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1.まさかの出会い

(ふむ、まさに、その幽霊なわけだが……。まさか、落ちて早々に殺されるとは……)


 誰に聞こえるはずもない俺の叫びに、まさかの返事が聞こえた。


(ちょっっ、お前誰!?)


 気がついたら俺の横に長身の男がいた。


(あ~?私か? お前をこの世界に送った

神☆様

だけど何か?)


 神様(?)は腰まであるさらさらの髪を払ってポーズを決めた。

 その瞬間、俺はこいつは関わってはいけない、いや、関わりたくない人種(?)だと思った。


(なあ、うざいから殴っていいか?)


(やめてくれ。殴られると一応痛いんでな。

さっきのはなに、ジョークというやつだ。

人間、無駄にテンションの高い奴がそばにいたら、たいがい冷静になるものだろう? どうだ? 落ち着いたか?)


 確かに神様(?)に言われたように俺は冷静になっていた。まあ、腹はものすごく立つが。


(あ、確かに。じゃあ、冷静になったことだし教えてくれ。何が、どうして、こうなったか、だ。

というか、お前本当に神様なのか?)


(先に言っておこう。私は確かに神様だ。と言っても私は、この世界の、神だがな)


(どういう、意味だ?)


(君もうすうす気づいているだろうが、ここは君のいた世界とは違う。

よく言う異世界というやつだな。

そして、一つの世界につき神が一柱いる。

もちろん、君のいた世界にも神がいた。そしてさっき、言ったように私はこの世界の神だ)


 うわ、どうどうと宣言しやがった。うざっ。

 なんか、いちいち突っ込んでたら話が進みそうにないから先に進めるが。


(ふむ……わかった。じゃあ、なんでおれがこの世界に来たかわかるよな、この世界の神様なら)


(当然。……君がこの世界にきた理由はねえ、私が呼んだんだよ。君のいた世界の神に許可をもらってね)


 …………死んでしまえ、こんちくしょう。

 思わず手が出てしまった。


(お前のせいか)


 地を這うような声を出しながら俺は神の胸ぐらを掴んだ。


(お前のせいで、来たくもない異世界に連れて来られて挙句、殺されたのか、俺は)


 神はただの人間の幽霊を怒らせただけとは思えない慌てぶりで早口にまくしたてた。

てか、こいつ本当に神か?


(初めに言っただろ。私も予想外だった、と。元々、きみには今死にそうになっている皇子の代わりをしてもらおうと思っていたのだ。君は死なないはずだった)


 俺は自分が死なないはずだった、と聞いて神の胸ぐらを掴んだ手をぴくり、と反応させた。


 死なないはずだった?


(けど、実際問題俺は死んでるんだが? だいたい、なんだ? その、皇子の代わりが俺というのは)


 俺は死んでから時間が結構たってきたせいか、かなり冷静に神の細かい言葉まで拾えていた。


(あ〜。まずそれを説明するには、この事を理解してもらわねばならないんだか……。……君、パラレルワールド、分かるか)


 俺はいきなりの神の質問に眉をしかめながら、漫画や小説などで得た知識を話した。


(確か、自分のいる世界の隣に別の世界があって、そこにも自分がいて、この自分と微妙に違う生活を送ってる、ってやつだったか)


(そうそう、それ。それなんだが………というか、君はいつまで、仮にも神様の胸ぐらを掴んでるのかな?)


 そういわれ、俺はしぶしぶ、本当にしぶしぶ手を離した。

 神は崩れた襟元を直しながら


(まあ、これは特殊なんだけど、君にはパラレルワールドみたいに、この世界に別の君がいるのだよ。そして、その君がこの国の皇子というわけだ。そして、今この国の皇子がいなくなるのは非常にまずい。この国はこの世界の中心と言って過言ではないほど大きな国だ。そんな国で今、皇帝の後継者が死んで後継者争いが起こると他の国にまで飛び火して大きな戦争が起こる。それを回避したいのだよ)


(そんなことのために神が出張ってるのか?)


 俺は不審に思った。

 世界中を巻き込む戦いなら、地球でも最低2回起こっている。

 もし、神がそれを嫌がるなら、この地球での戦いもなかったはず。ということは、この世界での大規模な戦争も地球のある世界の神と同じような神にとって止めなければならないというわけではないはず。

 俺はその不審を言葉にした。


(だが、地球の世界大戦はきっちり起こってるぞ)


(ああ。それは、この世界がまだ出来て間もないからからそんな状態で戦争が起きるとさすがに世界全体のバランスが色々と崩れてまずいから私が介入しているのだ。……君をこの世界に連れて行くという方法でね)


 俺はこめかみが引きつるのを感じた。


(ほーお、じゃあなんだ、俺は見知らぬ世界に完っ全にそっちの都合で連れて来られたのか)


 俺はものすごくいい笑顔だったと思う。ニッコリ、と効果音がつきそうなほどに。

 ……だけど、きっと神には俺の背後から黒いオーラが見えていることだろう。

 仮にも神様だろうに、神は冷や汗を出していた。


(……ま、まあ、そういう事になるな。だ、だが、完全にこっちの都合というわけではないのだ。

……実はだね、本来、君の魂は此方で産まれるはずだった。

しかし、……………まあ、神にも色々あるんだよ、うん。と、いうわけで手違いで君の魂が地球のある、まあ、私達神はクシラとその世界を呼んでいるのだが、そのクシラの方で産まれるはずだった魂と入れ替わってしまった)


(は? って、事は本来、俺がこの世界で皇子やってたのか? ……そして本来クシラに産まれるべきはずの魂が、こっちで皇子やってたってことか)


(そういう事。まあ、当然、本来あるべき姿とは違うから多少のゆがみが生じてしまった。

オウラが、ああ、こちらの君の名前なんだが、まあ、そのオウラが病弱になったのはそういう理由なんだが…………っと、いい加減説明を止めないとオウラの魂が限界のようだ。

彼の魂が体からなくなった直後じゃないと君は本来の体に入れないから、話はこれくらいにしよう)


(なっ!)


 まだ説明は十分じゃない!と俺が叫ぶ前に、神は俺の前に手を翳した。

 俺が、薄れゆく意識のなかで最後に聞いたのは、


(私の名前は『琳希』。何かあれば呼ぶといい)

 という、神の言葉だった。




* * * * * *





「オウラ様が目覚めました!!」


 俺が次に目覚めた時、聞こえた最初の言葉は、俺が今までの人生を捨て新たな人生を歩むことを、如実に感じさせる言葉だった。

 


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