勝利、とりあえず外に出て頭を冷やしてこい」

「二人とも何を言ってるんだ?」

「ああ、すみません。私が私に親しみを込めて言いなさいと命令したのですよ」

今命令って言ったよな?

「さて、ここに来たと言うことは決意は固まりましたか。」

俺は静かに頷く。

「大事な話がある。聞いてもらえるか?」

沈黙。それは一つの了承である。

「と、言っても、どこから話せばいいのか・・・」

「まずはあなたの生まれから話してあげてください」

優佳里姉がフォローしてくれた。

「俺は、自分の生まれた誕生日も場所も親も自分の名前すら知らないんだ」

「どういう・・・ことだ・・・?」

正喝が驚く。

「俺は戦争孤児だ。正確にはそう聞かされていただけだがな。俺の親は俺を産んですぐ戦争に巻き込まれて死んだ。そんな俺を育てたのはその戦争で俺の親を殺した連中と敵対した組織ラグナロクだ。」

「ラグナロク・・・聞いたことがある。傭兵集団で金さえ払えばどんな非人道的なこともやる組織。でも六年前に全員死刑になったはずだよ。」

誠治はラグナロクを知っているようだ。

「それなら話は早いな。そのラグナロクのリーダー。黒崎って言う名前だったな。そいつに育てられ、八歳ぐらいの頃から戦争に参加し、十歳でレジェスターとして覚醒。そっから一年で幹部級に上がり、あまりにも残忍な殺し方から俺は殺戮(さつりく)勝利(かつとし)と敵から呼ばれていたよ」

「心さん・・・」

「月村、分かってるよ」

すごく怒ってるもんな。顔が。

「その時の俺は人殺しなんてそこらへんの雑草を狩る程度のものだと思っていた。けど、俺はある時を境に脱走を決意した。黒崎は俺のことを道具程度にしか思ってなかった。ただ強いから。それだけの理由で俺はいたんだ。人間ですらない俺はいらないと思った。だから俺は自分の自由のために逃げようとした。そのために、育ての親である黒崎を殺し、ラグナロクを壊滅させ、自由を得ようとした。」

「・・・そこからは私も知りませんね。続きをお願いします」

「ええ、自由を得るため、俺は戦った。と言っても、直接は戦ってないんだかな。」

「え?」

「じゃあ、誰が戦ったんだ?」

「師匠だよ」

「えっ!?」

「その手法は至って簡単だ。戦争で相手国と密約して、俺は敵国に寝返り、俺は自由を、敵国は勝利を、まさに一石二鳥の作戦さ。その敵国の隊長が師匠だったんだ。」

「そのあとはどうなったんだ?」

「俺は自由を得ようとしたが、俺のやったことは許されることじゃ無い。極刑になりそうだったが、師匠がうまいこと上の人間を説得して、俺はここにいるわけだ。」

「利、一つ聞いていいか。」

「なんだ?」

「今のお前は人殺しが平気か?」

「平気な訳無いだろ。むしろ怖いさ。自分が再び誰かを傷つけると思うと。けど仲間が傷つけられるのはもっと嫌だ。」

「そうか、それならいい」

「心〜サイシェイの戦いの時は本気だった?」

「本気だよ。けど、昔に比べれば相当腕は落ちたよ。なんとか勝ったがな。」

こんな力があってもどうしようもない。

「俺の話はこれで終わりかな。他に何かあるか?」

「一つ、聞いていい?」

桃花がボソッと聞く。

「私のことどう思っているの?」

「・・・ハァ!?」

一瞬思考停止に陥った。

「え?え〜と・・・

「おやおや〜遂に遂にあれが始まるのかな〜」

「利、良かったな。フラグ回収が出来るぞ」

お前らは何を言っているんだ?いつものことだが。

「ねえ、答えて?

「ええ?・・・

スッ

なんの答えも浮かび上がらなかった俺は桃花の髪をくしゃくしゃにした。

「ふあぁ!いきなりどうしたの?」

「そうだな。愛くるしい奴だよ。お前は」

「そ・・そう・・・。」

何故か桃花はしょんぼりしてしまった。

俺は照れ隠しのために行った。何故こうも俺は回りくどいことをしているのだか・・・

「ところで勝利。気分はどうですか?」

「楽になりましたよ。優佳里姉」

「・・・・・・」

無言でこっちを桃花がじっと見つめている。何故だ。

「ああ、そうだ。次は未来の話をしよう。」

「未来の・・・?」

「ああ、俺は、俺は・・・この世界に残る。」

「なっ!?利、お前何を言ってるか分かって・・・

「心、それはなんで」

「正喝、誠治、お前達の言うことも分かる。けど俺は、元の世界に希望が無いんだ。俺は死んでいるはずなんだからな。あの世界には居られない。そして、俺はこの世界が好きだ。俺がここにいていい理由がこの世界にはあると思うんだ。」

「利、・・・分かった。お前の決意をな」

「そこまでいうか〜。反対は出来ないね〜」

「勝利君・・・じゃあ私がここに居ていい理由になってみせるよ。」

「え?」

「今はまだ無理でも、ナナシマに着く時ぐらいには、私はそうなれるように頑張る。とりあえず頑張る。」

「桃花ちゃん、何か考えでも?」

「ううん、何もないよ。」

全員、ずっこけた。と言うよりは呆れた。それでも俺にとっては希望の塊である。ならば俺はそれを信じよう。

ナナシマはもうすぐなのだから。







やっと過去を明かし勝利君も作者も楽になった。

桃花ちゃんはなんか決意決めさせたけどどうするかなにも考えてない。








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