センシン 三日目 1月村と行く場合
ルートに分かれている。
「月村、俺もいっしょでいいか?」
「いいんですか?私なんかで?」
「いいよ、桃花もたまには一人で羽伸ばしたい時もあるだろうし」
「・・・それもそうですね。」
「じゃあ私はいろいろと見てくるね。」
桃花が行った。
「さて、俺たちも行くか」
「はい」
月村に行くところは任せていた。最初に寄ったのは服屋。月村は普段着飾らないのだが、たまにはこうするのも悪くない。
「心さん、こんなものはいかがでしょう?」
渡されたのは黒いマフラーだった。
「こんな時期にマフラー?まだ寒くはねーぞ」
今は9月だ。確かに売っている店はあるだろうが、買うにはまだ早い気もする。
「時期とかではなくて、心さんに似合うと思いましたから」
「ん〜そうか、んじゃあ買っとくか」
千円程度のごく普通のマフラーだが、こいつは大事にしておこう。
プルルルル、プルルルル、
「また電話?・・天本さんからだ」
電話に出ると天本さんはまた冗談を言った。
「どうも、あなたの名前を知っているようで知らないものです。」
「天本さん、あの・・
「天本?いえ、違いますよ。あなたの・・・
「あーもういいです。自己紹介とかどうでもいいんで、要件だけお願いします。」
「ふふ、やはりかなわないですね。要件は一つ桃花ちゃんと月村さんのケータイを買っておいてください」
「メーカーは?」
「EU・・・ではなくてauでお願いします。私もそれですから」
「了解」ピッ
「優佳里さんから何か?」
月村が問いかけてくる。
「ああ、なんか二人のケータイ買っておいてだとさ」
「ケータイ?ああ、あの通信機器ですか」
「そうだけど?なんか古い言い回しだな」
「はあ、すいません」
「まあいいや、桃花を探すぞ」
「はい」
「あ、いたー!」
背後から聞き覚えのある声がする。桃花だ。
「ああ、桃花、ちょうどいい時に来たな。ちよっと付き合ってもらうぞ。」
「ん〜?」
「ケータイ買えと天本さんがね」
「ケータイ?何それ美味しいの?」
「え?いや食べ物じゃないから。電話とかする奴だよ。」
「ああ、あれか〜」
本当に分かっているのか?そんな疑問も残りながらも、買った。
桃花のは俺の物の二世代上のものだ。
月村はシンプルなデザインのものだ。
色はそれぞれ白と黒になっている。
・・・月村は黒にこだわりでもあるのだろうか。
「あ、ちょっとトイレ寄るね」
桃花が行く。だがこれがあんな事になるとは思わなかった。
十分経っても桃花は出てこなかった。
「遅いな、何かあったのか?」
プルルルルとまた鳴る。それは俺のケータイだ。
番号を見て桃花のものだと分かった。
「もしもし、桃花、今どこに・・・
「・・・・・」
「桃花?」
「クックック」
「!お前桃花じゃないな!誰だ!」
電話に出たのは桃花の声とは似つかない低い声だった。
「お前のお姫様は頂いた。返して欲しければせいぜい空港でも探すんだな。」
「なっ!
ツーツーツー
そこで電話は切れた。
「心さん?いったい、
「月村、よく聞け、桃花が何者かに誘拐された。
「なんですって!?」
「空港でも探せ・・・か
「いえ、犯人はおそらく飛行機は使わないでしょう」
「なんで?
「わざわざ居場所を教える人がいますか?
「じゃあいったいどこに・・・
無意識に右のポケットに手を入れる。
「あ、これは・・・
正喝から貰った笛だ。確か、足に困ったら使えって言われてたな。
「どうなるかわかんねーがやるしかない!
笛を吹いた。