8.下調べ
遅くなりました……。
んで、まあ、タクを見つけてから3日がたった。ちなみに、今のタクの立場は俺の従者だ。結構簡単に手続きできた。よかった、うん。
従者ができた今の俺は移動時に兵士に囲まれることもなく、フリーダム。城の中を自由に行き来可能になったから、タクを連れて歩きまわった。しかも、侍従の格好で。
身体系の魔法『カラー』を使って髪と眼の色を黒に変えて、タクに服を借りて。
タクの服は侍従の服だ。普通の白シャツにベストを上に羽織る、シンプルな格好。侍従達はタイや、リボンを着けて、自分の職場や、階級を表す。タクは、俺の従者になったから、本来のリボンの色は王族の眼の色になぞらえて光沢のある青だが、今は侍従の色の赤だ。ちなみに、俺のリボンも赤。
こっちの方が目立たないから、こうしている。
結構、みんな髪と眼の色を変えただけの俺のことに気づかない。元々病弱で、しかも皇族の恥さらし、『魔力無し』のオウラはほとんど表舞台にでてきてないのも理由の一つだろう。
にしても、侍従の格好で歩きまわるのはなかなか、面白い。
新しく入った同僚だと思った使用人仲間たちが、貴族の色々な話を聞かせてくれる。これがなかなか良くて、結構アホな、誰誰があるお嬢様に告白して振られた、という話から、そんな重要な話何で知ってるんだ、って言いたくなるような政治の話まで、何でもアリだ。
まあ、この噂話が俺が侍従の振りをする最たる理由だが。
知っての通り、俺はこの世界に来てすぐに殺された。その理由が知りたい。
正直、あの時の事は死んだ時のショックか、見事に記憶がとんでいる。だから、俺が憶えていることは、学校の帰りに気が付いたら首を切られて死んでいた、というわけのわからないものだ。
やっぱり、自分の殺された理由ぐらい知っておきたい。本当はすぐにでも動き出したいところだったが、体調がなかなか戻らず、兵士たちが何人も付いてきたので、できなかったのだ。しかし、タクが従者になったので、やっと行動に移すことができた。タクもこのことについて、快く了承してくれた。
というわけで、侍従達の噂話から、その理由を探そうと思ったわけだが、これが結構うまくいった。 結構前の事だからわからないかと思ったが、かなり使用人たちの印象に残る出来事だったらしい。すぐにわかった。
なんでも、俺はいきなりこの城に現れたらしい。そして、俺が現れたのは地上から3メートルほど上だった。そして、俺の真下には、父親の地位がまああまあ高く、それを笠に着て普段から色々やんちゃをしていたお坊ちゃん。「わ、私の上にいきなり落ちてくるとはどういうことか!!」と言って俺の首を持っていた剣でバッサリいっちゃったらしい。
それで、息子に甘い父親の権力が働き、表向きにはその坊ちゃんの命を狙った不届き者を坊ちゃんが返り討ちにした、ということにしたらしい。さすがに、その親ばかでも、「いきなり上に落ちてきたから息子がバッサリ斬っちゃいました」とは言いにくかったらしい。まあ、普通、誰か、くらい確認するよなあ。
だから、そのオヤジは俺を息子の命を狙った犯罪者とすることにした。そうすることで、その息子のアホな行為を、暗殺者を返り討ちにした、という格好いいものにしたかったらしい。それで、俺の首は公衆の面前に、犯罪者としてさらされた、と。
アホオヤジの計画はほぼ、成功していたが、それはそれ、この城で起きたことである。ばっちり、数人の使用人はその時、それを見ていた。そして、その使用人たちがこの話を他の使用人に話してすぐ、 その噂は広まったから、使用人たちは真実を知っていた。
それで、その話を俺は聞けた、ということ。
「よし。復讐にいってきます」
今は俺の部屋にいる。そして、さっき聞いてきた話を整理した後に俺が言ったのが「復讐にいってきます」。
「え?どうやって復讐する気なんだ?」
復讐に対しては何もツッコまないタク。それもどうなんだろう……。
「微妙な顔しないでくれ、聖夏。俺がなんで復讐に対して何も言わないか気になるんだろうけど、俺はただたんに復讐を俺が止めた後のお前が怖いだけ」
どういう意味だ、おい。
「だって、お前ひたすら俺の横で相手に対する文句を呪詛みたいにぶつぶつ言うんだもん。めっさ怖えーんだよ。それで結局、止めるのやめちゃうんだよ。しかも、すぐにやらなかった分、ストレス溜まるのか、復讐法方がえぐくなる」
そうだっけ。いつの話だろ。全然わからん。
「聖夏、中学の時、同じクラスの女子に髪切られたろ」
ああ、そんなこともあったっけ。
それは確か、俺の姉の秋葉が俺の髪を顔がさらされるように、ピンで留めて登校させた後のことだ。
そのとき、俺の顔はカッコいいと学校中に広まった。けど、正直、自分の顔がカッコいいとかよくわからん。タクいわく「なみのアイドルよりカッコいい」らしい。
毎日鏡で見る顔だし、昔っからこの顔だ。カッコいいとかいわれても……。
まあ、そのカッコいい顔を隠したらダメだとか、わけのわからんことを言ってきて俺の前髪を切ろうと数人の女子が俺に特攻仕掛けてきた。お前ら、ただ、俺の顔を見たいだけだろ、と思って無視しようとしたら、切れた一人の女子が俺の前髪をバッサリいきやがった。
普段温厚な俺でも切れますよ。その場でその女子どうやってに復讐しようと考えていたら、肩をタクに叩かれて止められた。その時は昼休みで次の授業があったからしょうがなく引き下がったが、その後ひたすら、その女子に対する呪詛をはいていた気がする。あれがこわかったのか。そういえば、その後タクに「気が済むまでやってこい」って言われた。あの時は復讐できるのに喜んで特に考えてなかったけどそういうことだったのか。俺が怖かったと。
結局、その女子は丸刈りにしてやったが、それも怖かったと。ふーん。
ま、いいや。復讐させてくれるなら。
さて、どうやって復讐しようかな♪