魔法って?ああ!
「魔法ってなんだと思う?」
そんな問いに答えられる奴なんてそうは居ない。しいて言えば他の人ができないことを自分には出来る。その程度も魔法だ。だって俺は、普通じゃないから。
心勝利。それが俺の名だ。俺が出来る特別なこと、それは火を操れる程度だ。レジェンドスター。通称レジェスター。俺みたいにそんな魔法を扱える人間を師匠はそう読んでいる。ただで使えるわけでは無い。エナジーと呼ばれる体の底に眠るエネルギーが必要だ。
今はベッドで寝ている。
特にやることない。そう思ったのも束の間、玄関からわめき声が聞こえてきた。
無視しようかと思ったが、眠れないので、しょうがなく玄関のドアを開けた。
「ったく、遅いぞ!」
「はいはい、すいませんでした」
わめき声の正体は俺の師匠、斬撃煌。
基本的に一方通行な人。背は大体190はある。
黒を基調とした上着にイナズマ模様の服をしている。
最近になってだが、なんで俺はこんな人が強いのか謎に思える。
「うるさいから、静かにしてください。アホ師匠」
「何だと!?テメーの方がアホ何だよ馬鹿野郎!」
どちらが常識人かと聞かれればだいだい俺を選ぶだろう。
「誰かと思えば煌さんか」
「お、正喝、良いところに来たな。」
本多正喝俺の家の同居人。
クールな印象を受ける。俺が十二歳の頃出会った、物静かな青年だ。
槍術は一流。師匠と似た服装だが、模様は雲。
「久しぶりに来たんだ。派手にやろうじゃねえか。正喝もやらないか?」
「ぜひお願いします。」
「・・・え?」
やることとは模擬戦という名のケンカ。場所が狭いので、500メートルほど離れた海辺に向かった
「さて、始めようじゃねえか!レジェスター同士によるとんでもねぇ闘いってやつをよぉ!」
『エナジー収束・レイブ起動!』
師匠の体が光に包まれ、レイブが出た。
レイブとは、レジェスターの武器。それはその人の潜在能力を形にしたものらしい。
師匠のレイブは150センチはある大剣。それを二つ持っている。右手は順手に持ち、左手は逆手に持つという変則的なスタイル。
「あ~そうだ!二人同時に来やがれ!」
「行くぞ利」
『レイブ起動』
正喝はさっきも言ったが槍。リーチは師匠より50センチはあるが、正喝は突きより、薙払いを得意とするため、実はリーチはあまり関係ない。
確か剣が槍とやり合うには三倍の力量が必要という言葉があっただろう。師匠は軽く三倍はあるだろう。
「はいはい。やればいいんだろ、やれば」
『レイブ起動』
出てきたのは細身の刀。一メートル程度の刃渡りで太刀と呼ぶには短いし、短刀と呼ぶには長いといった微妙な長さ。おおかた俺の捻くれの性格も反映してるんだろう。実際、俺は戦うのはあまり好きでは無い。
「さて、行くぜ!」
師匠は毎度のこと猛攻だ。攻撃は最大の防御とはよく言ったものだろう。まず、左手の大剣で薙払いを俺にしてきた。しっかりガードしたが、右手の大剣は防げない。
変わりに正喝が防いでくれた。
「コイツはどうだ!」
大剣をいなした勢いで宙返りし、周りの砂とともに、足場を崩された。
砂に流され、足元に海水が着いた。
「おっと、危ねえ」
すぐに海から足を抜いた。師匠の得意技である雷が来た。それは小規模の雷雲を起こし、雷を落とす技。
『韋駄天の高速・パニックボルト』
早速エナジーを使ってきた。雷を剣から放出した。幸い俺は避けられた。正喝は真っ向からガードしてた。あのバカ、どうゆう技かも見切れないのか?雷はガードは無理だろ。と、思っていたが難なく正喝は反撃している。とっ俺も反撃・・・
師匠は2本の大剣を自由奔放に振り回しややカウンター気味に俺の攻撃を跳ね返した。
「え?」
弾き返され、海にドボンと浸かった。別に泳げない訳じゃない。むしろ温まった体を冷やすには十分だった。だが、水で身動きが取りにくい。この辺りでギブ(ギブアップ)するか。
「師匠~降参~降参しま~す」
「どうでもいい!」
「え?」
師匠は問答無用なのか俺の言葉など無視し壮大な水しぶきを浴びて水中の中に叩き込まれた。もちろんギリギリで大剣をいなしたため、傷は無い。
「利?・・・死んだか?」
「おいおい、あの程度か?ま、いいか死んでも・・」
「勝手に殺すな――!」
なんだよ、師匠ならともかく正喝まで、俺のことなんかどうでもいいのかよ。・・心のツッコミが終わり、模擬戦も終わった。
「・・・俺は何でこんな事してるんだ?」ひと息ついて休んでいると、誰かが来た。
「心~ま~た激しくやったね~」
「俺じゃない師匠だ」
「な・・テメーまあいいか、。ここは『大人の気遣い』ってことで見逃してやるよ」
話しかけてきたのはもう一人の友人八神誠治。こいつもレジェスターだ。だが、ちゃんと両親もいるし、学校にも通っている言わば常識人。
楽観的な性格。
「どうしたんだ?」
「いや~勝利が死んでないか見に来ただけだよ」
けなされてるのか、心配されてるのか分からんとりあえず疲れた。
「俺、疲れたから、先帰ってくれ。」
疲れきった声で言う。エナジーと体力はまた違うものである。俺はエナジーを回復に使うことはできない。そもそも、そんなスキルは才能も努力する気は無いのだ。
「お大事に~」
「帰る」
「じゃあな!」
三人はどこかしらに消えた。
「ふう~・・・
いつの間にか寝てしまった。体にかかってくるのは海風と・・・ん?
目が覚めた
いまは午後6時ぐらいだろうか。日が落ちるか落ちないか。だがそんなことはどうでもよかった。
「え?・・・
言葉を失った。
起きたら目の前に女の子がいた。空色のカーディガンに白のTシャツ、ピンク色のスカート姿でポニーテール、髪は少し茶色で可愛らしい少女。
素早く体を左に二回転し、上半身だけ立たせた。
「(な・・なんだ!?急に目の前に?)」
落ち着け、そうだ、落ち着け。ただ・・寝てるだけみたいだし、かと言ってほっとくわけにもいかないよな。
俺は少女の左肩を軽く叩いたが、反応は無かった。
これ以上は時間を見ないと分からないので、勝利は一旦少女を持ち帰った(介護的な意味で)